Sストレンジジャーニー   作:dwwyakata@2024

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4、広大な迷宮の端

バキバキと凄まじい音を立てながら、木々をなぎ倒して迫ってくる巨大な悪魔。一つ目のそれは、非常な巨体で。四つ足で無理矢理通路に体をねじ込みながら、雄叫びを上げていた。

 

今回はライドウ氏のチームに入っている唯野仁成は、ライドウ氏から注意をされる。

 

「あれはカトブレパスだ。 奴の視線は、相手を石にする」

 

「また石化悪魔ですか」

 

「そうだな。 此処には受けると致命的な攻撃を持つ悪魔が多い。 あいつは俺が対処する。 君は他を頼む」

 

「イエッサ!」

 

調査班を守るようにして、機動班は展開。後ろから迫ってきている膨大な数の悪魔を相手にする。

 

バシリスクの大軍の処理になれてきたと思ったら、これである。あのカトブレパスというのは相当に巨大な悪魔だが。

 

こっちはこっちで、多数の大型の人型が攻めてきていた。

 

一部はスイキだ。一時期ヒメネスが連れていた妖鬼で、かなり強い悪魔だった。それがたくさんいる。

 

見ると、キンキやフウキというのもいるようだ。いずれも日本系の妖鬼か。厄介な話である。

 

此奴らはそろって元々日本の古い時代の朝廷に反乱を起こした人物が妖怪化された存在らしく。

 

元人間だと思うと、鬼としか言えない姿には色々複雑な気分になる。

 

機動班は重量級の悪魔を揃って召喚して壁にし、更に魔法を放たせて一体ずつ仕留めているが、とにかくタフだ。

 

後ろは任せてしまって良いだろう。ライドウ氏が不覚を取ることは考えにくい。

 

ケッテンクラートを守るので精一杯の調査班の横を通りながら、ティターンを召喚。鬼達より更に巨大な鎧を着込んだ武人を見て。鬼達は露骨に怯む。

 

更にアリスとアナーヒターを呼び出し。

 

広域制圧に取りかかる。

 

アリスが詠唱開始。それを見て、壁になっている悪魔達が、露骨に怯えるのが分かった。以前、アレックスにやったアレをやるのか。確かに広域を一気に沈黙させるには最適だが。

 

浮き足だった敵に対して、乱戦に持ち込もうとするクルーを制止。

 

だが、血に飢えた一部の魔獣などの悪魔が、敵の背中に食らいついて、乱戦になる。勿論アリスは、それを考慮するような性格では無い。

 

上空に、真っ黒な塊が出現する。

 

今なら、あれが死そのものだと理解出来る。

 

アリスは恐らくだが。死に関して、ユニークスキルと言えるほど強力な魔術を展開することが出来るのだ。

 

「アッハハハハハ! まとめて死んじゃえ!」

 

死が、周囲を蹂躙する。

 

真っ黒な空間に飲み込まれた無数の悪魔が、声すら上げずに絶息していく。相変わらずとんでもない火力だ。

 

アリスの魔術が周囲を消し飛ばした後には、殆ど生き残りの敵悪魔はおらず。膨大なマッカが散らばっていた。

 

魔獣を戻そうとしたクルーが、アリスに食ってかかる。今の攻撃に、彼の魔獣はモロに巻き込まれ、ロストしたのだ。

 

「俺の魔獣が!」

 

「無理矢理戻すべきだったんじゃないのー? 私しらないもーん」

 

「このガキ……」

 

「……誰がガキだって?」

 

アリスが殺気立つ。唯野仁成は、無言で割って入る。アリスは、クルーをそれこそ鼠の首を捻るように殺しかねない。

 

この子は、そういう子だ。

 

倫理観念なんて持ち合わせていないのである。

 

「すまなかった。 マッカは譲るから、それで回復させてやってくれ。 それとアリスの攻撃は見ての通り大威力だ。 でると思ったら、すぐに悪魔をPCに強引に戻した方が良い」

 

「……ちっ。 分かったよ」

 

「アリスも不愉快な思いをさせてすまなかったな。 後でアイスでも食べよう」

 

「わーい! 私重なってる奴ね!」

 

アリスはこの辺り分かりやすい。最近、真田さんが余裕が出てきた物資を加工して、アイス製造器を作ってくれたのだ。ソフトクリームから、専門店にあるようなダブルやトリプルの奴まで、様々なアイスを作る事が出来る。材料が若干気になるが、唯野仁成が口にしてみた所。味は本物と遜色ない。

 

アリスも甘い物は普通に好きで、アイスは大好物らしい。すぐに機嫌を取り戻してくれて良かった。今でもアリスは強くなり続けていて、唯野仁成も制御には冷や冷やなのだから。

 

ライドウ氏が来る。

 

カトブレパスは、片付いたようだった。

 

「こっちは終わった。 調査班、すぐに作業をしてほしい」

 

「分かりました!」

 

「これで最後の、エレベーターの電源が入るわけですね」

 

「俺には分からないが、そういう事なのだろう。 ただ、この空間の悪魔の気配がまだ感じ取れない。 それが不気味でな」

 

調査班が黙々と作業をしていく。

 

その間に、朱雀を呼び出して、負傷者の手当を頼む。唯野仁成は特に傷は受けていないが、さっきまで重量級の悪魔同士がぶつかり合っていたのである。最近は剣を使うクルーも出始めて来たが。そういうクルーも、負傷者が出ていた。

 

ライドウ氏は、上空を眺めやる。

 

「恐らく天使達に掌握されているライトニングが、ロクな使われ方をしない。 残酷さで言えば、秩序陣営の悪魔達は混沌陣営の悪魔達と大して変わらない。 混沌陣営の悪魔達はとにかく露悪的だが、秩序陣営の悪魔は自分達が考える秩序のためにはどんなことでもする」

 

「厄介な存在ですね」

 

「ああ。 いずれにしても犠牲を減らすためには、できる限り早くこのシュバルツバースを攻略しなければなるまい。 もたついていると南極を超えて拡がり始める。 もしも南米やアフリカに到達してしまったら、その頃にはもう取り返しがつかないだろう」

 

頷く。

 

アントリアやボーティーズのような空間は、他にもある可能性が高いと真田さんは言っていた。

 

たまたまアントリアからデルファイナスが連続体の空間になっていただけで、人間を如何に殺すか考え人間の悪い所ばかり取り込んだ空間の支配者がまだたくさんいる可能性があるということだ。

 

そう言った連中は、人間の生存圏に入ったら、容赦なく侵略を開始するだろう。

 

しかも最悪な事に、南米にもアフリカ大陸にも、いわゆる第三諸国が多く。国家としての秩序が極めて緩い。

 

そういう場所に悪魔が大挙した場合、既に動く事が決まっている米軍や国際再建機構の戦闘部隊は、動きづらくて仕方が無いだろう。はっきりいって、膨大な犠牲が出るのは確定してしまっている。

 

調査班は四苦八苦しているが、他の三つの「電源」でも苦戦はしていた。それにゼレーニンが今回は来ていない。

 

ゼレーニンは有能だったんだなと、作業を見ていると感じ取ることが出来る。

 

いずれにしても、懸念事項はたくさんある。

 

早く作業を終わらせて欲しいなと、唯野仁成は考える事しか出来なかった。

 

 

 

(続)




暗躍しほくそ笑むマンセマット。
様々な思惑が蠢く中、シュバルツバース内での戦いは加速する事となります。
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