Sストレンジジャーニー   作:dwwyakata@2024

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対ウロボロス。

大母を相手にするのがどういうことか。

皆、思い知らされる事になります。


3、決戦ウロボロス

物資の補給完了。

 

クルーのコンディション回復を確認。それらを済ませると、レインボウノアは飛び立ち、上位エリダヌスへと再びスキップドライブする。

 

やはり毎回改良が加えられているらしく、今度は殆ど揺れなかった。真田さんも、休憩しているのか心配になる。

 

スキップドライブした後は、まずは勢力の状態を確認。

 

天使と鬼神の陣地は、既に戦闘を開始している様子だ。相当数の天使と、巨大な鬼神達が、もみ合うようにして戦っている。

 

勿論介入する意味はない。どちらもウロボロスに興味は無いと言っていた。ならば近付くのは時間の無駄だし、弾薬の無駄でもある。

 

ライトニングは。相変わらず停泊して、何か作業をしているが。いずれにしても不意に介入してくる様子は無い。

 

勿論目を離してはいけない相手だが。それはそれとして、現時点では脅威にはなっていない。

 

ならば、決戦を挑むのは今しか無い。

 

柱の前に方舟は降り立つ。話には唯野仁成も聞いていたが、バリアが張られていたらしいのだが。

 

今ではそのバリアは、跡形も無く消し去られていた。

 

更に、悪魔の反応も、以前より明らかに小さくなっているという。

 

今が好機だ。ゴア隊長は、そう断言した。

 

艦橋に集まっているのは、主要メンバーに加えて。これから戦闘に参加する機動班精鋭二十名である。

 

レインボウノアにゴア隊長は残り、残り三勢力からの横やりを防ぐ。今回は、ライドウ氏、ストーム1、ケンシロウ、サクナヒメの全員が同時に出る。

 

勿論、さいふぁーにまた侵入されたことは報告済みだ。

 

だが今は、それに対策するよりも先に。

 

ウロボロスを撃破して、状況を進展させるのが先だと、ゴア隊長は言った。

 

春香が咳払いすると、原稿を読み上げる。

 

皆の精神を、少しでも和らげるための処置である。

 

「ウロボロスの戦闘力は、恐らくは手持ちの悪魔を全て展開したアレックスにほぼ匹敵すると思われます。 逆に言えば、このメンバーであればどうにか出来る筈です」

 

「戦闘力だけならばな……」

 

サクナヒメがぼやく。

 

そして、彼女は挙手。皆を見回しながら、サクナヒメは言った。

 

「この空間。 特に上位エリダヌスにて、「電池」を守っていた連中を、皆思い出してほしい。 いずれもが、生と死に関係する存在だった」

 

相手を問答無用に死に追いやる暴威の権化、龍であるバシリスク。相手を死に至らしめる声を放ち、一方で生命力の象徴でもある植物、マンドレイク。雨期の到来を告げ、多くの生命に祝福の歌を贈る蛙。そして死肉に発生し、その掃除をして新しい生に備える蛆虫。

 

全てが、生と死の循環に関係しているという。

 

「春香が言う通り、ウロボロスの力はアレックスと同じくらいとわしは見た。 それに加えて、妙な能力を持っている可能性が高い。 気を付けよ」

 

故に、全戦力を投入するわけだ。多分危険性を、サクナヒメが先に警告した結果の、この過剰とも思える戦力投入なのだろう。

 

真田さんが咳払いをする。更に付け加えることがあるらしい。

 

「今回は野戦陣地などを展開する事は出来ない。 このスペシャルと精鋭クルーだけでの戦闘となる。 それは皆覚悟してほしい」

 

「他はこの船に引きこもるって事ですかい?」

 

「言い方は悪いがそうだ」

 

ヒメネスに、そのまま真田さんが繕わずに返す。この辺り、真田さんはヒメネスへの対処法を心得ている。

 

周囲は眉をひそめたが、順番に真田さんは説明をしていく。

 

「今までは一瞬で全滅するような能力を行使するような相手はいなかったし、まずスペシャル達で仕掛けて相手の戦力をはかる事が出来た。 だが今回は違う。 このエリダヌスにて要所を守っていた悪魔達を思い出してほしい。 いずれもが危険な能力持ちで、しかもウロボロスはその親玉だ。 もしも妙な能力が放たれた場合、方舟のクルーが一瞬で全滅する可能性がある」

 

「……確かにそれはまずいですね」

 

「ああ、そういうことだ。 勿論相手の能力を解析出来次第、方舟から可能な限りの支援をする。 解析に関しては、いつも通り全力を尽くすつもりだ」

 

真田さん以外の人間だったら、ヒメネスは何か皮肉を言っただろうが。

 

今回は真田さんがそう言っている。

 

いかなる困難でも、様々な道具を開発し。対応出来るようにしてくれた、この船の技術的な守護神がだ。

 

だから、ヒメネスも矛を収めた。

 

唯野仁成は、ヒメネスが進んで泥を被ってくれていると考えている。別に今の発言を咎めるつもりはない。

 

他のクルー達も、ひやひやはしているだろうが。

 

概ねそれと同じだろう。

 

ライドウ氏が咳払いすると前に出る。ウロボロスに対する話だ。

 

「ウロボロスは種族としては龍王に所属することが多く、本来は単に輪廻そのものを現すだけの記号的な存在だ。 人格すら持っていない場合が多く、俺も遭遇したときには別に苦労した事はない。 だがこのエリダヌスにて「大母」となっているウロボロスは違う」

 

本来想定される能力についての説明は受けるが。

 

全てが通じないと判断した方が良いだろうと、何とも酷い話をされた。

 

だが、最高の専門家ですらこういうしかない相手なのだ。何もかもが、桁外れと言う事だろう。

 

いずれにしても、これから勝負を仕掛ける。

 

まず前衛としてライドウ氏とサクナヒメが出る。続けて、その後方からストーム1とケンシロウ。

 

そして、他の精鋭クルーが、状況を見ながら仕掛ける。

 

戦力の逐次投入に近い形だが、今回は文字通り広域即死攻撃を問答無用に仕掛けて来かねない相手だ。

 

その上、核すら防ぐようなバリアで身を守っていた相手でもある。

 

はっきりいって、こう言う策しか展開出来ない。

 

物資搬入口に、クルーが集結する。

 

まずはサクナヒメとライドウ氏が、率先して飛び出した。敵まではそこそこの距離があるが。

 

それでも、今の状態ですら。

 

敵の攻撃次第では、一瞬で方舟が壊滅しかねない恐怖がある。

 

観測班のマクリアリーが連絡を入れてくる。

 

「エンゲージ開始を確認。 二人がウロボロスに仕掛けた」

 

「よし。 出る」

 

無言のままケンシロウが、弾丸のように突貫。ストーム1が、かなり小型化はしたが、それでも持ち運びは厳しそうなライサンダーの最終型を物資搬入口から構えて、射撃を開始する。

 

前線から、ライドウ氏が通信を入れて来た。

 

敵は、殆ど此方の攻撃を受けつけないという。

 

「蛙が見せた超再生力に近い。 簡単に突破することは厳しい。 あらゆる属性の攻撃が通じるが、同時に決定打にならない」

 

「ライドウ!」

 

「!」

 

サクナヒメの警告と共に、ウロボロスが全身から光を放った。

 

それが周囲を押し潰す。何か重力を操作する魔術だったのだろう。いずれにしても、二人で無ければ避けられなかった。

 

まずい。こんなのを相手に接近戦をしなければならないのか。あの蛙並みの再生力に、百メートルを超えるガタイ。

 

柱から動く様子が無いことだけが救いではあるが。

 

しかしながら、恐らくだが動かなくてもそもそも何の問題もないのだろう。

 

「愚かな人間共。 大母たる我に逆らい、あまつさえ武器を向けるとは」

 

「わしは人間ではないが」

 

「そうか。 だが人間に与する以上同じよ。 等しく潰れて大地の肥やしとなれ」

 

再び重力波が叩き込まれる。あの、対悪魔クラスター弾でもびくともせず、サクナヒメが「耕す」という神の儀式を行ってやっと突破出来た石畳が、潰れるのがデモニカの映像越しに分かった。

 

周囲数百メートルを、一度に潰す事が出来ている様子だ。

 

しかも、押し潰すことが出来るという事は。

 

「重力異常を検知!」

 

ムッチーノが、恐怖に上擦った声を上げる。

 

それはそうだろう。ライドウ氏が展開している悪魔が、次々に潰されているのだ。

 

今まで、ライドウ氏が展開した悪魔は、空間のボスにさえ殆ど遅れを取っている事がなかったのに。

 

今度は重力がなくなり、潰れて砕けた石畳が浮き上がり始める。重力の操作を自由自在と言う事か。

 

口で尾を咥えているから、炎を吐いたり魔術を使ったりする事はないようだが。

 

重力操作能力に関しては、自由自在というわけだ。更に言えば、今まで電池にしていた悪魔と同じ事が出来ても不思議では無い。

 

サクナヒメがそれでも至近に接近し、頭に強烈な一撃を叩き込む。

 

だが、百メートルを超える龍である。頭を切りおとすまでには至らない。

 

しかも頭の傷は、見る間に再生を開始する。

 

とんでもない怪物だ。

 

今までの空間の支配者が、子供か幼児にしか見えない。大母と呼ばれるだけの事は確かにある。

 

完全に格が違う相手だと、客観的に認めざるを得なかった。

 

ストーム1が舌打ち。効いている様子が無いのだろう。ケンシロウも前線に突入したが、そもそも秘孔といったか。攻撃が通らない様子だ。斬撃に切り替えているようだが。それも切り裂いた端から塞がってしまう。

 

ライドウ氏は巨大な悪魔を次々召喚して挑ませているが、重力を増やしたり減らしたり好き勝手する上、即座に攻撃を受けても回復するウロボロスの前にはどうにもできない。ヒメネスが、たまりかねて叫ぶ。

 

「おい、これだと犬死にするだけだ! 撤退しか……」

 

「今解析中だ。 もう少し待て」

 

「……!」

 

真田さんの冷静な声。恐らくだが、真田さんも冷や汗を流しながら相手を解析しているはずである。

 

或いは。重力子を使って通信をしているのだ。ひょっとして、あの重力操作に対する何かの切り札を持っているのか。

 

サクナヒメが地面に叩き付けられ、押し潰されるのが見えた。立ち上がろうとしているが、重力が一体何G掛かっているのか。あのサクナヒメが、立ち上がろうとして出来ないでいる。

 

ライドウ氏が四体同時に展開した大物悪魔が、一斉に特大の魔術を浴びせているが、まるで効果がない。

 

ストーム1の攻撃もだ。

 

信じろ。真田さんを。自分に言い聞かせ、唯野仁成は出撃を待つ。

 

そして、その瞬間は、ついに来た。

 

真田さんが、どんと机を叩いたようだった。

 

「よし、重力子を指定の地点に全力照射しろ! 急げ!」

 

技術班が動く。その瞬間、戦況が代わった。ウロボロスが、微動だにしなかったのに、露骨にぐるりと体を回転させる。だが傷だらけのサクナヒメが立ち上がると、口を拭った。重力操作が、働いていない。

 

ゴア隊長が叫んだ。

 

「よし、機動班突入! 敵はまだ奥の手を隠している可能性がある! 気を付けろ!」

 

「イエッサ!」

 

ようやくの出番だ。

 

唯野仁成は、真っ先に突貫する。悪魔達全てを展開して、前線に走る。デモニカによる強化がある。ジープを使っても良かったのだが、もう走る方が速い。

 

前線と映像を共有する。サクナヒメが一旦下がり、ライドウ氏が出した悪魔の回復魔術で傷を癒やし始める。それに対してケンシロウが出ると、凄まじい斬撃でウロボロスを削り始める。

 

体の彼方此方を凄まじい勢いで切り裂かれながらも、ウロボロスはまだ余裕を崩していない。

 

「愚かな人間よ。 大地の力を封じたくらいで、どうにか出来ると思うたか?」

 

ウロボロスの全身の鱗が逆立ち、振動を開始する。

 

アリスがおおとぼやいた。

 

「あれ呪文詠唱だよ」

 

「口を使わなくても呪文詠唱が出来るのか」

 

「私達、別に口を使って人間語喋ってるわけじゃないからねー」

 

脳天気なアリスだが。状況は正直、それどころではない。

 

ずんと、もの凄いプレッシャーが来て、思わず両腕で顔を庇っていた。アリスが使う、あの高密度の死そのものに近い気がした。

 

周囲に、次々と着弾する「死」。

 

「気を付けろ! 恐らく死を誘発する術だ!」

 

「散開!」

 

ブレアが叫び、悪魔達を盾にしながらクルーがウロボロスに迫る。もう殆ど至近だ。方舟からも連絡がある。

 

ゴア隊長の声も、かなり焦っている様子だった。

 

「ウロボロスの重力制御能力を、重力子を発生地点にぶつける事で現在相殺しているが、動力炉は長い時間もたない! それくらいエネルギーを食う! 一刻も早く、奴に痛打を浴びせる活路を見いだしてほしい! 活路を発見し次第、支援砲撃を開始する!」

 

「イエッサ!」

 

今までの戦闘を見ていた。

 

あらゆる魔術は通用する。攻撃そのものは通っているのだ。だが超回復力が、あっと言う間に傷を塞いでしまう。

 

だが、あの蛙が情報集積体を引っ張り出されて一気に弱体化したように。ウロボロスにも何か弱点があるはずだ。

 

もしも、弱点があるとすれば。

 

ウロボロスの内部にもあるだろう、ロゼッタか。

 

いや、ロゼッタは恐らく、悪魔が死ぬときに形を変えた結果出現するものだ。意図して相手から引っ張り出すことは出来ないだろう。

 

それならば、可能性は一つしか無い。

 

「ヒメネス、あの大きいのの動きを止められるか!?」

 

「よくわからんが、それが何か意味があるのか?」

 

「あいつは円環そのものが重要な形になっている。 説明は聞いただろう。 輪廻を司るとか、そういう概念そのものがウロボロスだ」

 

周囲に隕石群が如く、炎が降り注ぐ。

 

前線のダメージは甚大だが、負傷者はすぐに下げる。悪魔もどんどん躊躇無く展開する。

 

炎に強い悪魔を盾にしながら、接近する。もうアサルトの間合いだ。アサルトの弾丸を叩き込みながら、ヒメネスに言う。

 

「頼む、止めてくれ」

 

「分かった、やってやる!」

 

ヒメネスが指示すると、三体の魔王が巨体を揺らしながら突貫。ウロボロスに、それぞれ組み付いていた。

 

もし、考えている事が出来るとしたら、ケンシロウとサクナヒメだ。

 

ケンシロウにデモニカごしに通信を入れる。その間、悪魔達には総力で巨体を攻撃して貰う。

 

アリスのトリスアギオンでさえ、ウロボロスにはロクに効いている様子が無い。アナーヒターがトリスアギオンが直撃した地点に冷気の特大魔術を叩きこんでいるが、効果は殆ど無さそうだ。

 

続けてイシュタルが烈風を纏った拳を叩き込んでいるが。それも効いている様子がほとんどない。

 

効いてはいるが。

 

即座に再生しているのだ。

 

更に格上のライドウ氏の悪魔の攻撃ですらきかないのである。はっきりいって、普通に攻撃をしても無駄だ。

 

それは、唯野仁成の中で、結論としてあった。

 

サクナヒメが、呼吸を整えながら立ち上がる横に。そして、説明をする。サクナヒメは、乾いた笑いを浮かべた。

 

「全身が痛いんだがのう」

 

「恐らく、現時点でそれが出来るのは姫様だけです。 お願いします」

 

「よし、いいだろう。 その代わり、唯野仁成よ。 そなたにはわしの神田で手伝いを命ずる」

 

「イエッサ!」

 

神田には、限られたスタッフしか入れないと聞いている。方舟に作られたビオトープの一種である其所には、小さな田んぼが存在しているそうだ。サクナヒメは普段から其所に足を運び、稲作をしては豊穣神としての力を蓄えているという。神田での行動全てがサクナヒメの力になる。

 

其所に加わると言う事は。戦闘以上に、ミスが許されない事を意味していた。

 

「愚かな人間どもよ。 我の前から消え……」

 

ウロボロスの口が止まる。

 

ストーム1による狙撃が、口の中に飛び込んだのだ。如何に相手が大きいとは言え、口の中にピンホールショットを決めるとは、流石である。

 

更に口の中で反響した弾丸は、ウロボロスの巨体の内部をズタズタに切り裂いた様子である。

 

流石に怒り心頭に達したのだろう。ウロボロスが、全身の鱗を振動させ始める。特大の魔術で、周囲全部をまとめて薙ぎ払うつもりだ。

 

即座にあらゆる傷が回復する最強の肉体と、あらゆる敵を圧倒する超火力。

 

文字通りの矛と盾だが。

 

しかしながら、矛を繰り出す瞬間には手元に隙が生じるし。

 

盾を構えているときには、攻撃を行う事が出来ない。

 

どんな完璧に見える相手でも。

 

絶対に隙は存在している。それは、この世の摂理だ。どれほど硬い物質でも砕く事が出来る。そういう事である。

 

サクナヒメが跳躍する。ケンシロウも、それにあわせて動いていた。

 

同時に唯野仁成は、方舟にも通信を入れる。ゴア隊長は、あわせてくれるということだった。

 

周囲の皆にも通信を入れる。

 

さあ、ここからが勝負だ。

 

サクナヒメが上空に出ると、鼻で笑うウロボロス。恐らくだが、周囲全てを一気に粉砕するほどの超特大魔術の準備がもう終わるのだろう。

 

だが、残念な話だが。

 

それが発動する未来は来ない。

 

サクナヒメが大上段に構えを取る。光の剣が、その力を増していく。数秒のため。そう、最近は連発すら出来るようになっていたサクナヒメの神剣。それを、更に現在の全力で、フルパワーで放つと言う事だ。

 

其所で、怯む様子も無かったら、諦めるしか無かっただろう。

 

だが、ウロボロスはあからさまに怯んだ。

 

つまり、大体予想通りに行く、と言う事だ。

 

慌てて、ウロボロスが周囲に魔術をぶっ放す。中途だったが、それでも火力は文字通り絶大。

 

吹っ飛ぶクルーが見えた。

 

悪魔が消し飛ぶのが分かった。

 

頼む、死なないでくれよ。そう呟きながら、アナーヒターが作った氷の盾の影にて、唯野仁成は猛烈な魔術の驟雨を凌ぐ。

 

サクナヒメも、数発の直撃を受けたようだが。

 

ためは、終わった。

 

文字通り、天地が左右に切り裂かれたかと思った。

 

サクナヒメが、青白く輝く神剣を、大上段から降り下ろしたのである。流石のウロボロスの肉体も、これにはひとたまりもない。首の辺りを、完全に一刀両断され。尻尾の辺りも、一瞬遅れて一刀両断された。

 

左右に別たれたウロボロスが、見る間に弱体化していく。

 

やはりそうだ。

 

奴の姿は円環そのもの。輪廻そのものの概念だというのなら、左右に切り裂かれて能力を維持できる訳がない。

 

力を流石に使い果たして落ちてきたサクナヒメを、ぼろぼろになってなおも動くティターンが受け止める。

 

サクナヒメが落ちてくるのと入れ替わりのように、ケンシロウが跳躍し、それでも再生を開始しつつあるウロボロスの傷口に無数の拳を叩き込んだ。向こう側に抜けるケンシロウと、傷口が爆裂し、円環が完全に断たれるウロボロス。絶叫する巨大なる蛇。既に円環ですらないその全身に、息を合わせて全員が、一斉に攻撃を叩き込んだ。

 

クルー達が、それぞれ手にしている得物で一斉に射撃。悪魔達は魔術や炎の息やらを総力で叩き込む。

 

其所に、方舟からの援護射撃が加わり。

 

再生が止まったウロボロスの全身を、文字通り滅多打ちにしていった。

 

二つに切り裂かれ、体中が穴だらけになりつつも、ウロボロスはなおも吠え猛る。

 

その顔面を、アリスのトリスアギオン二発目が直撃。言葉にならない絶叫が、周囲を蹂躙していた。

 

更に、ライドウ氏が手持ちの全ての大型悪魔をけしかける。彼らはヒメネスの悪魔達と連携して、ウロボロスを左右に引きはがしに掛かる。ライドウ氏が走る。唯野仁成もそれに習う。

 

後方から、ヒメネスがライサンダーで援護射撃をしてくれる。ウロボロスの鱗が次々に吹っ飛ぶ。

 

最初に仕掛けたのはライドウ氏だ。

 

ウロボロスに向け跳躍すると剣を抜き、ウロボロスの体を駆け上がりながら凄まじい斬撃を浴びせて斬り上がって行く。

 

唯野仁成は、イシュタルに頼んで、風で上空に飛ばして貰うと。

 

ウロボロスの頭の、上に出た。

 

そして、其所から加速して、一気に下に。

 

ウロボロスが、恐怖の声を上げるのが分かった。

 

「愚かな! 大母に! 生と死の循環に手を掛けるなど、何と罪深い! だから人間は、この世界から滅びようと……!」

 

「貴方は大母なんかじゃあない。 この地球の自衛機能が暴走しただけの、ただの狂った生体装置だ!」

 

渾身の一撃を込めて、剣を降り下ろす。

 

勿論、今まで皆が攻撃していたのが効いていて、脆くなっていたのもある。

 

だが、それもあるが。デモニカによる強化効果が、極限まで唯野仁成の剣撃を強化してくれた。

 

文字通りその剣は、ウロボロスの首を刎ね飛ばした。

 

三つに切り裂かれたウロボロスは、断末魔の絶叫を上げながら、塵に返っていく。

 

着地地点に、イシュタルが風でクッションを作ってくれていた。多少荒々しい風のクッションだったが。

 

少し遅れて、ライドウ氏もちゃっかりその風のクッションを利用し、着地する。

 

総力戦だった。

 

「見事な作戦だった。 今回のMVPは君だな」

 

「ありがとうございます。 でも、誰の力が欠けても、この勝利はありませんでした」

 

謙遜では無い。本当にそう思う。

 

ヒメネスが手を振って走り寄ってくる。やったなと、珍しく掛け値無しの笑顔を浮かべていた。

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