Sストレンジジャーニー   作:dwwyakata@2024

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本作で登場するクロスオーバーキャラ達についてはそれぞれの詳しい説明が後に為されるので、主人公について。

※唯野仁成

本作における、原作主人公です。原作でも自衛隊出身という設定があるのですが、本作の唯野仁成は母子家庭出身で、努力の末に精鋭第一空挺団に入り、其処から国際再建機構に移籍したという経歴があります。

あまり良くない家庭の出と言う事もあって、年の離れた妹には親のように接していた事もあり、妹の学費とかは就職後に自分の給料から出しています。

本作が始まった時点で唯野仁成の妹は米国人の科学者(兼弁護士。 ハイスペック人間です)と結婚。唯野仁成同様に国際再建機構に所属しています。

同じくシュバルツバース突入班に選ばれる可能性がありましたが妊娠が発覚。残る事になりました。

これが後に、大きな意味を持ちます。


1、突入シュバルツバース

ケンシロウは背中に壁を預けたまま、目を閉じていた。

 

デモニカには通信機能がついているから、今どうなっているかはよく分かる。

 

今いる物資搬入口には、船内クルーでも腕利きの兵士達と。

 

そんな中、座ってにぎりめしを食っているサクナヒメの姿がある。

 

デモニカも身につけていないが。

 

既に真空だろうが毒ガスの中だろうが平気であることは実験済みらしい。

 

昔は平気では無かったらしいのだが。

 

神としての格が上がってから平気になったのだとか。

 

いずれにしても、皆緊張している中。

 

床に座ってにぎりめしを食べ終え、その後は腕組みして黙り込んでいるサクナヒメは。周囲に圧倒的な安心感を与えていた。子供(に見える存在)ですら落ち着き払っているのだ。大人が困惑している訳にもいかないと、誰もが思うのである。

 

ケンシロウには分かる。

 

小さいが、この存在は人間とは違う。

 

圧倒的な戦闘経験が、一目で分かるのである。

 

相当な修羅場もくぐってきている。

 

今だって、幾つかのモニタで映し出されている。

 

此処が空の極めて高い場所で、これから地獄も同然の場所に出向くことは。当然サクナヒメにも分かっている筈だ。

 

まるでそれを怖れていない。

 

幼児故の無知から、ではない。

 

サクナヒメの言動は幼児とはかけ離れているし。

 

何よりも、圧倒的な経験に行動が裏打ちされている。

 

ケンシロウも、これならば大丈夫だろうと考えていた。

 

やがて、ゆっくり方舟が降下を開始する。

 

シュバルツバースの直上に来た、と言う事だろう。

 

いつのまにか、百キロ以上も進んでいたらしい。流石に飛行専門ではないとはいえ、飛行出来る機械と言う事だ。高度上昇が止まってから三十分も経っていないから、時速三百キロ以上はでるのだろう。

 

飛行機としては遅すぎる位だが。

 

この巨大な強襲揚陸艦だ。

 

何よりも、これから想定される戦闘に備えてパワーを抑えて飛んでいるのだろうし。

 

無理もない事ではある。

 

攻撃が高確率である。それも、悪魔がしてくる攻撃だ。どんな代物かすらわからない。

 

だから、力は可能な限り温存しなければならない。当然の話である。

 

サクナヒメが、顔を上げた。

 

そして、周囲に警告を飛ばしていた。

 

「来よるぞ! 皆掴まれ!」

 

直後。

 

揺れが来た。微少な揺れだが、分かる。確実に、何か異常事態があったのだ。

 

確かこの船は、核融合炉から出るエネルギーの余剰分を利用して、プラズマバリアというのを展開しているはず。

 

その能力は折り紙付きで。

 

ケンシロウも認める強者、ストーム1だけが使える最強の狙撃銃。艦砲なみの火力を持つライサンダーの直撃にすら耐える。

 

それなのに、揺れが来た。

 

どんな攻撃が飛んできた。

 

生半可な巡航ミサイル程度では、びくともしないはずだが。

 

ケンシロウは壁に背中を預けたまま状況を観察する。

 

兵士達は皆、やはり動揺しているようだった。

 

「この巨船が揺れてるぞ!」

 

「外はどうなってる! 何が来たんだ!」

 

「どっかの国がICBMでも撃ち込んで来やがったんじゃ無いのか!?」

 

「強い悪意を感じるのう……」

 

連続し、更に強まる揺れの中、まるでそれを苦にしない様子で立ち上がるサクナヒメ。

 

既に手には鍬がある。

 

サクナヒメは豊穣神と武神の子らしく。

 

その双方の能力を持っているらしい。

 

武神としての身体能力もそうなのだが。

 

豊穣神として、武器は剣だけではない。農具も用いる。

 

特に鋤や鍬、鎌等は得意らしい。鎌といっても、死神が使うイメージがあるサイズではなく、草刈り鎌の方だが。

 

今サクナヒメが手にしている鋤が、淡く光を放っているのをケンシロウは見て、自身も何時でも動けるように備えていた。

 

敵が最初に来るならば。確実に此処だからだ。

 

また揺れが来る。

 

船が攻撃されている。

 

艦外を映しているモニタに一瞬だけそれが入り込んだ。

 

何か光の塊のようなものが、この方舟に纏わり付くようにして飛んできている。攻撃はいちいち重く、受ける度に方舟は揺れていた。

 

「は、反撃は……!」

 

「現在敵を解析中です。 攻撃するためにはプラズマバリアを解除する必要があり、敵の解析が出来ていない現状は無視をするのが最善と判断しています」

 

「やられっぱなしって事かよ!」

 

「落ち着け」

 

アーサーの声に動揺する同僚に対し、静かに低い声を出したのは。ブレアという歴戦の兵士だった。

 

ケンシロウほどでは無いが長身で、戦闘でも相当な実力者である事は一目で分かった。

 

サクナヒメに対しても抵抗を最初から殆ど示していなかった人物で。

 

歴戦の、故に柔軟な思考を持っていることは確実だ。

 

「此処に俺たちは調査に来た。 それを忘れるな。 今の最優先事項は、纏わり付いてきている蠅を叩き落とすことじゃない。 まずはシュバルツバースに侵入することだ」

 

「そ、そうだな」

 

「……」

 

サクナヒメは一瞥だけすると、視線を忙しく動かしている。

 

恐らく、攻撃を仕掛けてきている「蠅」が、壁越し更にはプラズマバリア越しに見えているのだろう。

 

ケンシロウも、気を感じ取ることは出来るが。

 

どうも異質な気で、サクナヒメほど早くは反応できていない。相手が悪魔、それも高位のものであれば仕方が無い事だ。

 

そのまま、高度を落としていく。

 

揺れは徐々に大きくなっていくが。

 

まだ致命的、と思える揺れは来ていなかった。

 

不意に、攻撃が止む。

 

同時に、めまぐるしく周囲の気配が変わり始めた。

 

サクナヒメが目を細める。

 

「カメラが……」

 

兵士達がおののく。

 

既にカメラに写っているのは砂嵐だ。

 

それならば、もはやどうしようもあるまい。この立て続けに代わる気配。

 

恐らくだが。

 

シュバルツバースに突入したと見て良いだろう。

 

それに、攻撃も止んだようだ。

 

強烈な揺れは、一旦止まっていた。だが、明らかな異様さがある。落ちているのか。いや何かが違う。ケンシロウにも分からない。

 

落ち着きを取り戻す兵士もいるが。怯えきっている兵士も決して少なくは無い。

 

ただ、それが致命的な所で爆発していないのは、サクナヒメやケンシロウ、ブレアなどの一部の人員が落ち着き払っているからだろう。

 

だが、突如として。最大規模の揺れが来る。

 

攻撃では無いな、と冷静にケンシロウは判断。

 

だが、この揺れは、今までで一番のダメージを船体に与えているようだった。

 

ふっと、力が抜けるようにして、船が完全に落ち始めるのが分かった。

 

一瞬からだが浮いたが、それもすぐに止まる。

 

落下の制御を掛けて、不時着をするつもりだろうな。

 

ケンシロウはそう思った。

 

色々な紛争地帯に出向いて、軍の経験は積んだ。

 

不時着も経験がある。

 

国際再建機構に対して敬意を示す人間も多いが。自分の利権だけ欲しがって、敵意を剥き出しにしてくる外道もいた。

 

戦いはどれだけやっても終わらなかった。戦場で心を病む奴も見てきた。

 

そんな戦いの中。劣悪な作戦には何度も参加し。多くの悪党を倒して来たのだ。

 

「不時着するぞ! 気を付けろ!」

 

「どうやら船が落ちるようじゃのう。 それでもどうにかなりそうだが、「此処」は守らねばなるまい。 武神たるわしが手を貸してやろう」

 

サクナヒメが浮き上がると、周囲に無数の光の帯が伸びる。

 

兵士達全員に、その帯が結びついた。

 

「此処にいる者は、戦闘力を残しておかないと話になるまい。 わしが守ってやるでな、感謝せい。 ケンシロウ、そなたは自力で対処できるな」

 

「当然だ」

 

「うむ……」

 

北斗神拳は中華拳法の奥義の集大成のような代物だ。対策は幾らでも出来る。

 

サクナヒメとの問答の直後。強烈な揺れが、周囲を蹂躙していた。

 

一瞬、照明が消える。デモニカスーツの補助があっても、周囲は深淵になる。

 

だが、常闇はすぐに晴れ、予備動力が起動した。ケンシロウはそれほど詳しくはないが、確かこの船の電気は並列化されていて。また仮に動力炉が止まっても、数ヶ月くらいは電力をまかなえるらしい。

 

ただ今の様子では、動力室にダメージが行ったはずだ。

 

どれくらい支えられるかは分からない。

 

中空に浮いていたが、降りたつサクナヒメ。

 

既に展開していた光の帯は、彼女の背中に戻っていた。文字通りの羽衣であるらしいのだが、柔軟に使いこなしている。習熟度が尋常では無い。

 

ケンシロウは、いわゆる発勁を用いて今の衝撃を殺し無傷。兵士達も、サクナヒメの羽衣に守られて無傷。少なくとも、この物資搬入口の兵士達は。

 

困惑している兵士達。

 

皆、不時着時の衝撃は、知っているのだろう。

 

サクナヒメが、明らかに声色を変えた。ケンシロウも、既に身構えている。

 

「ケンシロウよ、感じるか?」

 

「ああ、凄まじい悪意に囲まれているようだな」

 

「来るぞ! 皆、呆けておる場合か! そなたらは戦士であろう! 武器を取れ!」

 

声を張り上げるサクナヒメ。

 

やはり武神。戦場でする事を全て心得ている。

 

ケンシロウは確かにその言葉に嘘は無いと、実感していた。

 

ケンシロウは普段殆ど口を利かないが、戦闘時は興奮のせいか多弁になる傾向がある。口も悪くなる。

 

目の前で、物資搬入口の一部が無理矢理こじ開けられ始める。

 

戦闘は、避けられそうに無かった。

 

 

 

真田は急いで、予備電力で確認できる範囲内でのダメージを確認していた。

 

何か訳が分からないものから攻撃を受けた。それはいい。

 

正太郎長官の操縦は流石で、途中からは攻撃を完全に見きって、防ぎ切ったからである。プラズマバリアも、全力展開は必要ないほどだった。

 

ムキになって攻撃を仕掛けてくる正体不明の存在を、余裕を持ってあしらう様子は、流石と思わず呟いたほどだった。

 

だが問題は、その後だった。

 

得体が知れない空間に突入した。どんどん奥へ進んでいき。そして、恐らく最奥に来た。

 

一度止まって、状況を確認すべき。そう判断した直後に、猛烈な衝撃が来たのである。

 

それは攻撃では無く、何かしらの反発によるものである事を即座に理解した正太郎長官であったが。

 

それでも遅すぎた。

 

衝撃に対して、逆らわないように艦を逃がしたが。

 

その時既にプラズマバリアはやられ。艦のメイン動力は停止。

 

ただ、0.1秒遅ければ艦は空中分解していただろう。

 

補助動力をフル活用して、不時着をするべく、全力で艦橋のクルーは動いてくれていた。

 

不時着には成功した。

 

だが、現在、艦の周囲がどうなっているかは分からない。

 

ゴア隊長が立ち上がり、叫ぶ。

 

「各自戦闘態勢! アーサーは!」

 

「沈黙しています! 衝撃で主電源が停止したときの影響と思われます!」

 

オペレーターの悲痛な声。

 

まあメイン動力が停止したのなら、仕方が無いだろう。

 

ゴアは頷くと、即座に声を張り上げていた。

 

「もし私が敵なら、総攻撃を仕掛けてくる筈だ! 艦内に緊急放送を流せるか!?」

 

「……其方に回します」

 

「おう、真田技術長官、有り難い」

 

ゴアが破顔する。

 

興奮を醒ますためだろう。咳払いすると、春香に耳打ち。気絶を免れていた春香は頷くと、真田が急いで走り書きしたメモを受け取り、すぐにゴアの側にあるマイクに向かって叫んだ。

 

やはり胆力が尋常ではない。

 

「現在の状況を説明します。 方舟はシュバルツバースへの侵入に成功しました。 しかしながら、途中で未知の力に遮られ、潰れる前に不時着を判断。 現在不時着し、メイン動力を喪失しています」

 

叫ぶようなことは無く。

 

あくまで静かだ。

 

その声が、艦橋の者達を即座に落ち着かせる。

 

「艦内に敵性勢力が侵入している可能性があります。 戦闘要員は即座に武器を取り、非戦闘員を守ってください。 追って指示します!」

 

「オマエ邪魔だなコロス」

 

不意に出現する気配。

 

春香の斜め真後ろだ。

 

其所に出現したのは、デモニカスーツを介しては、何かぼやっとしか分からない存在だったが。

 

確かに、殺気を込めて。春香に何か降り下ろそうとしていた。

 

春香はとっさに避けようとしたが、間に合うはずもない。

 

だが、即応したものがいる。

 

ストーム1である。

 

ぎゃっと、悲鳴が上がり。ぼやっとした何かが吹き飛ぶ。

 

ライサンダーの完璧な狙撃だった。

 

更にストーム1は、立て続けに彼方此方に四発の弾を叩き込む。ぎゃっとそれぞれ悲鳴が上がり、艦橋に潜入していたらしい者達が撃ちおとされる。

 

それら死体は全てが人に似ていたが。

 

翼があったり尻尾があったり。

 

いずれもが、人間ではなかった。

 

そして、いつかストーム1とケンシロウが、ライドウさんの召喚した悪魔と戦った時のように消えていく。

 

「助かりました!」

 

「ああ。 ……この様子だと内部が危ないな。 俺は近場から回る」

 

「頼む」

 

すぐに艦橋を飛び出すストーム1。

 

ともかく、敵の第一波を凌がなければならない。

 

春香は手慣れた様子で、倒れている者や、傷を受けているものを見て回り、トリアージを始めている。それを見て、艦橋の補助要因。怪我人が出た場合の医療班も動き始めていた。

 

ゴア自身も動いて、周囲の怪我人の様子を確認している。

 

真田は補助動力を使い、敵の侵入経路を調査する。

 

銃声がする。

 

この様子だと、かなりの数が既に侵入している。犠牲者を出来ればゼロにしたい。負傷者だって、出したくはない。

 

だが、可能な限り現実的に動く。それが今、真田がするべき事だ。

 

春香が真田に声を掛けて来る。

 

「真田技術長官、腕が! 今応急手当てします!」

 

「ああ、これは気にしなくて良い。 私のこの腕は作りものだ。 現時点で私の体に問題は無い。 他を回ってくれ」

 

「分かりました。 無理はなさらずに」

 

「ありがとう」

 

左腕を激しくぶつけて多少損傷したが、それくらいは別にどうでもいい。春香に言った通り義手だからである。

 

真田は複数ある予備電力の一つを更に復旧させる。そして、つながった動力室に連絡を入れた。

 

「此方艦橋、動力室はどうなっている!」

 

「此方動力室! ライドウ氏とその悪魔が皆を守ってくれた! 全員無事だ!」

 

「よし。 動力の様子は」

 

「メイン動力炉は一旦停止させた! 今は断線した予備動力を復旧中!」

 

断線の様子が送られてくる。

 

判断としては正しい。

 

動力炉は核融合だ。

 

もしもの事があったら爆発して、方舟どころか周囲全てが消し飛んだのだから。

 

核融合は基本的に核分裂と違ってその危険はほぼないのだが。それでも万が一の対応としては満点である。

 

「メイン動力炉の状態を確認後、復旧させろ。 戦闘要員は、そのまま待機!」

 

「し、しかし物資搬入口で戦闘が行われているようなのです!」

 

「繰り返す! 戦闘要員は待機だ! 動力炉の守備を優先しろ!」

 

「イエッサ!」

 

ふうと、真田は冷や汗を拭った。

 

スペシャリストの集まりとはいえ、やはりまだまだ経験が足りないか。

 

艦橋にまで敵が入り込んでいるような状態だ。何処に敵がいるか分かったものではない。

 

動力炉は文字通りこの方舟の心臓である。

 

潰されてはたまったものではない。

 

それに、搬入口にはケンシロウとサクナヒメがいる。彼処に入り込んだ悪魔は、自分の不運を後悔することになるだろう。

 

真田が次々と、各所へと連絡を入れていく。

 

倉庫、無事。

 

戦闘はあったものの、軽傷者少数で人員の損失無し。物資も重要物資は無事。

 

医療室、無事。

 

戦闘が行われたものの、ライドウさんの悪魔が駆けつけ、敵を撃破。現在負傷者の治療中。生命線になる医療スタッフは全員無傷。これは非常に大きい。

 

廊下では各所で戦闘が行われているが、現時点では味方が有利。特にストーム1が参加してからは、ほぼ一方的な戦いのようだ。

 

真田はその度によし、といって返答するが。

 

問題が生じていた。

 

ラボとの連絡がつかないのである。

 

そうこうしている内に、真田の尽力で電波系統を回復させる。そして、デモニカでの通信を復旧させた。

 

デモニカは並列化して機能を共有できるだけではない。

 

こうして通信を互いにする事も可能である。

 

だが、それには起点としての方舟の電波中継器が必要であり。其所が今までダウンしていたのだ。

 

今、現地にいる支援チームと連携し、真田が半ば無理矢理復旧させた所だった。

 

「デモニカとの通信復旧! 各班班長、状況を連絡せよ!」

 

「此方ラボチーム……」

 

嫌な予感が当たったか。

 

そもそもこの攻撃、物資搬入口以外でも重要地点を最初に狙ってきていた。敵には誰かが情報を流していたとしか思えない。

 

悪魔と結託する輩がいるとは信じたくないが。

 

ライドウさんの話によると、混沌勢力の悪魔の中にも、人間を手下として使役しているものはおり。

 

そういった者の中には、テロリストと連携していたりするものがいるという。

 

カルトの中には、悪魔の息が掛かっているものもあるとかで。

 

今まで国際再建機構に恨みを抱いていた人間がスパイとして入り込んでいる可能性は否定出来ない。

 

この船内にいるとまでは思いたくは無いが。

 

やはり、国際再建機構内にはスパイがいたのだろう。それも方舟の設計を知るレベルの地位に、だ。

 

「四名、拉致された。 敵は不意打ちを掛けてきて……」

 

「それ以外の被害は」

 

「薬がかなりやられた」

 

「薬はいい。 また作れる。 人員の損害は」

 

真田が若干声を荒げたのに気付いたか、肩に手を置かれる。

 

正太郎長官だった。

 

一呼吸してから、自身の興奮を落ち着ける。

 

真田こそ、一番冷静でいなければいけない立場なのだ。

 

真田がもう一度、同じ事を聞き直すと。相手も真田の声の変化に気付いたか、応えてくれる。

 

「重傷者七名、軽傷者五名。 死者はいないが、重傷者は危険な状態だ」

 

「よし、医療班は無事が確認されている。 トリアージしろ。 誰も死なせるな!」

 

「イエッサ」

 

ラボチームの防衛班チーフも、やっと少し気力を取り戻したようだった。

 

さて、最大の問題は搬入口だが。

 

やがて連絡がある。

 

「此方ブレア。 物資搬入口に侵入した敵の掃討に成功」

 

「よし。 損害は」

 

「軽傷者八、重傷者五。 全員、医療室に向かわせる」

 

「間違っても外に追撃には出るな。 現在、船内の安全さえ確認されていない状態だ」

 

よし、これで一段落か。

 

ただ、まだ船内に悪魔がいる可能性は否定出来ない。真田はコンソールを忙しく操作し、復旧作業を進めていく。

 

何、以前の二回の自殺同然の航海では。この程度の復旧作業、しょっちゅうやっていたのだ。

 

ましてやこのレインボウノアは、基本設計から全て真田がやっているのである。

 

一から十まで全て知り尽くしている。何の問題も無い。

 

程なくして、メイン動力炉が問題が無いことを確認。起動し、プラズマバリアを復旧させる。船内の安全は確保出来たと見て良い。潜伏している悪魔がいても、ライドウさんが潰してくれるはずだ。つまり敵の増援は断った。此処からは、ゴア隊長の役割だ。

 

冷や汗を拭う。

 

アーサーの復旧がまだである事。悪魔の侵入経路がよく分からない事。

 

これらが解決できていない以上。まだまだ、安心は出来なかった。

 

ゴア隊長が声を掛けて来る。

 

「真田技術長官、船内の安全は確保出来たか」

 

「うむ、それは間違いない」

 

「よし、それならばこれより拉致された四名の救出作戦を開始する」

 

ゴア隊長が自身もアサルトライフルを持って、物資搬入口に向かう。

 

真田は一瞬止めるべきかと思ったが、大丈夫。

 

さっきの報告で、負傷者にサクナヒメやケンシロウはいなかった。ストーム1やライドウさんも無事である。

 

それならば、ゴア隊長が救出部隊の指揮を執る必要はない。

 

最悪の事態に備えて、物資搬入口で指揮を執るだけだろう。

 

後は、プラズマバリアの状態を確認しつつ。真田は、支援するだけだった。

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