後ろから糸を引き。
そして野心のために、命を踏みにじるものです。
最初は違ったのかも知れません。
しかし今は……
多少わざとらしかったが、予定通りに全ては進んだ。
マンセマットは、ライトニングの存在していた空間から、現在は別の空間に居を移している。
そこは今鉄船がいる空間の次の場所。更に強大なる大母が存在する空間だ。
この空間でも、既に秩序陣営と混沌陣営の悪魔が戦いを始めているが。その秩序陣営側の戦力が足りない。
その戦力が足りない事を利用し、マンセマットは其所に入り込み。主導権を確保したのである。
そして今は、ライトニングを使ってカマエルとサリエルが持ち込んできた機器を使い。文字通り高みの見物を決め込んでいた。
「全ては計画の通りだな」
「ええ、完璧ですね」
マンセマットは笑う。
ライトニングを使って持ち込んだ、悪魔合体の「成果物」。あれは紛れもなく、人間が行った行動の結果だ。
外で財団と呼ばれている組織は、そもそも悪魔合体プログラムを入手すると、早速兵器の作成に取りかかった。その過程で彼らは、人間も合体材料に出来る事を知ったのである。
悪魔一匹を捕まえるのに、特殊部隊の精鋭一個小隊が必要になるとも言われている。
悪魔を捕まえるのに掛かるコストを考えれば。悪魔と人間を混ぜて、生物兵器を作る方が安い。
そう財団の者達は考えた。
そうして膨大な実験が繰り返された。あの残骸の悪魔もどき達は、その結果。ライトニングによって運び込んだのは、殆どがあれらだ。
なお、データを多少改ざんして、シュバルツバースで此方に連れ込んだ人間を使って実験をしたように見せたが。
実際に財団はシュバルツバース突入前にマンセマットらに掌握されていた。
そして、何よりである。
マンセマットは、ワインを転がして失笑する。
財団の成果物こそが。マンセマットなのだ。
そう。財団が非人道的行為の果てに悪魔合体の成果としてこの世に降臨させたのがマンセマット。
財団の者達は狂喜した。聖書にて、モーセの逃避行などで登場する大天使を手中に出来るとは思っていなかったのだろう。
そんな財団の上層部を、マンセマットは降臨するや否や即座に皆殺しにし。
財団の組織としてのシステムだけを乗っ取って、秩序陣営の勢力を強化するために用いた。
正確には、悪魔合体でマンセマットが出来た訳ではない。
悪魔合体で作り出された素体に、マンセマットが降臨したというのが正しい。
いずれにしても、財団には感謝しなければならないのは事実だ。
秩序陣営の天使は、余程の事がない限り、目立って人間の前に姿を見せてはならない事になっている。
それを無理矢理呼び出したのは財団の者達だ。
人間の愚かさまさに極まれり。
モーセの出エジプトの頃から、人間は何も変わっていない。
その事実をマンセマットに知らしめてくれたし。
何より、こんな連中、使い潰したところで何の問題も無いと理解させてくれたのだから。
せいぜいマンセマットの野心を満たすための道具にさせて貰う。
それだけである。
「それであのがらくたはどうするつもりだ」
「もう一手、必要になると考えています。 光の御子たる存在を誕生させるためには、ね」
「ふむ。 それがあの作戦か……」
「そういう事です。 鉄屑の中には、どうせもう必要なものは存在していません」
ジャックの部下達は、全部玩具にした後、マグネタイトに変換して食ってしまった。
はっきりいってそれくらいしか使い路が無かったから、それでいいのである。
面白そうな物資については、此方。今いる空間の、マンセマットとカマエル、サリエルが使っている部屋に移し終えてある。
つまり、あらゆる意味であの骨董品にはもう存在価値が無い。
だったら、せめて最後の一押しに使う。それで、あの船も本望だろう。
カマエルと二人で笑った後、偵察に出ているサリエルから連絡がある。どうやら、鉄船の人間共が。彼らがフォルナクスと名付けた大母の空間で動き始めたらしい。まあ、どうでもいい。
此方で動くのはもう少し後だ。
ゼレーニンは、あの工場の中をモロに見た。
更に、何が行われたかのデータもモロに解析した。
最近は不届きにも、あの武神サクナヒメに心を許し。唯一にて絶対なる神に対して疑問を抱き始めていた様子だが。
そんな不貞は許されない。
すぐにでも、こちら側に引き戻し。
このシュバルツバースの仕組みを利用して、世界を秩序に一気に傾け。
マンセマットが出世するための肥やしにしてくれる。
唯一絶対の神への忠義は揺らいでいない。
だが、人間に対する愛など、マンセマットは欠片も持ち合わせていない。
強いていうなら、神の奴隷として振る舞うのであれば、人間に価値はあると考えているくらいか。
「そういえばマンセマット。 お前が提供したパワーどもだが、反応が消えたぞ」
「まあいいでしょう。 元々いずれ消すつもりでありましたから」
「……嫌な予感がする。 俺の方がお前よりも戦闘経験は豊富だ。 くれぐれも、油断だけはするな」
「そうですね。 確かに同志たる貴方の言う事には今まで何度も助けられてきました」
カマエルを信用しているのは事実だ。人間の信仰によって振り回され、苦労してきた同志なのだから。
もう少し、念入りに手を打っておくか。
そう判断すると、マンセマットは配下を呼び寄せる。既に相当数の天使がこの場に集っているが、その中の精鋭達だ。
ただし、思考能力はないに等しい。
天使に共通する弱点。神に思考を丸投げしてしまっていて、自分で考えることをしないのである。
指示を出しておく。何の疑問も無く天使達は従う。
後はマンセマットは見ているだけでいい。
いずれにしても、勝ちは確定だ。何しろ、今マンセマットが抑えている場所は。
最高の切り札の上なのだから。
(続)
牙を剥くライトニング。そしてその背後にいる者達。
邪悪な陰謀との戦い。
それは大きな転機を皆にもたらします。