Sストレンジジャーニー   作:dwwyakata@2024

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ティアマトとの激戦で文字通り更地になったフォルナクス。

此処にはもう用はなく。

更に強大な次の空間が待ち受けます。


4、次の大母の空間へ

ピラミッドも崩壊したセクターフォルナクスで、補給と方舟の修繕を進める。やはりあのティアマトの魔術の雨を打ち砕いた方舟の主砲。相当に使うのに無理が掛かる兵器であったらしく。修理に数日はかかると言われていた。

 

その間唯野仁成は、物資を補給すべく動いているプラントを横目に、周囲を巡回して回る。

 

ティアマトが倒された。

 

それを聞いて、興味を持った悪魔がいるのだろう。フォルナクスにはまだ悪魔が多数到来していて。方舟に面白がって近寄ってくる。

 

面白がって来るだけなら良いのだが、勿論人間を取って食おうとする奴もいる。それも大母の空間に来られるような奴となると、弱い奴だけではない。

 

其所で、巡回が必要になっていた。

 

ティアマト戦での活躍が評価され。更に嘆きの胎四層で、単独でアレックスを退けた事もあり。

 

ついに唯野仁成は、機動班クルーの一部隊を率いて独立行動をすることを許可された。

 

勿論スペシャル達にはまだ及ばないことを理解しているが。それでもこれは大出世である。

 

ヒメネスも同様。

 

多数の魔王を従え、戦闘で使いこなしていることが評価され、同じ立場についている。

 

今は六つの班が出来た事になり。

 

その六つの班をローテーションで廻しながら、プラントと方舟の周囲を巡回。近寄ってくる悪魔が悪戯しないように見張り。従えられるようなら従え。襲ってくるようなら退けるべく、周囲を回っていた。

 

姫様が来る。数名の機動班クルーを連れていた。

 

「唯野仁成よ。 交代の時間だ。 方舟に戻って休むといい」

 

「有難うございます。 それでは後はお任せします」

 

「うむ」

 

唯野仁成はそのまま引き継ぎを行って、サクナヒメにその場を任せる。プラントは相変わらず旺盛に物資を回収しているが。まだ物資を回収し続けていると言う事は、あの戦いでのダメージが、それだけ大きかったと言う事だ。

 

船内ではインフラ班が、部品をカートに乗せて行き交っている様子が見える。

 

邪魔にならないようにレクリエーションルームに戻ると、手持ちの悪魔を確認する。

 

四層では、複数の看守悪魔を倒したが。囚人だったデメテルは例の如く逃亡中。新しく戦力は加えられていない。

 

ただ現時点で、戦力の不足も感じてはいない。

 

大母級の相手とまともに正面からやり合う場合になれば戦力不足が露呈するかも知れないが。

 

現時点で、そんな無謀なことはしないし。する予定もない。

 

ただ、四層の戦いで得られた情報集積体を見ていく。

 

魔王インドラジッドが強そうだ。インド神話において、ヒンドゥーが主体になる前に主神だった存在、魔神インドラに勝利したもの。最強の羅刹にて、数十億の敵を蹴散らしたという逸話を持つ存在。

 

インド神話は中国神話同様にとんでも無い数字が出てくるとは言え、それにしても凄まじい数字に思わず苦笑してしまう。

 

ただ、魔王だったらヒメネスに譲りたい。ヒメネスは最強の悪魔で手持ちを揃えたいようだし、インドラジットのような強さの権化だったら、それは欲しがるだろう。別に唯野仁成にとってどうしても必要な悪魔ではないのだから。

 

それよりも、興味があるのは堕天使アガレスだ。

 

ワニに乗った老人の姿で顕現していたが、元々ソロモン72柱の序列一位であるこの堕天使は(資料によっては第二位)。そもそも老人の姿では無く、女の子の姿で現れる事もあるという。

 

いずれにしても強力な堕天使であり、魔術を使わせると早々遅れを取る事もあるまい。アガレスはサクナヒメにぼこぼこにされていたが、アレは接近戦を挑まれた上に相手が悪かったからだ。

 

ただイアペトスが居心地が悪そうにしているので、男性悪魔もほしいのは事実。そう考えると破壊神アレスもいいか。

 

破壊神というのは、神々の中でも破壊と創造を担当する存在の事。破壊神というと何だか邪悪な神のように思えるが、実体はそんな事もなく、破壊と同時に創造も司ることが殆どだ。

 

ヒンドゥーのシヴァ神が特に有名だが、アレスも破壊神としては悪くは無い。ローマ神話のマルスとしての要素が強く出てくれれば、ツラだけイケメンのただのアホな噛ませ犬という残念神格ではなく。武勇優れた誇り高い神として顕現してくれるかも知れない。

 

少し悩んだ後、唯野仁成は手持ちの悪魔を確認。戦闘では使わない、周囲で交渉などで捕獲した悪魔達。

 

これに加えて、データベースから悪魔の情報を取得。

 

アレスを作れるか確認する。

 

タイタン神族のイアペトスとは少し仲が悪いかも知れないが。しかしながらオリンポス神族の中でも鼻つまみ者のアレスだ。逆に馬が合うかも知れない。

 

少し調べて見たが。この間のティアマト戦で得られたマッカの量が途方もなかった事もあって。どうやらアレスを作る事は難しく無さそうだ。

 

一応艦橋に申請を入れる。許可も下りた。

 

デモニカを電源に接続。アレスの悪魔合体を開始する。

 

凄まじい電力を食う。

 

流石にどれだけ弱くても、オリンポス十二神の一角だ。流石に作り出すのには相当な苦労を擁するか。

 

しばしして、合体が完了。ざっとデータを確認するが、良い。恐らく、ローマ神話のマルスとしての要素が強く出ている。これならば、弱くて足手まといと言う事にはならないだろう。

 

方舟を出ると、丁度部屋からヒメネスが出てくる所だった。

 

苦笑いするヒメネス。恐らくヒメネスも、同じように新しい悪魔を作っていたところだったのだろう。

 

「考える事は同じだな。 何作ったんだ」

 

「最初はアガレスにしようかと思った。 だが、俺の手持ちでは、イアペトスがどうにも居心地が悪そうにしていてな。 破壊神アレスにした」

 

「アレスか。 支援魔術のスペシャリストらしいな。 前線でも戦える」

 

「戦闘ログを見たが、そのようだ。 ストーム1の狙撃にもあれだけ耐えていたし、相当にタフなのだろう」

 

ヒメネスはと言うと、どうやら悩んだ挙げ句にラーヴァナにしたらしい。

 

インドラジットにしなかったのかと聞いたのだが。インドラジットは、スルトと同格くらいの神格らしく。

 

どうやらまだヒメネスの手には負えないそうだ。

 

そうなると、唯野仁成でも作るのは難しかったかも知れない。

 

まあ、この辺りは世の中上手く行かないものだ。

 

プラントの側で、二人揃って新しい悪魔を召喚する。

 

雄々しい巨神が二人、側に出現していた。

 

一人はローマ風の鎧兜に身を包んだ、雄々しい巨神。ただ、寡黙なイアペトスと比べると、だいぶおしゃべりなようだったが。

 

「我を呼び出したのは貴様か。 中々見所がありそうな奴。 我が剣、預けるぞ」

 

「ああ、頼むぞ破壊神アレス」

 

「任せよ。 我が剣は勝利を呼ぶ剣にて、我が盾は不屈を示すもの。 我を呼んだことを後悔はさせぬ」

 

言うだけ言って高笑いすると、アレスはPCに消える。

 

そして、そんな様子を呆れてラーヴァナは見ていた。

 

インド神話の羅刹らしく、多腕多頭の巨大な姿である。見るからに邪悪な姿をしているが、魔王とはそういうものだ。

 

「軽薄な男よ。 まあいい。 実力は相応にあるようだからな」

 

「おっさんがラーヴァナだな」

 

「いかにも余こそランカーを支配するラクシャーサの王ラーヴァナである。 余を従えるとは見所があるな人間よ。 名を聞かせよ」

 

「ヒメネスだ。 これからよろしく頼むぜ」

 

たくさんの頭で頷くと、ラーヴァナはPCに消える。

 

やれやれと頭を掻くヒメネス。

 

唯野仁成の視線に気付いて、こっちを見た。

 

「なんだヒトナリ」

 

「すっかり調子が戻ったようだな」

 

「……ああ。 何とかなった。 ありがとうな」

 

「良いんだ。 後は懸念していることが一つある」

 

咳払いすると、周囲を見回す。これだけのスペシャルが巡回している状況だ。多分盗み聞きはないと思うが。

 

それでも、デモニカの通信を利用して会話をする。

 

「ライトニングの一件、どうにもおかしいと感じないか」

 

「ああ、今になって冷静に考えると作為的だな」

 

「もしもあのライトニングの件、裏で糸を引いているとしたら誰だと思う」

 

「……確か財団は秩序属性の勢力にいるとか聞いていたが」

 

そうだ。

 

そして、思い当たる強力な秩序陣営の悪魔は二柱。

 

一柱はデメテル。恐らくこっちは違う。というのも、デメテルは嘆きの胎を中心に活動している。実りとやらを収穫する事に興味があるようだが。それ以外にはあまり出張ってこない。

 

一方怪しい奴がいる。

 

最近姿を見せない上に、視線を感じるのだ。どうも天使が最近、近くを彷徨いているのが気になっていた。

 

あれが、奴の指示だったとすると。状況を観察していることになる。

 

「要はあのペ天使か」

 

「まだ確証は無いが、可能性は高い。 そして奴が狙っているのは、恐らくゼレーニンだ」

 

「……確かにあの一件で、本当だったら一番ダメージを受けそうだったのはゼレーニンの方だったよな」

 

カルトに墜ちる人間は、心に大きなダメージを受けた後の事が多い。

 

元々それなりに敬虔な一神教信者のゼレーニンだ。此処で徹底的な人間不信を植え付ければ、後は。

 

頷きあう。後、念のためゼレーニンにも連絡を入れておく。

 

ゼレーニンは、マンセマットの動きが怪しいと言う話をしても、以前想定されたような拒絶反応を見せず。静かに可能性はあると答えていた。

 

ならば、後はすることは決まっている。

 

奴の尻尾を掴む。

 

恐らく、マンセマットが行動に出てくるとしたらそろそろだと思って良い。

 

備えておくに、こした事はなかった。

 

 

 

(続)




激戦の末に二体目の大母ティアマトを屠った英雄達。

しかしティアマトの強大さは、この先の過酷さを思い知らせるかのようでした。
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