Sストレンジジャーニー   作:dwwyakata@2024

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圧倒的な力を誇った邪龍ティアマトを討ち取った英雄達。

しかし、まだ深淵の闇は底が見えません。

そしてライトニングの裏で蠢いていた悪辣な存在と、ついに矛を交える時がやってきました。


何も其所に真はない
序、バニシングポイントの壁


方舟で、一度エリダヌスに戻って来た。唯野仁成は、方舟の揺れを一切感じなかった。真田さんが、故障を直す間に、改善もしてくれていると言う事だ。

 

エリダヌス上位空間には、相変わらずバニシングポイントが存在している。

 

周囲にはまだ天使と鬼神の陣地があって、小競り合いを繰り返している様子だ。

 

勿論介入するつもりは無いのだろう。唯野仁成にも、出撃の指示は出なかった。

 

天使や鬼神も此方には興味が無い様子で、斥候を出しては来たが、すぐに引き返していく。

 

敵ではない。

 

それだけで十分という状況なのだろう。

 

逆に言うと戦力が拮抗しているため、第三勢力を下手に刺激したくないという事なのかも知れない。

 

秩序側も混沌側も、頭がいる。

 

指揮官がついているから、それぞれが一応考えて行動している。

 

混沌側は戦力が雑多としているが、個々の戦闘力は高い。とはいっても秩序側は、非常に整然とした陣形を敷いている。

 

実力が拮抗しているのは一目で分かる。まあ、対応としては唯野仁成としても軍人としては正しいと言わざるを得ない。

 

エリダヌスでしばらく停泊する。とはいっても、数時間ほどだ。

 

此処でバニシングポイントを観測して、外に出るための「壁」の消滅を調べているのだろう。

 

バニシングポイントからの、つまりシュバルツバースの脱出は現在最重要優先事項では無い。

 

だが、もしもの事がある。

 

その時のために、大母を倒した効果がきちんと出ているか。その結果、次の空間に行く事が出来るか。

 

それらの観測については、色々と必要なのだろう。

 

また、観測が終わった後、艦橋に呼び出される。

 

船内に放送が久々に掛かった。

 

放送を担当しているのは、いつものように春香だった。

 

「クルーのみなさん、お疲れ様です。 無事に本船はセクターフォルナクスの攻略に成功しました。 大母ティアマトを撃ち倒し、そのロゼッタを回収することにも成功。 また、先ほど確認した所、バニシングポイント内の「壁」が消滅し、残り二枚になっている事も判明しました」

 

おおと、歓声が挙がっている。

 

勿論、まだ情報は足りない。

 

ティアマトから出た膨大なマッカと、同時に回収されたロゼッタ。特にロゼッタからは、次の大母の空間に行くための量子のゆらぎの情報と、更にシュバルツバースを破壊するために必要な情報も入手しなければならない。

 

現在真田さんの研究室で必死に解析をしてくれている筈だが、間に合うかどうか。

 

「これより国際再建機構本部に連絡を入れ、進捗について報告、更には情報の交換を行います」

 

一旦春香がアナウンスをストップ。

 

同時に、真田さんが、重力子通信装置を起動。これも、相当に改良が加えられているらしい。

 

間もなくモニタに、米国の大統領をはじめとする各国VIPの姿が映り込んでいた。

 

咳払いして、ゴア隊長が話を始める。

 

「此方レインボウノア。 セクターフォルナクスの攻略に成功。 これより次の空間にスキップドライブをする準備を始めているところです」

 

「おお。 そうなると、更に攻略が進展していると言う事だな」

 

「はい。 しかしながら大母の戦闘力は想定以上で、毎回かなり厳しい戦いが続いています」

 

「うむ。 此方からも、出来るだけ情報は送ろう」

 

まあ情報しか送る事が出来ないのだし、貰える情報は出し惜しみ無しだ。

 

まず財団だが、解体が進んでいると言う。その過程で山のようにスキャンダルが噴出。財団に依存していた国によっては、経済が傾きつつあると言う。それらへの経済支援が大変だと、ぶちぶち米国大統領が言い出す。

 

非人道的実験の証拠は此方から送ったはず。

 

だいたい今は世界が終わるかどうかの瀬戸際なのに。

 

これは、駄目だな。

 

唯野仁成は呆れながら、米国大統領の醜態を見ていた。

 

その後は、現在のシュバルツバースの状態について、映像が出る。南極を覆い尽くしていないが、確実に広がりつつある。既に各地では軍を配備し始めているという。悪魔の戦闘力についてのデータは送ってある。多少は戦況がマシになれば良いのだが。そもそも、悪魔をシュバルツバースから出してはいけないと言う方が正しいか。

 

「次の空間を攻略後、また連絡を送ります。 これ以降は、必要な情報を重力子でデータとしてお送りください」

 

「うむ、期待しているよ」

 

通信が終わる。

 

溜息をわざとしたのはサクナヒメだ。誰もそれを咎めない。

 

「あれが現在世界最大の国の国家元首か。 器が知れるのう」

 

「今はどこの国もああですよ、姫様」

 

「盆暗でも政が出来る仕組みを作ったとは聞いておるが、それにしてもこれは酷いとしか言いようが無い。 まあわしには関係がない話だがな」

 

サクナヒメのド正論は勿論艦橋の全員に聞こえているが、まあこれに反発するものはいないだろう。

 

ライトニングの空間にあった工場での惨劇は、方舟のクルー全員が目撃しているし。

 

何よりも外の世界でも、国際再建機構が既に財団の凶行を世界レベルで報道している。隠すことは不可能である。

 

それでありながら、財団が動かしていた金だけを目当てに、凶行に目をつぶれというのはムシが良すぎる。

 

ましてや世界が滅びる瀬戸際なのに。

 

この先があると考えているのは、少しばかり頭が緩すぎはしないだろうか。それについては、唯野仁成も厳しい意見だと思いつつも。そう断ずるを得なかった。

 

咳払いすると、真田さんが発言を開始する。

 

「では諸君。 まず次の空間へのスキップドライブについてだが、これは同じようにエリダヌスから行う。 これはバニシングポイントが上位空間の起点になっているからで、方法については同じだ」

 

「また攻撃を受ける可能性は……」

 

「分からないが、現時点で主動力炉、副動力炉ともに万全の状態で、前回の攻撃の倍の出力で攻撃を受けても余裕で弾き返すことが出来る。 何にも絶対は存在していないが、この方舟は確実に進歩を続けている。 其所は皆安心してほしい」

 

「真田さんの開発力は流石だな」

 

ヒメネスが冗談めかして言うと、周囲が和やかな雰囲気になる。サクナヒメも笑っていたくらいである。

 

まああの胸くそが悪い通信の後だ。これは正しい対応とも言える。

 

ヒメネスも順調に回復してきているようすだ。

 

それどころか、まさかムードメーカー的な行動を取るとは。

 

これはひょっとするとだが、もう以前より回復しているかも知れない。

 

少し前に、ヒメネスにバガブーを返した。その時少しデータを見たのだが、いつの間にか25パーセントもあった組成異常がかなり改善していた。

 

それについてヒメネスは何も言わなかったが。

 

或いはひょっとすると、あのぐるぐる眼鏡のメイド堕天使が何かをしたのかも知れない。考え得る事だった。

 

艦橋での今後の戦略についての話が終わると、早速行動が開始される。

 

皆、それぞれの持ち場につき、自分の体を固定。

 

慎重すぎるほどだが、しかしながらこれは最初の不時着があったし。この間フォルナクスに突入したときに受けた攻撃の事もある。決して慎重すぎる行動とは言えない。

 

全員に点呼が行われ。

 

それぞれ、体を船内に固定していることが判明し。

 

それから、レインボウノアは。方舟は動き出した。

 

天使の陣営も鬼神の陣営も、忙しく兵力を動かして争っている。このバニシングポイントを巡っての争いだとすると、どちらかが勝った場合。何か面倒な事を言い出すかも知れない。

 

現時点では、そう簡単に勝負がつきそうにないのが救いか。

 

出来るだけ急いで、作戦を遂行しないといけないだろう。

 

唯野仁成は物資搬入口に出向くと、其所で体を固定した。ヒメネスは廊下。ストーム1が艦橋を守る。

 

レインボウノアが突入開始。

 

これで都合七つ目。嘆きの胎を入れると八つ目の空間突入だが。

 

毎度緊張させられる。

 

加速し、バニシングポイントに突入した方舟は。更に内部でスキップドライブを行う。

 

これも上位空間であるエリダヌスに突入するときに既に経験済みの無茶な航法だが、それでも出来るのが凄い。

 

今回は、追撃して攻撃をしてくる者もいない。

 

揺れることも無く方舟は飛び。そして、二度目のスキップドライブで、一瞬からだが浮くような感覚に見舞われた。

 

加速が終わり。減速が始まる。

 

まだ船外画像は出てこないが、何だかもの凄く嫌な気配がある。デモニカを着込んでいるから分かるのだ。

 

これは、今までを超える異常な世界の様子だ。

 

減速が終わり、やがて停止。そして、方舟は降下を開始した様子だ。少なくとも地面はあると見て良いだろう。

 

着地。これも、揺れがとても小さくなっている。

 

全員体の固定を解除。指示を待つ。場合によっては、アントリアの時のように、悪魔がいきなり船内に突入してくる可能性もある。

 

それを考えると、誰もが生唾を飲み込む他無い。

 

アサルトの状態を確認。

 

AS99と呼ばれるモデルにまで強化されたこのアサルトは、空間支配者級や銃撃がそもそも通用しない相手でもない限り、悪魔に大きな打撃を与える事が出来る。

 

ただ地上で作る場合、AS20等の国際再建機構が標準装備しているアサルトの、およそ二百倍に達する単価が掛かるという事で。

 

ストーム1の装備しているAS100Fに至っては、更にその数倍の高級品だという。

 

シュバルツバースで、湯水のように貴重な物資が入手できるから作る事が出来る装備なのであって。

 

外に出たら、これを持つ事はもう殆どのクルーはないかも知れない。

 

しばしして、通信が入った。

 

「此方マクリアリー。 外の様子が確認できました。 ただ……あまりよく分からない状態です。 気をしっかり持って見てください」

 

「? どういうことだ?」

 

「さあ……」

 

困惑する声は、すぐに黙ることになる。

 

モニタに映り込んだ映像は、文字通り想像を絶するモノだった。

 

渦のように、無数の空間がねじれているかのようだ。

 

それぞれの空間は、今まで通ってきたアントリアからデルファイナスまで。いや、これはエリダヌスの下位上位空間、そればかりかフォルナクスのピラミッド内、凪の海のような地面まである。

 

無数に絡み合った空間が、ゆっくり回転しながら、周囲で渦巻いている。

 

何なんだこれは。

 

文字通り言葉を失った皆に、アーサーが捕捉してくる。

 

「画像を解析しました。 この空間では、どうやら光学情報が著しく妨げられている様子です。 空間の歪みも多数感じられますが、直接この空間を目で見るのは極めて危険かと思われます。 これより真田技術長官と共に、デモニカの調整を行います。 しばし機動班クルーは戦闘に備えて、船内で待機してください」

 

なるほど、見えているものが本当とは限らないと言う事か。

 

空間そのものが妖怪のような場所だ。

 

無言で、そのままじっと状況を見る。マクリアリーが追加で情報を告げてくる。

 

「ドローンを飛ばして船外の状況を確認したところ、気温はー90℃、200気圧」

 

「北極並みの寒さに、深海2000メートル並みの圧力か……」

 

「これ、デモニカが破損したら一瞬であの世行きじゃないの?」

 

「可能性は高そうだな」

 

不安の声がする中、サクナヒメが咳払い。

 

それで誰もが黙る。

 

サクナヒメは普通にそのまま出るのである。それに、このデータも真田さんに還元され、デモニカを強化してくれることだろう。

 

しばしの沈黙の後。

 

二日ほどでデモニカのアップデートを行うと通信があった。二日か。南極の既にかなりの部分を、シュバルツバースが覆い尽くしているのがさっきの通信で見えた。まだ海上にまでは出ていないが、南極に住んでいるペンギン等は絶望的だろう。

 

もたついている時間は一秒もない。

 

かといって、二日程度では、嘆きの胎を攻略するには少しばかり時間不足だ。それに真田さんとしても、此処で情報を可能な限り採りたいだろう。

 

アーサーが、最後に告げた。

 

「この空間を、アルファベットのGにちなんでグルースと命名します。 グルースでの目的は今までと同じ。 空間を支配している強大な悪魔、大母の撃破とロゼッタの入手となります。 また、この空間では混沌陣営と秩序陣営の悪魔が巨大な陣地を構築している様子で、場合によっては戦闘が想定されます。 特に秩序陣営の陣地には三つ、強大な悪魔の気配が存在している様子で、そのうちの一つは以前接触が何度かあった大天使マンセマットとデータが一致します」

 

「出やがったなペ天使が……」

 

ヒメネスの声が聞こえた。

 

恐らくマンセマットは此処に天使の最終的な拠点を作った、と言う事なのだろう。

 

そして仕掛けてくるなら、恐らく此処だ。

 

何を仕掛けてくるかは分からないが、最大級の警戒をしなければならないだろう。

 

二日間はできる事はない。そのまま、休憩をするように指示があったので。素直に従う事とする。

 

自室で寝る者も多いが、レクリエーションルームに出向く者もいる。

 

唯野仁成はレクリエーションルームに出向いて、驚くべき光景を目にした。ヒメネスが、丁寧に悪魔合体について二線級のクルーにレクチャーしている。さっきみたいに冗談まで言えるほど打ち解けているようではない。だが、それでも確実に、嘘も言わず突き放すこともなく、丁寧に説明していた。

 

「ありがとう。 随分と参考になった」

 

「良いって事よ。 一人強くなれば、それだけストーム1や他の皆の負担も減ることになるからな」

 

皆、レクリエーションルームから出て行く。それぞれ悪魔合体を試すのだろう。

 

アイス製造器の側に座ると、アリスを呼び出す。アイスたくさんという約束を果たすためである。

 

なおアリスもティアマト戦では文字通り全力を絞り出したこともあって、数日は静かだったが。

 

そろそろ普通に喋るようになって来ていたので、アイスについては近いうちにおごる予定だった。

 

「抹茶のジェラートで良いか?」

 

「今日はソフトクリームの気分」

 

「分かった」

 

要望に応えて、抹茶のソフトを作る。なお、真田さんが設計した後は、アントリアで救出したアーヴィンが作り、更にチェンが改良を重ねているという。アイスは確実においしくなっているようで、アリスが文句を言うことはない。味もどんどん追加されて増えていた。

 

隣にヒメネスが座る。やはり憑き物が落ちたように、雰囲気が軽くなっていた。

 

「たまには俺もアイスを貰おうかな」

 

「味は何がいい」

 

「バニラで。 ジェラートで頼むぜ」

 

「基本にして王道だな」

 

すぐに作って渡す。なおスプーンの類は使い捨てでは無く、洗って再利用するため、そばに再利用のための回収ボックスがある。

 

唯野仁成自身は、チョコミントのカップアイスにする。

 

そういえば米国人は、ガロン単位でアイスを食べるらしいが。

 

妹の夫は米国人の学者だ。もしも方舟に乗っていたら、このアイス製造器を大喜びしていたかも知れない。

 

「ヒトナリおじさん、次はねー」

 

「あんまり食べ過ぎると腹をこわすぞ」

 

「そんなに柔じゃないよ」

 

「分かってる。 ものの例えだ」

 

さっそくソフトクリームを食べ終えたアリスに次をリクエストされたので、作ってやる。自分で作れとか、そういう事は言わない。

 

アリスとしては、唯野仁成が作ると言う事が、信頼関係構築の一つになっているのである。

 

その辺りは、幼い妹と接していた経験がある唯野仁成には分かる。

 

アリスは悪魔の知識もあるし残酷なところもあるが、精神的には幼い子供だ。以前接触してきたベリアルの話を聞く限り、未熟な技術で作られた人工の悲しい悪魔なのだろう。だから、精神も成長しない。

 

ベリアルの行動を非人道的と責めるつもりは無い。アリスが命を落としたのは、それは酷い状況だったのだろうから。

 

そこからこうやって助かったのだ。

 

それだけでも、充分すぎる位だろうと、唯野仁成は思う。

 

ヒメネスは、食欲旺盛なアリスを見て、苦笑い。

 

「アイスが好きだな本当に」

 

「まあ実際此処のアイスは美味しい」

 

「そうだな」

 

ヒメネスも同意するか。色々味にはうるさそうなのだが。

 

軽く幾つか他愛もない話をした後、本題に入る。マンセマットがいる事がはっきりしたのだ。

 

幾つかトラップを仕込んでおきたい。

 

ゼレーニンにも相談には加わってほしいのだが。残念ながら今ゼレーニンは研究室で缶詰である。

 

真田さんが、「かねてから開発していた」をぶちかますには相応の苦労が必要になる。そんな事は唯野仁成も分かっている。

 

研究室に出入りしているメンバーの役割は、そんな真田さん、文字通りメカニックという意味でのこの方舟の守護神。その手助けをすること。

 

今は、ゼレーニンの負担を増やせない。真田さんの負担を更に増やしてしまう事になるからだ。

 

装備の大半が真田さんの手によって著しく強化され。それで皆が何度も命を拾っている。

 

それを考えると、感謝以外の言葉は無い。

 

口うるさいヒメネスでさえ、真田さんの作った装備に文句を言ったことは一度もないくらいなのだから。

 

「……こんなのはどうだ」

 

「そうだな。 それならば、こういうのも……」

 

「……良さそうだな。 ついでに……」

 

幾つかの案を互いに出し合った後、大まかな話としてまとめておく。

 

この辺りデモニカに記録機能があるので大変便利だ。なんと議事録を勝手に作ってくれる機能まで最近追加された。

 

便利すぎて至れり尽くせりである。

 

「よし。 後はゼレーニンと打ち合わせして終わりだな」

 

「ああ。 あのペ天使の尻尾を今度こそ掴んでやる」

 

「だが分かっていると思うが、マンセマットは手強いぞ。 それと同格の大天使が更に二体いるとなると、油断も出来ない」

 

「分かっているさ」

 

勿論、姫様をはじめとするスペシャルにも、話は共有する。

 

ストーム1達はそのままデモニカに送れば良いが。問題はケンシロウとサクナヒメである。ケンシロウはデモニカにデータを送っても見ているかが不安だし。サクナヒメはデモニカを使わない。

 

唯野仁成がサクナヒメに、ヒメネスがケンシロウに話をしに行く事に決めて、その場は別れる。丁度、アリスもアイスを充分堪能したタイミングだった。

 

ヒメネスはケンシロウに、格闘戦のアドバイスを受けに行くという。なお、最近骨折から復帰したウルフも、リハビリでケンシロウに指導を受けているそうだ。

 

サクナヒメはビオトープ帰りだったらしく、満足げな表情をしている。軽く話をすると、すぐに険しい表情になったが。

 

「マンセマットの名前が出た時点で警戒はしていたが、なるほどな。 よし、作戦にはわしも噛ませて貰おうか」

 

「お願いします姫様」

 

「ああ。 あの野心まみれの薄汚い翼を見たら、ミルテも嘆くだろうな」

 

知らない名前だが。ひょっとすると、サクナヒメが故郷で接していたという一神教徒かも知れない。

 

いずれにしても、二日寝ている訳にもいかない。

 

他にもやるべき事はいくらでもある。

 

淡々と作業を行って、何時でも戦闘できるように準備を進めながら。

 

唯野仁成は、作戦の開始に向け、心身の錬磨を怠らなかった。

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