ウルティノイドは笑わない   作:凱旋門

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皆様方、お久しぶりです。といっても10割くらいの方は初めましてでしょう。
凱旋門と申します。宜しくお願い致します。

本作は『ウルトラマントリガー』放送当時、ガゾートの話でギブアップしてしまった作者が何を思ったか今更になって、実はトリガーってこんな設定なんじゃない? と半ば妄想と勢いで書いた作品です。その為原作の設定はガン無視です(そもそも原作の設定ほぼ知らない)。

そんな作品なのでトリガーが好きという方はブラウザバック推奨となっております。ご容赦くださいませ。

それでは本編どうぞ。


プロローグ

 本当はわかっていた。

 

 この世界にヒーローはいない。

 

 僕は何の変哲もないただの人間で、

 

 いくら願ったところで超人になんてなれなくて、

 

 最後まで諦めなかったところで英雄が助けに来てくれるわけなんかじゃない。

 

 誰かが言った。この世界は残酷だ。本当にその通りだと思う。

 ほんの数年前の僕であったならば反論しただろう。でも今は違う。気づいてしまった。この世界はどこまでも残酷になれる世界なんだ。それは本当に底がない。底なし沼の絶望に足を突っ込んだが最後、終わることのない絶望に絡み取られていくんだ。

 

 それでも、僕は——

 

「…………」

 

 荒廃した街を歩く。

 ここはかつてこの国の中心だった。日本という、今は存在していると言ってしまっていいのか怪しい国の名だ。

 大きな交差点だった。横断歩道同士が交わり、車道の数も多い。大昔は、このスクランブル交差点と呼ばれた場所は雪崩のような人の行き来があったのだという。それが今や、この場所にいるのは僕一人で、灰色の風がひっきりなしに吹き、ユリに似た黄色い花が揺られて黄色いガスのような花粉を飛ばす。

 かつてその花を求めた人々は、今はもういない。誰も、もういない。

 

 交差点の中心部に近づくにつれ、それの輪郭はぼんやりと現れる。

 

 それは巨人だ。だが生物ではない。それは人が抗うために作り出した偽物の巨人。かつて誰もが憧れたヒーローを模っただけの、中身のない入れ物だ。自己を持たないが故に利用され、争い、そして世界を滅ぼした。

 

——ウルティノイド、と、人はその鋼鉄の巨人を呼んだ。

 

 全長50メートルと僅かばかり。外敵の侵略を撃退すべく作られた人型決戦兵器。しかしその巨人は、今は胸から下を地面に埋められてしまっている。

 カラータイマーの色はなく、目に光はない。きっともう長いことこの地に放置されているはずだ。灰色に覆われた体がそう教えている。

 怪獣と戦ってこうなったのか、不要になったからこうされたのかはわからない。知る術ももう残されていない。この世界でその真相を知るのは、この男の記憶のみである。

 

「ウルティノイド一号機、トリガー」

 

 思えば数奇な運命であった。この巨人を操り、男は戦ってきた。その始まりは偶然すぎた。そして戦いの数々も。

 人類は人類の手でこの地球を守り抜いた。しかし、その先に残されたのがこんな結末だった。

 

 これを作った人はこの巨人に期待を込めたはずだった。この世界を救ってくれるように、と願いを込めて全身全霊を込めて作り上げたはずだった。

 だが、もたらしたのはただただ破滅だった。人類を守るべくして作られたウルティノイドたちは互いに争い、滅ぼしあい、そしてすべて失われた。

 

 奇跡は二度も起こらない。

 失われた命は戻らない。

 

 君は確か、僕にそう言った。その通りだと思う。

 

 巨人の元まで歩いていく。巨人を取り囲むがれきの山の上にそれはあった。埃にまみれた筒状の物体だ。持ち手は大理石のような材質で、上部は金色の装飾が施されている。スパークレンスであることは一目でわかった。

 今更になって現れた力。もう何の意味もない。もう後の祭りだ。どうにもならない。時を戻すことはできない。時は進めることしかできないのだ。

 

 僕は何度も諦めてきた。それでも最後の分岐点で諦めなかったからここに立っていられる。でもそれじゃ意味がない。絶望にくじけ、欲望に押し負け、純粋な願いに己の意思を捻じ曲げた。

 不条理に、不合理に、常識に、絶望に揉まれるつらさはわかっている。それでも——

 

 これは悠久の時を超えて『僕』に送る言葉だ。

 

——それでも、諦めるなよ。

 

 奇跡は二度も起こらない。ならば今、一度目の奇跡を起こそう。

 

「キリエルの神々よ——」

 

 その日、神の炎が世界を埋め尽くした。だが、それは悲劇ではなかった。失われた命はたったの一つだけ。それを観測した者も、未来に伝えるものもなかった。そうしてそれは存在しないものとなった。それまでの歴史も、人々の葛藤も、足掻きも、須らくは原初より存在しないものとなった。

 

「頼んだぞ」

 

 それがこの世界最後の音だった。




 ※この話はフィクションであり、実在の人物、団体、国家などとは何の関係もありません。
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