「お、オルカは北通りからそちらへ移動中!接触まで30秒です!!」
見張りのガードは無線機に呼びかけるが、指揮官からの応答はない。
30秒?あと30秒で、ヤツがここに来る?
「指揮官?!応答してください!しきがっ……」
強烈な破砕音がして、部下からの通信が途絶えた。その音で指揮官は我に返り、さきほどとは真逆の、恐怖に染まった真っ青な顔で震え出した。
「指揮官?どうされましたか?」
傍のガードの一人が、指揮官の変調に気づいて声をかけた。要領を得ない呻き声をあげ、頭を抱えてうずくまる指揮官の肩を掴む。
ばね仕掛けのように勢いよく、指揮官は顔を上げた。
「指揮官?」
「そ、そういっ、たっ、たたたたいたい、たいきゃっ……」
「指揮官?!しっかりしてください!どうされたのですか!」
パクパクと口を開閉し、意味をなさない言葉を口にする指揮官にガードは驚くものの、正気に戻すためにその両肩を掴んで揺する。無能とは思っていたが、これでも部隊の指揮権を持っているのだ。冷静でいてもらわなくては困る。
その時、激しい銃声の隙間から、誰かの叫び声が聞こえた。
「オルカだ!オルカが出たぞ!!」
「……ヒ、ヒイィ!!!」
指揮官は一際大きな悲鳴をあげると、目の前のガードを突き飛ばして駆け出した。
「ヒ、ヒイイィぃぃぃ!!!ヒィイィぃぃぃぃ!!?!?!」
「し、指揮官?!どちらへ?!」
ガードは一目散に逃げ出した指揮官を追おうと立ち上がるが、恐慌した指揮官はあっという間に距離を離して、通りをがむしゃらに走っていく。
醜い悲鳴を上げながら逃げる、マーケットガードの指揮官。その上の、薄煙に照らされた星のない夜空から、白黒の影が降ってきた。
アスファルト片が砕け散るとともに、卵をまとめて潰したような、鈍く湿った破砕音が、街灯に照らされた通りに響く。
ブラックマーケットのガードとはいえ、腐っても軍用規格のオートマトン。その装甲は並の銃弾は通さぬほど堅牢であるし、フレームもそれに見合った剛性を持っている。
それを、空から降ってきた人間は、一撃で丸ごと叩き潰したのだ。
ゆっくりと上体を起こしたその人物は、火花を散らし痙攣する残骸から、左手一本でスレッジハンマーを引き抜く。ぐちぐちと湿った音とともに、オイルがヘッドに絡みついて糸を引く。
塗装の剥がれた、赤いヘッドのスレッジハンマー。黒い髪と、白黒のパーカー。そして、その頭頂に浮かぶ、青く深い海から覗く、三角の背ヒレを模したヘイロー。彼女がこのディープの恐怖の象徴であることを示していた。
「せ、瀬黒……オルカ……」
さがしています!
指名手配
瀬黒 オルカ
学園 不明
学年 不明
年齢 不明
誕生日 不明
特徴 黒いボブカット
濃い隈
三白眼
波間から覗く三角の背ヒレの模様の藍色のヘイロー
白いローラースケート
武装 8ゲージ 水平二連式ショットガン
赤いヘッドのスレッジハンマー
見かけたらヴァルキューレ警察学校へご連絡を。