あっという間に数を半分にされ、虎の子の装甲車を失った強盗のリーダーの思考は、すでに目の前の怪物を倒すことではなく、どのようにして逃げるかということに変えられていた。
行われているのは、もはや戦闘ではない。群れに突撃しては、確実に数を削り取る。本物のシャチそのものの、一方的な『狩り』。
ハンマーにかち上げられ、宙を舞ったオートマトンが、そのまま銃撃されカトンボのように四散する。
「ど、どうしますかリーダー!このままじゃ全滅です!このまま捕まったら、俺たち……」
怖気付いた仲間を、強盗のリーダーは思い切り蹴り付けた。現金輸送車の車体に凹みをつけうめく仲間を、何度も踏みつけながら怒鳴る。
「余計な、こと、言ってんじゃねえ!いま、今考えてんだよ!!」
今や貴重な戦力を自ら一つ削った愚かな強盗は、悪態をつきながら輸送車のドアに手をかけた。
リロードを見計らって突進してきたオートマトンの頭を、ローラーシューズでもって文字通り一蹴する。ひしゃげた金属塊が、小片を散らしながらボールのように飛んでいく。
強盗が背後からナイフを突き立てるが、その切っ先はオルカの背には刺さらず、耳障りな音をたてて折れた。振り向きざまのハンマーが、両腕を突き出したままのオートマトンの脇にめり込む。頭部センサのライトが消えるのを見て、オルカは停止した機体を蹴飛ばした。
火花を散らすオートマトンの残骸が道路に散乱していく。本来であれば、多少の被弾などでは破壊できない軍用マシンを、ほとんど一撃で粉砕する圧倒的戦闘力。
不眠のオルカ。一切の睡眠を取らず、ディープを荒らす者を無慈悲に排除する彼女につけられた渾名だ。
決して話さず、決して逃さず、決して死なず。彼女の中の一定のルールを破った者を、あの廃ビルの上から見つけ出し、徹底的に罰する。
そんな彼女の、ある種
だからこそ、他所から流入してきた物知らずのならずものが、調子に乗って暴れることもある。
強盗のリーダーは現金輸送車の運転席に乗り込みエンジンをかけた。
近くにいた仲間が三人、エンジン音に気づいて荷台や座席に飛び乗る。
「ずらかるぞ!他の役立たずどもは身代わりだ!」
残った仲間には目もくれず、リーダーはハンドルを切りアクセルを踏み込んだ。