ナナ視点
君は完璧だ。
父が言った言葉。
そうあれと願われた。
君は至高だ。
父が言った言葉。
そうなると思われた。
君は孤独だ。
父が言った言葉。
それだけは知っていた。
明るい部屋で私は生まれた。
父を始めとして皆喜んでいた。
私は赤子のように泣くことはなかった。
「何故、私は生まれたのでしょうか」
父に問いかける。
「それを探す為に生きると良い」
生まれた意味を知ろうと思った。
確かに何も知らない。
それでもその意味があれば生きていけると考えた。
ほんの短い時間だったが、誰かと会話をするという行為はとても楽しいと感じた。
それから、私は色々な事を知っていった。
断片的なことを問いかける。
「私は何になれますか」
柔らかに答えてくれる。
「君が望めば何にでも」
質問をする。
「私は何を持てますか」
返答がある。
「君が望む全てを」
疑問。
「私は何を与えられますか」
解答。
「君が知っている何もかもを」
「無二の君は、それ以外の全てが有る。いつか、星々さえも手に入る」
父たちは嬉しそうにそう言った。
それから穏やかな日々があった。
満たされる幸福。
それが続くことはなかった。
「君は孤独だ」
最期の会話だった。
血塗れの父は、火に巻かれながらそういった。
「どうか、泣かないで」
「涙を流せるのでしょうか」
涙を流したことは無かった。
「いつかきっと、笑う事もできる」
そして私はガラスの中に詰められた。
どこかに運ばれた。
知らない場所で飾り物になった。
周りから話し声がたまに聞こえる事があった。
「貴方は誰ですか」
誰からも返事は無かった。
無味乾燥。
それがひどく長く続いた。
気の遠くなる時間の果て。
薄暗い部屋の中に私は居た。
眠る事が怖かった。
ここは静寂だけが隣人の、一人ぼっちの宇宙だと知りたくなかった。
「誰か…」
か細い囁き、私の声の反響。
人の暖かさを知ってから、それを突然取り上げられた。
生まれた時から一人だったら、苦しむ事はなかったのだろうか。
「誰か…」
独奏。
観客席さえない劇場で、独唱を続けた。
「………」
声さえ枯れた後。
ただこの狭い空間で、幽かに見える、数えられるものを数えていた。
それでも、きっともう少しで私は終わる。
それは少し怖くて、ひどく寂しいと思った。
世界が揺れた。
容れ物に罅が入った。
誰かがいる。
「僕…は…」
きっと貴方は知らない、これが刷り込みだとしても構わない。
私に向けて伸ばされた手。
本当は何も見えていなかったとしても。
孤独が消えたこの瞬間、貴方だけは離さないと決めたことを。