美味なる料理で魔王退治!? キッチン発のハチャメチャ救国記   作:月城 友麻

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13. 神話にうたわれしドラゴン

「くははは……。見ーっけ!」

 

 そこに立っていたのは魔人、グレーのジャケットをまとった銀髪の男だった。紫色に輝く不気味な剣を舌でペロッと舐めながら、赤く輝く瞳でロイヤルファミリーを見回す。

 

 魔人は魔王軍の中でも屈指の強さを誇る精鋭中の精鋭。前回登場した時は近衛騎士団を壊滅させ、多くの死傷者を出して暴れまわった極めてたちの悪い魔物だった。

 

 ひぃぃぃぃ!

 

 王女はユーキの後ろに隠れ、腰にしがみつく。

 

 助けが来る様子もなく、まさに危機的状況に絶望的な緊迫感が走った。

 

 ユーキは王女の手を握り、叫ぶ。

 

「シアン! レヴィア! お願い!」

 

「まーってましたぁ!」「ほら、呼んだろ? くふふふ……」

 

 いきなり現れる二人の少女。

 

 国王たちはいきなり現れた二人の可愛い少女に唖然とした。どこから出てきたのか、何をするつもりなのか全く分からずにただ、楽しそうな二人の少女をポカンと見つめるばかりだった。

 

「な、何だお前らは……?」

 

 魔人も嬉しそうな二人の登場に怪訝そうな顔をする。

 

「いっくよーー! アンぱーんち!!」

 

 シアンは目にも止まらぬ速さで魔人に迫ると、青色に輝かせたこぶしを顔面に叩き込む。

 

 ドッセイ!!

 

 グホッ!

 

 虚を突かれた魔人はまるでゴムまりみたいに床で弾んで、廊下の壁までふっ飛ばされた後、廊下の天井にぶつかり、ドサッと落ちてくる。

 

 Yeah!

 

 シアンは右手を突き上げ、満足げに笑った。

 

 おぉぉぉぉ!

 

 絶望を打ち破る青い髪の少女に国王たちは歓喜する。可愛い女の子が魔人を圧倒するというその信じがたい光景に神々しい奇跡を感じたのだ。

 

「こ、このガキがぁぁ!!」

 

 黒い血を口から垂らしながら魔人はよろよろと立ち上がる。

 

「あら、タフねぇ……。いいねいいね! くふふふ……」

 

 シアンはいいおもちゃを見つけたかのように、目をキラッと輝かせた。

 

「このわたくしに傷をつけた事、万死に値する! 死ねぃ!」

 

 魔人はシアンに向けて手のひらを向け、何かをぶつぶつとつぶやいた。

 

 ヴゥンと空気が震え、巨大な黄金色に輝く魔法陣が展開されていく。そのエネルギーは膨大でパリパリとそのエネルギーを辺りにまき散らし、黄金色の微粒子が舞った。

 

 ひぃぃぃぃ! うわぁ!

 

 部屋の中はパニックになる。

 

 しかしシアンはニヤッと笑う。

 

「遅い遅い!」

 

 シアンは手のひらを魔人に向けると同時に青色の激しい閃光を放った。

 

 ボシュッ!

 

 魔人は胸にポッカリと大穴を開け、唖然とし、魔法陣も維持できずに消失していった。

 

「ば、馬鹿な……」

 

 信じられない様子でよろよろと崩れていく魔人。

 

「あたしに勝とうだなんて六十万年早いわよ。くふふふ……」

 

 床に倒れた魔人は真っ赤な瞳の輝きを失い、粉のような微粒子を吹き上げながら薄れて消えていく。その向こうの壁には大きな丸い穴が開き、焦げて煙を上げていた。

 

 国王たちはその圧倒的な強さに息をのんだ。この世界では屈指の強さを誇る魔人。それが何もできないまま簡単に殺された。それはこの世界に新たな秩序が生まれる予感すら孕む異次元の事態だった。

 

 

     ◇

 

 

 その時、窓の向こうに明るい輝きがぽつぽつと灯った。

 

「な、何だあれは……?」

 

 国王は窓の外を見て恐怖に固まる。

 

 夕暮れの茜色から群青色にグラデーションしていく空のもと、中庭にはあちこちに紫色の大きな炎が立ちのぼって、そこから何者かが次々と出てきていたのだ。

 

「ゲートじゃ! 魔物がこんなにたくさん……はぁぁ……」

 

 レヴィアは窓に駆け寄って顔をしかめた。リザードマンやオーガらしきA級モンスターが次々と雄たけびを上げ、破壊の衝動に突き動かされている。それはまさに破滅の予感を呼ぶ一大事だった。

 

「こ、こんなにたくさん……もう、お終いだ……」

 

 とても防衛できそうのない大群の奇襲に、国王は真っ青になって言葉を失った。

 

「そう悲観するな。言うてもただの魔物じゃ」

 

 レヴィアは余裕のある笑みを浮かべる。

 

「レヴィア、何とかなる……?」

 

 ユーキは泣きそうな顔でお願いする。

 

「仕方ないのう。なんかお主の料理をくれんか?」

 

「クッキー……でいい?」

 

 ユーキは慌ててポケットからクッキーの包みを出した。

 

「あぁ、十分じゃ」

 

 レヴィアは窓を開け、三階の高さの窓枠にピョンと飛び乗るとクッキーを口に放り込む。サクサクとおいしそうな音が響く――――。

 

 直後、黄金の輝きがボウッとレヴィアの全身を包んだ。

 

「キターーーーッ!」

 

 レヴィアは両腕にぐっと力を込め、クッキーをシャリシャリと食べながら徐々に黄金色を激しくほとばしらせる。

 

「こ、これは一体……」

 

 その不思議な様子を見ていた国王は、一体何が起こっているのか分からずに首をひねった。

 

「僕の料理には食べた人を元気にする力があるらしいのです」

 

 ユーキはニコニコしながら説明する。

 

「な、なんと! 言われてみればワシも何だか力がみなぎっておるぞ!?」

 

 国王は力こぶを作り、ボウっと腕を黄金色に輝かせた。

 

 ひとしきりクッキーを満喫したレヴィアはふんっ!と全身に力を込め、まばゆく輝く。

 

「それじゃ、ひと暴れしてくるかぁ!」

 

 レヴィアはピョンと窓の外に飛んだ。

 

 直後、ボン! という爆発音とともに巨大なドラゴンが現れる。

 

 えっ!? ひぃ!

 

 国王は驚きで身動き一つできずにいた。その小さく可憐な少女が、なんと国の創建神話にうたわれるドラゴンの化身だったのだ。こんなことがあり得るのかと、混乱と驚愕で心が乱れる国王。そして、そのドラゴンが今、あろうことか料理人の少年の指示で魔物を退治に赴くのだ。これは国の根幹を揺るがす重大事件だった。

 

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