美味なる料理で魔王退治!? キッチン発のハチャメチャ救国記   作:月城 友麻

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16. 限りなくにぎやかな未来

 地震を引き起こしながらピョンと跳んだシアンは、倒れたゴーレムめがけて全体重をかけて落ちていく。ゴーレムを粉砕すべく、一兆トンの体重をかかとにかけてゴーレムに襲い掛かった――――。

 

 ゴーレムはごつい両腕を使ってがっちりとガードし、その超重量を受け止める。

 

 ズン!

 

 ものすごい衝撃が辺りを包んだ。

 

 グォォォォ!

 

 ゴーレムは超低音の咆哮を放ちながら腕に力を込め、逆にシアンを上空へと弾き飛ばす。

 

「くぅ……。厄介な腕だね……」

 

 五千メートルくらいの高さまで飛ばされたシアンは(それでも腰の高さだが)顔を歪めながら極低音のつぶやきを発し、麦畑に派手に着地した。またも街を大地震が襲う。

 

 ゆっくりと起き上がったゴーレムはシアンに突進していく。

 

 突進と言っても、身長十キロの両者の間は数キロもある。音速でも数十秒もかかってしまう距離なのだ。

 

 ゴーレムは右腕を大きく振り回し、そのままシアンのボディーめがけてぶつけていった。シアンは身体を丸くし、二の腕でその攻撃をしのぐ。二千億トンはある超重量級の攻撃に盛大な衝撃波が発生し、シアンの身体がきしむ。

 

 ぐぅぅぅ……。

 

 しかし、衝撃をいなすと、今度はシアンがそのゴーレムの腕をつかみ、両手で思いっきりねじった。

 

 ゴキン!

 

 腕が砕かれ、盛大な破断音が衝撃波となって辺りを襲う。

 

 グァァァ!

 

 極低音のゴーレムの悲鳴が響き、直径百メートルはあろうかという巨大な赤い目が激しく明滅した。

 

 グォォォォォ!

 

 ゴーレムは怒り狂い今度は左腕を振り回してくる。

 

 シアンは千切り取った右腕を野球バットのように持ち替えて、左腕を迎撃する。

 

 どっせい!

 

 極低音の掛け声とともに左腕をジャストミートするシアン。

 

 盛大な火の粉が散り、衝突面は熱で真っ赤に発熱し、衝撃波がまた辺りを襲っていく。付近の山に生えている木々はなぎ倒され、湖の水は巻き上げられていった。

 

 右腕を失っているゴーレムはバランスを取りそこない、体勢が崩れる。

 

 シアンはその隙を見逃さなかった。ちぎり取った右腕を大きく振りかぶり、渾身の力を込めて、そのまま一気にゴーレムに振り下ろす。

 

 マッハ五を超えた二千億トンの右腕はソニックブームを放ちながらゴーレムの脳天へと打ち込まれた――――。

 

 衝突面で爆発が起こり、岩は溶け、溶岩が飛び散っていく。

 

 ゴーレムはたまらずにノックダウン。

 

 ゆったりとその巨体を麦畑の上に沈めていく――――。

 

 やってきたチャンスに、シアンの碧い目がキラリと光った。渾身の力を込めてジャンプ。

 

 一気に高度百キロの宇宙まで跳び上がるシアン。

 

 まだ日没を迎えていない宇宙では、太陽の輝きがシアンを真っ赤に輝かせる。

 

 まるで巨大隕石のように音速を超えながら大気圏突入をしていくシアンは、そのままかかとからゴーレムのボディーへと全体重をかけて落ちていった。

 

 ゴーレムのボディーにシアンの足が突き刺さり、大爆発を起こす。

 

 かたい岩石で作られた巨体もその衝撃には耐えられず、無数のヒビを走らせてバラバラと崩れていく。

 

 最期、左腕を高くつき上げ、無念そうに震わせるゴーレム。

 

 ギュオォォォ……。

 

 断末魔の悲鳴を残し、ゴーレムの目の光がすうっと消えていく。左腕がバラバラに崩れ、麦畑に散らばる音が響き渡った――――。

 

 YES!

 

 シアンはドヤ顔で叫び、天高くこぶしを突き上げた。

 

 ドン!

 

 こぶしの速度はマッハを超え、衝撃音があたりに響き渡っていく。

 

 街の人たちはその神々の戦いのような信じられない格闘劇に呆然とする。ゴーレムもシアンも、街の人たちからしてみたらただの脅威以外の何物でもなかったのだ。

 

 

      ◇

 

 

「これで一件落着じゃな……」

 

 度重なる衝撃波や地震ですっかりやつれたレヴィアが、憔悴しきった様子でため息をついた。

 

「めちゃくちゃな戦いだったね。シアンはいつもああなの?」

 

「こんなの可愛いもんじゃ」

 

 レヴィアは肩をすくめた。

 

 これで可愛いとすると、日ごろシアンは一体どんな戦いをしているのだろうか? ユーキはゾクッとして思わず体を震わせた。

 

 その時、国王がすくっと立ち上がり、目を見開いてユーキを見つめた。

 

「その者、青き衣をまとい、世界を魔の手より救うだろう……」

 

 えっ……?

 

 ユーキは自分の服装を見る。確かに碧空亭(アジュール)の調理服は青色である。

 

「おぉぉぉ! あなたこそ我が王家に伝わる伝説の守り神であり、救世主であらせられましたか!!」

 

 国王は目をキラキラと輝かせながらユーキに駆け寄ると、ひざまずいた。

 

「えっ!? ちょ、ちょっと、国王様……?」

 

 いきなりのことにユーキは後ずさる。

 

「ユーキ殿はドラゴンを従え、神の使いを従え、そして、その素晴らしき料理で祝福を与えたのです。これを救世主と呼ばずしていかがしましょう?」

 

 国王は目に涙を浮かべ、手を組んでユーキを崇めた。

 

「いや、僕はただのコックで……」

 

 ユーキは手をブンブンと振ったが、レヴィアはその手をガシッと掴む。

 

「いかにも! ここにおわすは神話にうたわれた星を渡りし者の末裔、偉大なる神の使いユーキであるぞ! 皆の者、頭が高い!!」

 

 レヴィアはロイヤルファミリーを一瞥すると一喝した。

 

「失礼をいたしました!」「ハハァ!」

 

 王族一同はうやうやしくひざまずく。

 

「ちょ、ちょっとレヴィア……」

 

 ユーキはそのレヴィアの吹かしに唖然として言葉を失う。

 

 レヴィアはニヤッと笑うとユーキの耳元でそっと囁いた。

 

「これで借金の心配も無くなるし、いいことずくめじゃ。良かったな」

 

 いい加減なことを言って王様をひざまずかせた罪は一体どのくらい重いのか、想像もつかないユーキは宙を仰ぎ、静かに首を振った。

 

 こうして救世主にさせられてしまったユーキ。この後、世界のほころびに乗じて攻めてくる魔王軍たちを一掃し、本当に救世主になってしまうのだがそれはまたの機会に。

 

 

 

 

 

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