アーマードトルーパー、通称AT。何処かの馬鹿が開発したパワードスーツの1つであり、4~5m程の体躯、巡航速度41km/h、最大速度80km/h、30mmヘビィマシンガン使って戦場を縦横無尽に駆け回るパワードスーツ
歩兵にとってこれ程素晴らしい神様は存在せず、戦車にとってこれ程素晴らしい友達は居らず、戦術機にとっては足元をチラつくおじゃま虫
色々な呼び方が存在するが、あらゆる面で中途半端な存在である事に代わりは無い。ハーディマンほど立体機動が出来る訳でも無ければ、戦術機程機動性に優れている訳でも、戦車のように制圧出来る訳でも無い。あるのはBETAによって慣らされた平地を駆け抜け、歩兵や戦車を援護して回る事だけ
各種武装を搭載すれば要撃級相手であろうと戦えると言う謳い文句は、武装重量によって足が遅くなる欠点を指摘されるお荷物。しかしながら、このATの存在によって歩兵及び機甲科の損耗率低下に貢献している
マブラヴ〜鉄のララバイ〜
忌々しいBETAの間引き作戦開始の合図と共に、
それに追随して戦車や自走砲が走っていく。戦術機の間を縫うように
そんな戦術機や機甲科の足元、広く長く深く掘られた塹壕には、花形の戦術機や、縁の下の力持ちである機甲科から溢れた男女達が息を潜めていた
歩兵。対BETA戦闘において最も貧弱であり、死亡率は随一、生存率は最低、肉壁と救助以外役に立たないと陰で罵られ、火力も低ければ機動力も低い、戦場の最底辺
無論、誰もそんな事は口に出さない。何故かと問われれば衛士が戦術機から脱出した場合真っ先に保護するのは歩兵であり、戦線を維持する為の絶え間ない砲撃をするのも歩兵であり、戦車や自走砲の援護や応急修理をするのも歩兵であり、撃ち漏らされた戦車級の相手も歩兵の役目である。故に、誰も口には出さない、出せない
「来るぞー!!!射撃準備!!!」
司令部からの受話器を置いた曹長の声と共に、戦術機が撃ち漏らし、駆逐戦車が殺し損ねた戦車級がぞろぞろとやってくるのを視認する。持てる火力全てを撃ち込みまくっていると言うのに、死すら恐れず突っ込んでくるバケモノ共
自分達の死が目前にまで迫ってくる。逃げたくなるのを必死に我慢しながら、機銃掃射を開始する
だと言うのに止まらない。止められない。コイツらは止まる事を知らない。死体が積み上がればその死体を乗り越えて。あまりにも邪魔なら食いちぎって、コイツらは自分達を殺す為だけにやってくる
戦術機のいる所はもっと地獄だと言うが、そんなのは関係無い。自分達の死が目前にまで迫って、冷静になれる者は居ない
「死ね!!死ねクソBETA!!!!」
「遅いぞ!!神様はヒーロー気取りか!!!」
「あっちこっちで引っ張りだこなんだ、勘弁してくれ」
戦車とは違う無限軌道の音。独特の甲高い音を立てて走りながらターンピックを使って回転し、戦車級の死体を蹴り上げたソレは、歩兵の神様であり、戦車の友達であり、戦術機のおじゃま虫と揶揄される、4m程の体躯を持つパワードスーツ
今が地獄か、明日が地獄か。どちらも変わらぬ、彼等がするのはただ1つ
撃滅し続け、休む事すら許されない。此処は中国、地獄の戦線
奴等によって平らにされた地に、今日もローラーダッシュの音が響く
次回 マブラヴ〜鉄のララバイ〜
重慶攻防戦