マブラヴ〜鉄のララバイ〜   作:rezeaizen

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この極秘プロジェクトは、凄乃皇四型がオリジナルハイヴを攻略した後に発足しました
凄乃皇量産計画。とにかく入れ物だけでも作り、00ユニットの代わりになる何かが現れた時にその凄乃皇を使わせると言う、言うなれば行き当たりばったりなプロジェクトは、その後無事に日の目を見ることになりました
そう、鈴木重工が作り上げてしまったAIに白羽の矢が立ち、必然的に重信氏へと持ち込まれる事となります
そして、その計画は目論見通り、アメリカの復権を果たす事となります

─── AT博物館 量産型凄乃皇より抜粋 ───


凄乃皇量産計画

「BTのコピーを譲って欲しい、と」

 

鈴木重工帝都本社。年末の忙しい時期に米軍及び米国からの交渉人は、アポ無しでやってきた

その面持ちはとてつもない緊張に包まれており、襟元を何度も弄っては、大きく深呼吸する

その不自然なまでの緊張に護衛は重信の前と周囲を固め、手にしているアサルトライフルのセーフティは外し、変な動きをすれば即座に射殺する準備を整える程だ

 

そして、彼等は開口一番、BTのコピーを譲って欲しいと頭を下げたのだ

珍しい事もあるもんだ。なんて関心しながら、AIを嫌っていたのはお前らだろうに。なんて言葉が頭を過ぎる

が、使える物は使うと言うその行動力には絶賛を送るべきだ

 

「はい。正確にはその処理能力が欲しいのです。ATや戦術機を巧みに操り、既存の処理能力を大きく上回るその能力を使い、米国にて極秘で進んでいる凄乃皇量産計画を進めたく……」

 

提示される資料を手に取り、読む。凄乃皇弐型のように武装を荷電粒子砲のみに絞り、香月博士によって出された論文からラザフォート場の制御をする為に必要な処理装置を選定

それに選ばれたのがBTであり、火器管制及び操縦を衛士が行う。AI嫌いのアメリカらしい人間が最終判断を持つ代物となっている

既に機体の量産自体は始まっており、来年度からのハイヴ侵攻に合わせ、試作量産型の投入が見込まれている

 

無論、それは我が社……否、自分がBTのコピーを渡すかどうかによって変わる

そして、彼等は確信している。人類の為に全てを捧げているこの男なら渡してくれると

 

「……考えるので、お待ちを」

 

それはそれで癪だった。今まで二つ返事で請け負ってきたものの、コレはそう易々と渡していいものでは無い

言うなれば、00ユニットのようなことをAIにさせるつもりなのだろう。悪い事では無い。寧ろ、東雲のような人権を無視した者を作らなくて良くなるのだから

応接室に交渉人を置いたまま、廊下に出る。懐からチョコレートの入った金属ケースを取り出し、ぎっしりと詰まっているチョコレートを1つ取り、口に含む

 

ゆっくりと舌で溶かしながら、甘味によって強制的に頭を冴えさせていく。決して悪い事じゃない。寧ろいい事だ。今年度中には軌道エレベーターも完成する。その後の事を考えれば、寧ろ凄乃皇の量産は素晴らしい事だ

何を躊躇う必要があるか。この後は地球を纏めあげて人類連合を作れば良いだけでは無いか

 

誰も居ない廊下で色々なことを一人で考えていれば、特徴的な赤い髪の男を連れた女性社員が、自分の前で止まる

 

 

「ここに居ましたか、良かった。会長、此方東ドイツ亡命政府からの外交特使で……応接中でしたか?」

 

「いや、いい。彼等の方からアポも無くやってきたんだ、待たせてやきもきさせてやるさ」

 

そんな事を言いながら、外交特使と呼ばれた男に、自分は見覚えがあった

 

テオドール・エーベルバッハ

 

歳をとっているとは言え、その特徴的なまでの赤髪を、俺は忘れる事は無い

恭順派テロリストの親玉である男が、今や人類の希望たる企業に入り込んでいる

その大胆さこそがマスターたる所以か、なんて愚痴りそうになるのを抑え、女性社員を下がらせて、2人で長い廊下を歩く

 

「……まさか君が直接来るとはね。この本社に爆弾でも仕掛けたのか?」

 

「知っているのか?私を……知っていながら、護衛すら呼ばなかったと?」

 

怪訝そうな顔をする彼を見ながら、その顔に思わずけらけらと笑う。意地汚い笑い方である事は理解しながらも、そんな顔をするのか、なんて言う嘲笑も含んでいた

 

「名前と顔だけはね。それで?何か言いたくて来たんだろう?」

 

懐から再びケースを取り出し、チョコを口に含む。外交特使(テオドール)にも差し出せば、彼は意外そうな顔をして1つを手にして口に放り込み、噛み砕いた

 

「この地球上からBETAを駆逐するのは、本気なのか?」

 

「ああ、本気だとも。今来ている連中に私が首を縦に振れば、それが可能になる」

 

「……そうか」

 

廊下の端が見えてくる。突き当たりには非常階段があり、彼を逃がすには丁度いい場所だろう

複数の足音が、自分達の後ろから迫っているのがわかる

彼は少し考えた後、ふぅ、と溜息を吐いては何処かスッキリとした表情で此方を見た

 

「いつ、出来るんだ?」

 

「来年度には」

 

「早いな。しかし、そうか。出来るのか」

 

廊下の突き当たりへと辿り着く。非常口を示す緑色のランプがしっかりと点灯しているのを見ながら、重信は非常口の戸の鍵を開けた

 

「遂げろよ」

 

「言われずとも」

 

「テオドール・エーベルバッハ!!!貴様を武器の不法所持で現行犯逮捕する!!!外交特使だろうと不法所持は現行犯逮捕である!!!」

 

後ろからと下から。怒号にも似たその声と共に、テオドールは屋上へと駆け上がっていく。情報省の人間と警官が自分の横を通り過ぎていくのを感じながら、重信は不思議な笑いが込み上げていた

長いと感じていた廊下を戻りながら、懐から携帯電話を取り出して通話する。BTと枢木の許可を改めて取り、経営チームに一報入れ、通話越しに喚くのを聞き流し、重信は携帯電話を懐へと戻し、応接室の戸を開けた

 

この日、凄乃皇量産計画が本格的に始動した




Q.軌道エレベーターでどれくらい資源取れるんです?

A.ああ、先ずは軌道デブリからだ……と言う事で、大量にある軌道デブリを回収、地上に降ろして再利用しつつ、採掘用ATを積んだ元植民船で更に地球近辺にある資源を回収します
その後?ATって実は宇宙空間が十八番でしてぇ……月ってところがありましてぇ……

Q.テオドールくんの出番はもしかしてこれで終わり?

A.はい。色々と含む事もありましたが、重信くんは割り切れる大人になってしまったのです
因みにこの後、何故か世界的に恭順派の動きが止まります。なんでやろなぁ

Q.これ、護衛部隊くんまた再編成では…?

A.護衛部隊くんは事前にテオドールの身体検査及びX線検査を行って安全は確保してました
VXガス等を手や口内に着けていないのも確認していた為通しました
え?テロリストを世界的大企業の代表に会わせるな?それはそう
ついでに再編成はされませんでした。今回は重信くんのワガママだったので

─────────────────────

凄乃皇試作量産型

香月博士によって提唱された論文によって、ラザフォート場の安定制御が可能にはなったものの、00ユニットクラスの処理能力が必須である事が判明
金のかかり過ぎるソレをどうするかと悩んでいた所、ソ連にて使われたATや戦術機がAIによって動いている事を知った為、その処理能力を使える事を目論んだ米国はHI-MARF計画を再始動
量産体制に入ったものの、鈴木重信とのアポイントが取れず、年明けには開始されるハイヴへの侵攻を考えて直接本社を訪れ、AIと大量の処理装置を使用した制御装置を手に入れた

武装は荷電粒子砲のみで構成されており、サイズも90m程にまでダウンサイジングされている
搭乗者は1名、火器管制と移動制御を同時に行い、AI(BT)がそのサポートを行う

武装が荷電粒子砲のみの為直掩機が無ければ自衛すら出来ないものの、AIの処理能力によってラザフォート場とML機関の制御は完全に成されており、重光線級の照射も5分程度の連続射撃であれば無傷で切り抜けられる

既に3機が先行量産されており、地球上での活動が不要になった場合、宇宙空間への配備が決定されている
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