マブラヴ〜鉄のララバイ〜   作:rezeaizen

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インド亜大陸に横流しされたATの数は、未だに総数が把握できていません。1万機とも言われていますし、2万機とも言われています
横流し品は以後更に増えると考えられましたが、中華統一戦線が大連にまで押し込まれた後はピタリと止まってしまった為、インド政府側は正式に日本への支援を要請したのです
鈴木重工はこの支援要請に対し、新型AT、スタンディングタートルを受け渡し、1994年には制圧されると言われていたインド亜大陸の寿命を1年も引き伸ばす事に成功しました

─── AT博物館 インド亜大陸に派遣されたAT達より抜粋 ───


インド亜大陸 防衛戦

「クソッ、また泥噛みやがった!!!」

 

「だから言ったろ、駆動部は囲っとけって」

 

ケラケラと笑いながら、雨によってぬかるんだ地面を掘り返す2機のスコープドッグ。手に握られているのは重火器では無く、継ぎ接ぎで大きくしたシャベルである

現在、彼等は雨によって崩れた塹壕と道路の整備を任されている。懲罰的な意味合いも含まれているが、AT操作の習熟の為にやらされている側面も存在する

1人がコクピットから降りてローラーに挟まった泥を掻き出し、悪態をつきながら再度搭乗しては作業を再開する。彼等が基地へと戻る頃にはまた崩れているであろうが、彼等にとってそんな事はどうでも良かった

 

1993年 10月

 

インド亜大陸南部。インド亜大陸における最後の防衛拠点であり、人類の要所である海路を防衛する役割を担うこの場所は、最早いつ陥落してもおかしくない状態にある

総数2万機にまで及ぶ横流し品のAT、スコープドッグを重機のように扱うものの、PR液の枯渇によって半数は置物へと変わっていた

 

石油を使わずとも動く機構、簡単な操作によって歩兵ですら扱えるシンプルさ、何よりもあらゆる用途に使える利便性の高いこの機体は、前線の工兵からもっと寄越せと突き上げを喰らう程に浸透していた

重慶防衛拠点が崩壊してから横流しが無くなり、ATが使えなくなって来てしまえば、士官だけでなく佐官からすらATを使えるようにする要望が飛び始めた為に、インド政府は日本へと支援を要請

日本側は暫くの協議の後、鈴木重工へと依頼。鈴木重工は帝国軍内にAT部隊を編成する事、継続してBETAの死骸を輸入する事、国連軍に対してもAT部隊編成を提起する事、この3点を条件として請け負った

 

海路を使って送り届けられたのは大量のPR液と、スコープドッグとは似つかない新型機体、10万機のスタンディングタートルであった

武装ヘリ用の対戦車ミサイルをATで使う為のミサイルランチャー、胸部に内蔵された12.7mm機関銃、国連軍マガジンを改造して取り付けた30mmアサルトライフル、武装ヘリから応用した対要撃級用70mmロケットランチャー

そして、帝国軍から派遣された日本人教官数千名。彼等は重慶防衛戦線でATによって救助され、命は助かったものの、生体義肢によって戦術機に搭乗出来なくなった者達であり、日本に戻った後ATパイロット兼AT部隊指揮官として再教育された猛者である

 

10月8日 この日を境に1ヶ月間。インド亜大陸の前線から11万人の歩兵がAT訓練の為に居なくなり、戦術機及び機甲科の年間損耗率が1%上昇した

 

─────────────────────

 

1994年 1月1日AM0:01 通称 亜大陸のDデイ

 

インド政府はこの作戦に向けて各国に対し、大量の武装ヘリ用ミサイル、並びに武装ヘリ用ロケットランチャー弾の提供を昨年10月半ばから要請

国連軍、フィリピン、インドネシア、マレーシアがそれに応じて提供。大量の在庫を吐き出し、インド亜大陸の防衛強化へと当てる腹積もりであった

 

しかし、インド政府はそれを良しとしなかった。カシュガルハイヴから南進してきたBETA群相手に戦術機、機甲科、ATによる大規模反攻作戦開始を宣言。国連軍の制止を聞くこと無く作戦は開始された

誰もが負けると思っていた。誰もが今年で亜大陸は終わると考えていた。この作戦も失敗すると、当事者達以外は考えていた

 

奇跡、否、必然は起こった。日本から提供された10万機のスタンディングタートルは戦術機の代わりに前線を支えるように運用されたのだ。ATを使用して小高い山を事前に作り上げ、その上に戦車、自走砲、野砲を配置し、防衛線を下層、中層、上層の3層に渡って構築。下層6万、中上層2万ずつの布陣を形成。重金属雲を形成すれば、それは簡易ではあるが要塞へと変貌する

下層のスタンディングタートルは予め決められたミサイル及び砲撃箇所への誘導を常時行う囮戦術を取り続け、中上層からのミサイル、砲撃による支援を受け続け、レーザーヤークト終了までの間前線を支え続ける

───余談ではあるが、後年、この作戦の作戦地図が公開された。そこには最早余白と呼べる場所が無い程に綿密に砲撃地点が書き込まれており、毎分管理での動き方まで記入されていたと言う

 

ATが前線を支える中、戦術機の半数をレーザーヤークトへと投入。残り半数はBETAの誘導及びレーザーヤークト支援の為の中洲戦術を行う為の護衛部隊として編成された

横流しされた1万機のスコープドッグを自走式自爆ドローンとして投入。残り1万機は戦術機と共に中洲を死守する大連中洲戦術を早速取り入れ、前線及びレーザーヤークトの負担軽減を担う事となる

 

1994年 1月1日 PM17:48

南進BETA群内でのレーザーヤークトの完遂を戦術機部隊が報告。スリランカに待機していた国連軍爆撃機部隊がインド政府の要請を受け爆撃を開始

以後30時間に渡り空爆を加えた殲滅を開始し、カシュガルハイヴからのBETA群を完全排除する事に成功した

 

損害

戦術機 2811機

AT 3万4258機(スコープドッグ含)

機甲 257両(戦車157両 自走砲100門)

歩兵 18590名(推定)

 

人類側が明確な勝利を納めたこの作戦は"亜大陸のDデイ"としての通称がつけられたが、ボパールハイヴへの決定打が見込める事は無く、結果として1年の延命に繋がるだけであった

しかしながらこの1年によって、本来であれば泥沼の様相を呈する大連防衛線の再構築が可能となり、人類の寿命を大幅に伸ばす結果となり得た




愛も憎悪も絶望も 奴等から見ればただの餌
抗う事すら許されず 人が進むは破滅の道か
否 断じて否である
人類を無礼るな化生共 例えこの身が果てようと 膝を折る事は決して無い
運河を挟んだ対岸に 鬨の声が響き渡る
人類の生まれた地に 貴様らBETAの生きる地は無い

次回 マブラヴ〜鉄のララバイ〜

スエズ運河を血に染めて

人の業よ 精算の時だ
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