自らが監禁され、忌み嫌う独裁と何ら変わらない所業を聞かされてきた彼は、CIA特殊部隊によって救助された折に宣言したと言われています
無論、この言葉が出てきたのは救助されて暫く後、赤軍記念病院で治療中に呟かれた言葉ですが、この発言により、ソ連はゆっくりと崩壊していく事になりました
─── アラスカ 旧ソ連本部博物館より抜粋 ───
2003年 3月3日 10:00 アラスカ KGB本部
「は〜ぁ、上が警備厳重にしとけって言ってたけど、ウチが狙われる訳ねえだろ……なんもねえや」
門番を務める兵士に下された命令は、警戒を厳とし、不審物や攻撃に注意せよと言う命令であった
今日は朝から騒がしい。偉いさんの車が何台も入ってきては、本来なら素通りさせる所を全てチェックしろと言われたのである
火薬探知犬まで使って入念なチェックを行い、KGB本部には長蛇の列が出来る程であり、彼はその長蛇の列を捌き切り、ようやく一息ついたのだ
「お疲れ様でしたねぇ」
その長蛇の列を捌き切るのを見ていた老婆が、菓子を差し入れてくれた
カステラに挟まれた餡子と言う甘ったるいお菓子である。以前日本からやってきた給糧艦から提供され、その名前から一気に広まったお菓子である
名前はシベリア。今や再開発の進むシベリアに思いを馳せながらその菓子を頬張り、老婆が荷物を置き忘れている事など露知らず
苦めに出した紅茶と共に1口頬張った瞬間、彼はその甘さと苦味の暴力を堪能したまま、爆炎の中に消えた
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同日 同時刻 KGB本部会議室
全員が苛立ちを隠せなかった。突如として送られてきたメールには、隠しておきたいプライベートな内容と共に、明日この事について話す事があるので集まるように、と、送られてきたのだ
KGBの直接通信にて送られてきたその内容とその文言とねちねちと責め立てる文言、隠されていれどKGB局長の文言である事は誰しもが分かっていた
会議開始5分前、局長はやってきた。いつもなら人前では吸わないタバコに火を付けて、肺に満たしていく様を見ながら、全員が息を呑んだ
「……誰が、あの画像を送ってきたのです?」
全員が局長の言葉に息を吞み、全員が一瞬だけ呆ける。自分たち個人個人に送られてきたものと同様の物が送られてきたのだろう
青筋を浮かべてタバコの火を消し、コーヒーで飲み干すその姿を見ながら、1人が恐る恐る口を開く
「局長が送ったのでは、無いのですか?」
「私が送る訳が無いでしょう。そういう弱味はもっと効果的な場面で……まさか」
気付いた時にはもう遅い。窓の外から響く爆発音と、数多の発砲音。聞きなれた戦車の音と共に、ビルが包囲されていく
ソ連軍だけではありえない圧倒的な早さの包囲に舌を巻きながら、一部の異常な練度に目が行く
明らかに対人戦闘慣れしている連中、この大戦の最中でそんな余裕がある国なんて、一国しか存在しない
「CIAの犬どもが……‼戦術機を出せ‼奴等を皆殺しにしろ‼」
『う、動きません‼戦術機のシステム自体が起動できません‼ジョン・ドゥを現在起動中で……』
爆発音が響き、通話が途切れる。内線通話がぶつりと音を立てて切れ、ビル内の配線が爆発によって切れた事に気付くのに時間はかからなかった
全員が動けなかった。この場に居る全員が、最早どうしようも無いと言うことに気付いてしまったのだ
「……ケース‼ケース‼‼奴等を殺して…」
「悪いけど、それは出来ないわ」
ケースと呼ばれた局長の懐刀が拳銃を向け、全員に動かないように告げる。椅子に座り、リラックスするように、と
「ケース、何を言っている?まさか、お前が……?」
「馬鹿ね、貴方のあんな姿を撮れるやつなんて私くらいでしょ?」
窓の外に伸びるロープ。屋上からやってくる連中の顔に、見覚えは無い。局長になる前から自分を支えてくれていた女は、アメリカのスパイだった
愛した女の裏の顔を見た時、局長は強い衝撃と共に床に組み伏せられていた
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2003年 3月3日 15:00
KGB本部内の掃討が完了する。抵抗する人員は容赦なく射殺され、核シェルターも兼ねていた地下本部まで制圧される
CIAが地下本部への強行突入を行い、異常な速度で制圧。何故か情報には一切手を付けなかった事から、恐らくはケースと呼ばれたスパイが全て情報を入手していたと思われる
また、この時間に迎賓館から重信氏と護衛部隊が日本からの精鋭部隊とKGB内通者により救助され、内通者全員が日本への亡命を希望し、日本は重信氏と護衛部隊救助の功績から全員の亡命を受け入れた
……尚、この時の重信氏は地元住民によって祀り上げられており、この日は革命の為の決起集会を行っていた。迎賓館前にて地元有力者たちの後援を受けながら演説を行っていた
重信氏曰く「地元住民が不安に感じていたらしいから相談に乗ったりしていたらいつの間にか革命の為の演説をさせられていた。俺は一体何をしていたのだろうか」
当人が求められればそれを実現出来てしまう能力がある事から、非常に危うい存在としてマークされる事となるのは皮肉である
この事は後年発刊された重信氏の自伝に綴られており、何なら演説内容の全文が掲載されてしまった為にかなり弄られ、独裁者としての素質がありすぎるとして警戒される事となる
これを聞いた香月博士は腹を抱えて笑ったと言う
崩壊は止められない だとしても崩壊の仕方がある
せめてその崩壊は 緩やかであるべきだ
例えなんと言われようと 断頭台に上るその歩みに 淀みがあってはいけないのだ
せめてその命の価値が 緩やかな崩壊の糧となりますように
次回 マブラヴ~鉄のララバイ~
マシュハドハイヴ 攻略
せめてその崩壊が 未来の為になりますように