革命による安易な挿げ替えでは無く、崩壊からの改革に着手した重信氏は、ソ連崩壊後、ロシアへと移行していく際の立役者であり、ソ連、並びにロシア外部最高顧問としての責任を果たしたのです
─── アラスカ記念館 鈴木重信外部最高顧問より抜粋 ───
3月3日 07:00 アラスカ州 サルチャ 迎賓館前
『ここサルチャは、米国の善意によって提供された、ソ連難民居留地である。それまで資源採掘地でしか無かったアラスカはBETA大戦によって一変し、数十万と言うソ連難民によって開発され、アメリカに対して更なる資源の供給と共に、人類の為の共生を開始した
アメリカはこの資源供給に対し、賃金として莫大とも言える額をソ連政府に供出、ソ連政府はソレを受け取った。我々は同志であるのだから、我々難民の為に使う……我々は政府に対して、当たり前の支出をしてくれると期待していた
しかし、実際はどうだ?政府は当たり前の支出すら拒み、自分達の懐にしまい込み、それで終わりとした。同志である我々の事を全く考えて居なかったのだ
結果、我々は自らの力でここを開拓せざるを得なくなった。何年もかけて心血を注ぎ、やっと開拓したこの場所が我々の第2の故郷となった頃、政府は我が物顔でやってきて、利便性が高いと言うだけで接収した!
まだそれは良い!政府は我々の事を忘れていないと、我々にはそれだけの利用価値があると、政府に、同志達に示すことが出来たからだ!
だと言うのに政府は、我々を無視し続けた!同志である我々を見下し、迎賓館を作り、そこだけを防護して我々同志をソ連と言う場所から遠ざけた!
そして政府は、ESP能力者を貿易材料とし、鈴木重工と言う後ろ盾を手に更なる金と力を使って本国奪還を目論み、多大なる我等同志の犠牲と共にシベリアを手にした!
我々と言う本国からの同志を無視し、自らの功績の為だけに軍を使い、我々から更なる命を、金を、全てを奪い取りながらだ!
ここに至って私は、これ以上我々の事を蔑ろにする政府を存在させてはならぬと確信したのである!
それが、この革命の真の目的である。この革命によって、我々は難民の為の政府を樹立する!
諸君!自らの道を拓く為、我等難民の為の政治を手に入れる為に、どうか私に力を貸して欲しい!
そして私は、散っていた同志達の元に召されるであろう!!』
観衆の拍手や歓声を受け、手を挙げながら壇上を降りる。傍に控える地元有力者に声をかける。通訳を介しながら話しつつ、頭のおかしい事を
「これでは道化だよ……」
『立派な演説でした。以前何処かでされた事がおありですかな?同志が中で待っています、会議を開きましょう』
あれよあれよと乗せられて、迎賓館にはいつの間にやら不穏分子が集まりはじめていた
明らかに地元民では無い軍人、各地からやってきた反政府を掲げる不穏分子、元KGB、現役CIA……
何故かESP能力者の兵士達は止めるような事もせず、寧ろ重信を簡単に御輿に乗せた。それだけのカリスマがあると踏んだのか、それともKGBへの目眩しのつもりなのかはわからないが、重信にはESP能力が無いが故に分からない
そして、兵士に護衛されながら1人呟く
……何やってんだろ、俺……
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同日 10:00
KGB本部がソ連軍による蜂起を受け制圧される。同時刻に迎賓館のあるサルチャを帝国軍精鋭部隊が制圧
重信、護衛部隊、亡命希望のESP能力兵士と共に脱出を開始する
地元民と反ソ連政府兵によって多少の妨害があるものの、重信の説得により無血脱出を完遂
12:00
重信と護衛部隊、救出部隊がソ連軍から提供されたヘリによりアラスカより脱出
救出艦に搭乗し、アラスカ海域からの撤退を開始する
15:00
救出艦隊がアラスカ海域より完全撤退。ソ連軍やKGBとの交戦無く要人救出を完遂
重信や護衛部隊に目立った外傷や精神異常は無かった
3月4日 午後
重信と護衛部隊が海上救助機によって帰国。ソ連との密約による報道規制により報じられる事は無かった
表向きはアラスカで風邪をひき、肺炎になりかけていたために帰国出来なかった事となった
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「酷い目にあったなあ……」
病院での検疫を終え、久しぶりのコーヒーに舌鼓を打ちながら家族と会う。詩織だけは事の顛末を全て知っており、帰ってきた瞬間に泣かれたのは予想外であったものの、それでも無事を喜んでくれた事に、重信は泣きそうになった
アラスカ土産として子供たちにテトリスの入ったゲーム機をプレゼントし、詩織には無事の報告と共に熱い夜を交わした
久しぶりの会社、久しぶりの会長室の椅子に座り、息を吐く。我ながら仕事一辺倒な事に笑いつつ、鳴り響く電話から受話器を持ち上げる
「会長、その……ソ連からのお電話です。直通回線に切り替えます」
「歯切れが悪いな。繋いでくれ」
通知音と共に、通訳を介した挨拶が聞こえてくる。この声は聞き覚えがある、以前会ったソ連代表の声である
『久しぶり、そして通訳越しですまないね、重信くん。いや、次期指導者と呼んだ方が良いかな?』
「次期指導者?私はそんなつもりは……」
やけに馴れ馴れしい語り口、そして何か吹っ切れたような口調のソ連代表の声に、こちらとしてはまた冗談かと思ってしまう
確か今は鉛中毒で入院中だった筈だと考えながらも、重信は嫌な予感がして堪らなかった
『君は次期指導者さ。否応無くね。何故いきなりKGBが暴走したと思う?何故君の傍を固めていた兵士達は君の事を止めなかったと思う?君の周りに反政府分子が集まったのは?有力者のはずなのにKGBを怖がらなかったのは?』
「…………まさか」
『君は義理堅い。とてつもなく。そして私はソ連と言う枠組みが限界を迎えているのを知っている。ソ連と言う枠を崩壊させながら新たな枠を作れるような人材は、世界を見渡しても君くらいしか居ない。まあ、KGB局長である彼には悪いことをしたがね』
全てこの男の手のひらの上だった。ソ連もアメリカも日本も、大国を巻き込んで尚この男は、ロシアと言う民族を存続させようとしているのだ
KGB局長の野心を利用し、ソ連と言う枠組みを崩壊させながら、新たな国家の建設を狙っているのだ
「……私に外部最高顧問としての責任を果たせ、と」
『話が早いね!!遠からずソ連は崩壊する、させる。その時、君は外部最高顧問として粛清等をさせない為の軟着陸させる必要が出てくる。私と君は被害者であり旗印なんだから!!
君は勲章まで受け取り、革命を指導しかけた!!映像も、記録も、何もかもが残っている……それを廃棄するにはどうするか分かるよね?便利な時代になったものだ』
国家の崩壊と共に北朝鮮やウランバートルを返還し、旧ロシア領をなんとしてでも確保する
その時に鈴木重信と言う、国際的地位も権力も何もかもを持つ者を利用し、糾弾を避け、何としてでも軟着陸させる
無茶振りに歯噛みしながらも、自らの安直さに歯噛みする他無かった
Q.つまりどういう事だってばよ!?
A.代表「うーん、ソ連領取り戻しても支出増えるばっかやし、衛星国なんて金の無心しかしてこんし、そもそもアメリカのお情けで生きとるようなもんやしなあ……せや!ソ連崩壊させてロシア連邦として再生させるんや!
ついでに自分に権力集まるように被害者になったろ!!!
そうなるとお膳立てがいるな……丁度ええ所に外部最高顧問居るわ。コイツ使ったろ!!
コイツ使う為にわざと体調崩したりKGB局長の野心煽ったろ!!!ほれほれワシ弱っとるで〜
マジでワシの事監禁して草www重信くんも拘束するとええでって言ったらマジで信じてやがるww
分かって無いんやろうなあ、能力者ちゃん達はワイの側なんやで……
これでワイと重信くんは悲劇の主人公や。後はKGBが暴走する程に国家が不安定って事にしてゆっくり崩壊させてくやで〜」
Q.重信くんマジで上手く利用されただけ?
A.はい。そして外部最高顧問としてソ連崩壊以後滅茶苦茶手を貸さないといけなくなりました。理不尽ですね
Q.そう言えばBETAの鮮度による化学反応効率の違いってあるんですか?
A.あります。エネルギー切れで動けなくなった個体(無傷)が100%の効率だとすると、死後1〜2日で80%、3〜4日で40%、5〜7日で10%にまで効率が落ちます
この効率は耐用時間にも適用され、(マッスルシリンダー車の場合)100%個体使用時は稼働時間1000時間で交換目安となります
軍用ATには死後1〜2日ほどの物を使用し、民間用ATやマッスルシリンダー車等には3〜4日の物を、10%の物は小型機械等に使います
100%の物は主にインフラ系統に使われる傾向があり、船舶、列車、1部民間用車両にも使われています
尚、この事を知っているのは鈴木重工上層部及び開発部のみであり、重要機密事項となっています。後年出来る学校でも教える事はありません