皮肉な話ですが、日本は前線国だった時よりも、後方国になった後の方が忙しくなっていたのです
─── AT博物館 マシュハドハイヴ攻略より抜粋 ───
2003年 3月5日
KGB壊滅の混乱が前線にまで広がる。シベリア戦線では後ろ盾を失ったKGBの人間が私刑を受ける事態が多発し、私刑は士官にまで及びかける
ソ連政府は元KGB人員を全員解雇、再度ソ連軍人として雇い入れ、専用の諜報部隊を組織する事で事態の収拾を図った
この人事異動によって、世界中に散らばっていたKGB人員が一箇所に集められる事となる
3月16日
中東連合がマシュハドハイヴ攻略を国連に提案。ソ連の影響が少ない内に中東を完全奪取し、米国やソ連からの影響を受けないように地盤を固める為である
余談だが、石油資源の存在しない中東は現在どこからも見向きされて居らず、奪還地も非常に安定した運営が出来ている
4月20日
マシュハドハイヴ攻略の為に試作量産型凄乃皇、凄乃皇四型が到着。国連軍は以前の事態から部隊を出す事に難色を示すものの、戦力を提供
欧州連合も戦力供出に難を示すものの、以前救出された借りを返す為に戦力を供出したが、中東連合とは肩を並べずに独自で戦う事を決定した
4月22日 08:00
マシュハドハイヴ攻略作戦開始。2箇所からの荷電粒子砲により、マシュハドハイヴのモニュメントは完全に消失
噴煙は大規模噴火とも見間違う程に舞い上がり、軌道上からも確認出来る程であった
試作量産型凄乃皇は継続して荷電粒子砲を使用し、凄乃皇四型はバックアップへと回る
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「俺達はバックアップなんですか?」
『そうよ。試作量産型のデータがもっと欲しいから、凄乃皇四型とどれくらい差があるのか試したいんですって』
赤子をあやしながら答える香月博士を通信越しに見ながら、白銀武は何処か嬉しさを感じていた
世界はゆっくりと、だが確実に良い方向へと進んでいる。色々と困ったことは多少起こるものの、人類はもうすぐ地球を奪還し、BETAを排除して恒久的な平和を手に入れられる
「もうすぐ終わるんですね」
『何言ってるのよ。地球だけで終わる訳無いでしょ。今度は月を攻略しないと。軌道エレベーターのお陰で衛星軌道へのアクセスは凄く楽になったんだもの、後顧の憂いは断っておくべきよ』
香月博士の口から出た言葉に思わずハッとする。そうだ、地球を取り戻して終わりでは無いのだ
これからもマッスルシリンダーは必須である。寧ろこれからが本番だと言っていい。どう足掻いても人類は地球から飛び立つ時期が来ているのだから
恒久的な平和は長く続かない。地球の環境は激変してしまっているし、人類はエネルギー資源からは逃れられていないし、鉱石や水と言った物も直ぐに奪い合いになる
「出来ますかね、月の攻略」
『出来るわよ。それよりも先ずは人類を1つに纏めるところからだろうけど……ほら、そろそろ時間よ』
断言した香月博士の言葉に思わず、重信さんが居るからですか、なんて聞こうとして言葉を飲み込む
飲み込んだ言葉と共に通信を切り、頭を切り替える最早消化試合にすら近いハイヴの攻略は、今や人類の義務だ
このハイヴ攻略が終われば、人類は無人機や量産型凄乃皇を使った一斉ハイヴ攻略に乗り出すらしく、現在は後方人員まで掻き集めてATの操縦訓練を行っていると言う
荷電粒子砲のチャージが終わり、試作量産型と共に放つ。青い閃光と、一瞬の静寂。爆炎と共にモニュメントが消え去り、轟音と粉塵が周囲一帯を包み込む
歓声は上がらなかった。それよりも上がるのは、号令の通信である
凄乃皇四型はその処理能力の高さから、無線中継基地の役割も担い始めている。00ユニットである東雲が請け負ったのもあるが、各軍の通信を傍受し、裏切りの兆候があれば即座に対応する為である
『薙ぎ払え!これは聖戦である!!!』
『我等先祖の地を取り戻せ!!!BETA共を殺し尽くせ!!!』
勇猛果敢と言えば良いのか、死を恐れていないと言えば良いのか。毛色の違う勇猛さに少しばかりの恐れ畏敬を抱きながら、白銀は大きく溜息をついた
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4月22日 09:00
モニュメントの排除、並びに大量の粉塵によって光線級のレーザーが上空まで届かない為、欧州連合が空爆を開始
空爆によって地表BETAの大部分が排除された為、損害軽微のまま中東連合は横坑内へと突入する
欧州連合軍は空爆を終えた事で自分達の役割を終えたとして撤退を開始。来たる地球上ハイヴ掃討作戦の為に戦力を温存する
17:00
ハイヴ大広間を中東連合が制圧。名実共に人類は中東を奪還
大広間制圧の際、戦術機の一機が大広間下へと落下した
救出された戦術機は原油に塗れており、マシュハドハイヴ下に大規模な石油資源が発見される
中東連合は即座に全員に箝口令を出し、衛士及びボトムズを拘束。人類の新たな火種となる事を防ぐ為に、最低でも地球上ハイヴ掃討作戦後まではこの石油資源を隠すことを決定した
後年、この大広間を使用した石油プラントが作成され、イラク政府の観光名所の1つとなり、同時にイラクの生命線となる程に石油を生産する事となる
最早お前達に構っている暇は無い
人類はお前達を克服する 人類は宇宙へと旅立つ時が来た
地球も銀河も手に入れる為に 人類はその為の1歩を踏み出す
ありがとうBETA 二度とその汚い顔を見せてくれるな
次回 マブラヴ〜鉄のララバイ〜
地球上ハイヴ掃討作戦 1
肩を落とした鉄の背中が 何億と続いていく