人類の半数も、あらゆる文化も、この地球上の地表面積の3分の1までも、荒野に変わっていき、失われた
BETA。人類に敵対的な外宇宙生命体。対話も無く、ただ一方的に行う殺戮に、我々は抗った
抗い、抵抗し、停滞し……疲弊した
いつ死んでもおかしくない。いつ喰われてもおかしくない。いつまで続けていれば良いかも分からないこの戦いに、我々は疲弊し切っていた
それでも、我々は諦めなかった。天才達が頭を捻り、苦悩して産み出された兵器達によって、我々はオリジナルハイヴを破壊し、人類の勝利への大きな一手を打った
そして今、我々は人類勝利の為の、最後の攻勢に出ようとしている。総勢3億もの兵力……人類の5分の1と言える人数を徴用したこの一大決戦は、必ず後世にも語り継がれるであろう
人類勝利の決戦として!我々が成し遂げた功績は、未来永劫語り継がれ、この地球と言う惑星に刻み込まれるのだ!!!
諸君!生きて帰り、語り継ごう!!我々は勇敢に戦ったと!!子に、孫に、子孫に、これから紡がれる我等の英雄譚を、人類に語り継ぐのだ!!!
─── 国連軍総司令官による演説 全文 ───
2003年 6月1日
地球上ハイヴ掃討作戦 決行日
作戦は1週間の短期決戦で行われる。予備兵力まで全て出し切って行われるこの決戦は、人類の地球奪還の為の最終攻勢である
1日でBETA大戦1ヶ月分の戦費を消費すると言われるこの戦いは、全世界がそれほどまでに余裕が出来た事の表れである
この戦いには無人戦術機や無人ATが大量投入された。余剰分として作られていた戦術機やATにAIを搭載し、前線を少しでも楽にする為であり、戦闘用AIとして今後のシェアを狙った物であった
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「如月特務大尉、全員揃いました」
「ああ、了解した」
部隊が壊滅し、俺は強制帰国させられた。1人生き残って抜け殻となっていた俺に命じられたのは、大陸への派遣命令であった
地獄を知っているお前なら幾らでも使い潰せる。直属の上司からそんな事を言われた俺は、自分では分からなかったが、酷く笑っていたと言う
死に場所を求めている。だからお前は死ぬべきだ。部隊を壊滅させた自分にとって、奴等を殺し尽くし、奴等に殺されるのがお似合いだ
だが、何かがそれを許さない。断末魔を上げる事もせず、笑ってBETAを道連れにしていったアイツらを思い出し、自分もそうありたいと願い、実行しても、不具合でソレが阻まれる
俺は、死ぬことすら許されない
「大陸派遣軍特務大尉、如月だ。俺は重慶防衛戦の頃からこの大陸に派遣され続けてきた。地獄の重慶撤退戦も、光州作戦も、あらゆる戦闘を戦い抜いてきた。だからこそ言える。俺達ボトムズこそが作戦の要だ。戦術機でも、戦車でも、爆撃機でも無い。戦線を支え、BETAの頭を押さえ、他の連中が出来ない事全てを俺達がする。歩兵の支援も、戦車の支援も、戦術機の支援も。全て俺達にしか出来ない事だ。奴等の鼻っ柱をへし折ってやれ!!!」
集まった自分の部隊に、改めて演説をする。全員の士気は高く、最早演説をして士気を高める必要など無い
だがそれでも、俺は演説をせねばならなかった。自分の元に集められた
死なない訳じゃない。寧ろ死ぬ可能性の方が高い。何でも屋は何でもして死ぬのだ
歩兵を助けて食われ、戦術機を助けて食われ、戦車を助けて食われ、潰され、跳ね飛ばされ、そうやって死んでいく
だがそれでも、俺達はソレを誇りにして死んでいく。それこそが俺達の役割だと信じて死んでいく
そう思わなければ、死んで行った者達が報われない。そう思わなければ、俺達が死んで行く意味が無い
死んで行った奴等のドッグタグを握り締め、俺はただ死に場所を求めて戦い続けるのだ
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同日 衛星軌道上
《パイロット、心拍数が上昇しています。精神安定の為に深呼吸をお勧めします》
「分かれよBT、緊張しない訳が無いだろ」
《申し訳ありません。AIなので理解出来ません》
「分かった、分かったから少し黙っててくれ」
黙り込むBTと周囲を固める無人機達。
重信様曰く、総力戦故に君に託す。どんな事をしても良いが君とBTは必ず戻ってこい。そう言われてしまえば、二つ返事で受ける他無いのだ
我ながら心酔し切っていると思いながらも、この期待に応えられない自分では無いとも理解している
《パイロット、安心して下さい。ジェーン・ドゥには白銀武様の戦闘情報が蓄積されたデータが入っています。最悪の場合、我々は後方で構えているだけでも勝てます》
「……BT、それは本気で言っているのか?」
《パイロットは戦いたく無いのでしょう?であればそうするべきです》
「成程、冗談もすっかり上手くなったなBT。俺がいつ戦いたく無いなんて言った?」
《ではパイロット、我々が真っ先に降りて戦ってやりましょう。BETAに引導を渡すのは私達です》
神経接続コネクタに端子を接続し、機体の感覚を確かめる。悪くない、寧ろ絶好調だ
BTの発破のかけ方が余りにも人間臭かった事に苦笑しながら、戦闘前のカフェイン錠を噛み砕いた
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同日 国連軍横浜基地
「まっさかホントに根こそぎ持ってくとはねぇ」
空っぽになった横浜基地の格納庫で、彼女は1人呟いた。カツン、カツン、と足音を立て、すっかり誰も居なくなった横浜基地内を歩き周り、指令室へと足を伸ばす
普段ならオペレーターや司令が居るこの部屋にも誰も居ない。2ヶ月かけて全人員を大陸へと運び、後方人員として引っ張られたのだ
人類はここに来てようやく、本腰を入れて奴等を地球上から滅ぼす準備が出来たのだ
「長かったわねぇ……」
ぽつりと呟けば、ポケットの中の携帯端末が振動する。画面も見ずに応答すると、聞こえてきたのは酒で出来上がってしまった親友の声と、その対応をしてくれと泣き言を漏らす重信の声であった
ストレスに耐えきれなくなった親友の事を考え、その弱音に思わず笑ってしまいながら、すっかり閑散とした横浜基地を通り抜け、隣接する鈴木重工へと足を運ぶその足取りは、とても軽かった
最早誰もが勝利を疑わない
最早誰もが明日を疑わない
今まで散ってきた者達へ 最後の手向けとなるこの戦いを
必ず勝利する 人類はこの地球上からBETAを排除する
突き上げられた拳の先には BETAの居なくなった青空がある
次回 マブラヴ〜鉄のララバイ〜
地球上ハイヴ掃討作戦 2
人類の明日は 宇宙にこそある