マブラヴ〜鉄のララバイ〜   作:rezeaizen

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国連軍は作戦開始までに世界中の国連軍を総動員した。それは横浜基地も例外では無く、訓練生すら後方支援のために引っ張り出し、文字通り全基地のほぼ全人員、全物資が引き抜かれた
ソ連では予備役すらも呼び出して最前線に大量の部隊を配備し、政府能力までもをシベリアへと移した
日本を含む後方国すら大陸派遣軍を増員し、最後の戦いへと赴いた
そんな中で、残された者達は何を思うのか


根こそぎ

「……行っちゃったな」

 

最後の輸送機を見送り、すっかり空っぽになった格納庫を見る。今この横浜基地に居るのは、自分のような戦術機やATに乗れない者や、運悪く警備の任務に当たった者達だけだ

訓練教官。その肩書きが嫌だった訳では無い。元々物事を教えるのは好きだったのだから。だがこう言った時に、この肩書きは酷くいらない物のように思えて仕方無い

 

訓練の音で騒がしかったグラウンドも、いつ行っても必ず誰かが居る食堂も、格納庫で整備兵相手に雑談をしていたBTの声も、今は聞こえない

正門に居る警備兵は詰所の中に置いてあるテレビに齧り付いていて、今やすっかり葉桜となった桜の葉が風に揺れる音が聞こえてくる程に、横浜基地は静寂を保っていた

 

「ああ、行ってしまったか」

 

そう言いながら格納庫にやってきたのは、世界の鈴木グループの会長である鈴木重信氏だ

隣にある横浜プラントに寄るついでだったのだろうか、物々しい護衛に守られながら現れた彼は、酷く落胆していた

第二夫人(公然の秘密)である香月夕呼(私の親友)に会いに来たのかとも思ったがそうでは無いらしく、勝ち戦の為の見送りに来たかった、と言う理由らしい

 

「神宮寺教官は居残りですか」

 

彼は気さくに声をかけてくる。オリジナルハイヴ攻略の際もそうだったが、まるで彼は私を知っているかのように話しかけてくるのだ

いや、もしかしたら報告で知っているのかもしれない。何せ私が衛士だった頃は、出始めたATと共に戦場を駆け回っていたのだから

 

「はい。お恥ずかしながら、私のような不出来では皆の足を引っ張りますので」

 

「そう卑下するものではありません。貴女に鍛えられて助かった衛士は多いのですから」

 

雑談をしていれば、搬入口から大型トラックがやってくる。警備兵が品目を見ながらうひょー、なんて声を出し、嬉々として搬入許可を求めてきた

インカムから聞こえるその声を聴き、思わずこのプレゼントを持ってきたであろう男の方を見れば、彼は肩を竦めてふざけてみせた

 

『大量の酒です、酒!!合成じゃない本物!!日本酒、ブランデー、ビールにワインに色んな酒だ!!すげー!!』

 

「復興事業のお礼として毎年届くんだが、私はあまり飲まないからね。駄目にしてしまうのも勿体無いだろう?寄付させて貰えればと思ったんだが」

 

「……次々来るぞ。品目をしっかり数えて、冷蔵が必要な物は食堂の冷蔵室に運んでおけ」

 

『ヒャッホー!!通信入れときますね!!!帰ったら浴びる程本物の酒が飲めるぞー!!!!』

 

ここでくすねると言う選択肢が無い辺り、彼も残される程の人望があると言う事だろう

彼の反応に思わず苦笑いしつつ、重信氏を改めて見れば、良ければ隣まで来ないか、と告げてきた

仕事らしい仕事も無く、警備する物も無い。精々日誌に何もありませんでした、と書くくらいだ

警備任務の引継ぎを終え、私はその誘いに乗る事にした

 

─────────────────────

 

「そう言えば、この横浜プラントで生産している物を知らなかったね?」

 

「まあ、それは……帝国の国家機密ですから」

 

横浜プラント。BETAによる本土侵攻後に出来た鈴木重工のマッスルシリンダープラントだ

国連軍横浜基地よりも広く作られているそのプラントは今や国家機密の塊となり、中で作業している作業員すらその全貌を知らされていない

今でもこの横浜プラントでは新しい製品が作られていると言うのだが……

 

「では説明しようか。プラスチックモデルを使いながら案内しよう」

 

よくよく考えれば、私は凄い事をされているのでは無いか。重信氏が直々に解説しながら案内してくれる工場見学など、それこそ技術者垂涎物だろう

いや、もしかしたら大学生辺りがもっと見たがるかもしれない。目の前に出される月面輸送車のプラスチックモデルを見ながら、これ売り出したらまた売れるんだろうな、なんて考えしか浮かばないのだが

 

「従来の核電池は処分する際に土の中に埋めるんだが、その方法は土壌をとてつもなく汚染する。それこそ宇宙にでも投棄すれば良いんだが、それだとコストがかかる。そこで我が社は、月面輸送車にもマッスルシリンダーを使えば、従来の操作方法で変わらず運転する事が……」

 

プラスチックモデルを取り出して製品を語る。こう言った役回りは夕呼のハズでは、なんて内心考えながらも、彼のその弁舌には舌を巻く程だった

なるほど確かに分かりやすい。疑問を聞けばきちんと欲しい答えが帰ってきて、寧ろ新たな知見としてメモ帳に書き留めるのだ。万人が使うのだから万人の意見がある、として受け止める度量は、確かに持ち上げられても仕方無い

 

「っと、今作っているのは極秘を除いてこれくらいだね。さすがに極秘は後で俺が怒られちゃうから……」

 

「いえ、大丈夫です。面白い話をありがとうございます」

 

「余計な話に付き合わせちゃったね。そうだ、折角来てくれたんだし、会長室に来てくれるかい?」

 

この時、重信は頭の中からすっかり抜け落ちていた。彼女はとてつもなく酒癖が悪く、同時に、かなりのお酒好きだと言う事を

だからこそ彼女を連れて会長室に行き、酒を振舞った。最初こそ遠慮していた彼女も重信に丸め込まれてしまえば、ほろ酔い程度で止まる事は無かった

 

結果として、彼女はぐでんぐでんに酔っ払い、香月夕呼がやってくるまで絡み酒で重信氏にまとわりついていたのだ

重信氏曰く、悪気は無かった。との事で、後年出された自著伝において、重信に絡み酒した唯一の女として、名前は伏せられたものの紹介されたと言う




Q.鈴木重工はもう月の事を考えているの?

A.月面輸送車とかマッスルシリンダーで作れば安くて性能は確保されてるもんな!!!(安全性度外視)

Q.月面でATはどうやって戦うんですか?

A.宇宙用装備で上から撃ち下ろしまくります

Q.本当に手は出して無いんですか??まりもちゃんが独身で可哀想だと思わないんですか?

A.まりもちゃんなら良い人見つかるから……(震え声)
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