マブラヴ〜鉄のララバイ〜   作:rezeaizen

121 / 138
最早人類にとって、BETAは敵では無い。互いの手で首を絞め合い、お互いを蹴り落とし続けた結果が、今の地球の有り様であった
だからこそこの結束を続けなければならない。例え誰かが裏切ろうとも、最早首を絞め合う手は、握手の為の手にしなければならないのだ
例え隠した片手に、武器を握っていようとも

─── 国連軍司令官の言葉より抜粋 ───


地球上ハイヴ掃討作戦 3

2003年 6月2日 06:00

ロヴァニエミハイヴ(フィンランド)に対し、欧州連合及び亡命政権軍が総攻撃を開始する

残雪程度にしか雪が残っていなかった為正面からのぶつかり合いとなるも、圧倒的な飽和攻撃によってBETAを殲滅

戦闘開始から2時間の内に地表BETAを殲滅すると、内部突入に参加しなかったフィンランド亡命政権軍がソ連領への侵攻を開始

BETAの侵攻を防ぐ為の防衛線形成の為と理由付けされたものの、その目的は継続戦争によって失われた領地の奪還、及び崩壊後のソ連の弱体化を図る為に、欧州連合内で話し合われ、黙認される事が決定した侵攻であった

フィンランドはサンクトペテルブルク手前までの領土、並びに白海、バレンツ海へのアクセスを手中に収める結果となるものの、急激に増えた領土によって復興にかかる費用が爆増。後年、財政が悪化する事態に陥った

 

11:00

ロヴァニエミハイヴ攻略。サンクトペテルブルク手前まで侵攻を行っていたフィンランド亡命政権軍の前に、ヴェリスク、ミンスク、両ハイヴの援軍阻止の為に軌道上から大量の無人ATと無人戦術機が投下される

これはオルタネイティヴ4独自部隊であり、元々遊軍として派遣するつもりであった部隊をここに降ろしたのである

これはソ連側の要望と、欧州連合内の不穏な動きを察知した米国スパイからのタレコミによって行われた事であり、結果としてソ連は最低限の領土損失で済み、欧州連合の出鼻を挫く事となった

 

─────────────────────

『此方はオルタネイティヴ4特務部隊である。貴官らの援軍には感謝するが、これ以上の増援は不要である。よって、貴官らは即時撤退し、領土内に防衛線を敷いて頂きたい。尚、これは国連軍総司令も承認済みである。即時撤退されたし』

 

軌道上で退屈していた所だった。緊急通信と共に軌道艦隊が動き、自分達の降下場所が決まった

心を落ち着ける暇も無く再突入し、俺達はソ連領へと降下。網膜ディスプレイ越しに出てくる文言(もんごん)を読み上げながら、互いに銃を構える

長いように感じる沈黙。一筋の汗と、止まる息。ほんの数十秒なのに、頭の中ではどれくらいで殲滅出来るかを計算している

 

『……了解した。サンクトペテルブルク手前まで後退する。それで良いな?』

 

『問題無い。貴官らの援軍に感謝を』

 

通じてくれたらしい。止まっていた呼吸を再開し、冷や汗がドッと溢れてくる

2回目の戦争をする程の余裕は無かったのだろうか。それとも自領が増えたから問題無いと言うのか。ソ連に復讐出来たから良いと考えたのか。それともその全てか。考えばかりが頭を巡り、次の指示を出すのに時間がかかってしまう

 

《パイロット、見事な手際でした。もし戦闘になっていれば、10分で彼等は全滅していたでしょう》

 

「勘弁してくれ、BT……今は人同士なんかで争っている暇は無いんだ……」

 

《理解しています。争う事は後でいくらでも出来るのですから。ではパイロット、提案なのですが、防衛線の構築は如何しますか》

 

「欧州連合が攻めあげて来るだろうから、それまでの耐久だ。忙しくなるぞ」

 

《了解しました。ではBETAの援軍阻止を主目的とします》

 

網膜上に開かれた地図を見ながら、改めて優秀なAIな事に感嘆の息を漏らしつつ、これからの重圧に少しばかり辟易する他無かった

 

─────────────────────

同日 14:00

大東亜連合のスパイが欧州連合からソ連崩壊プランの詳細を入手

この情報は欧州連合側が大東亜に更なる領土を獲得させて更なるソ連崩壊後の弱体化を狙ってわざと流した物であったが、大東亜連合上層部はこの情報から旧カザフスタンを抱えるのは内乱の火種を抱えると判断

ウラリスクハイヴ攻略後はソ連への援軍程度に留め、今の内に軍事力を使って中国領を再開発する事へ力を入れる事が決定された

 

これは、今までの欧州連合のやり方から学んだ大東亜連合の判断であった

面の皮が厚い欧州に煮え湯を飲まされ続けた大東亜連合は、とるーぱーくんシリーズやATによって、後方国家のインフラ整備や完全機械化工業や完全機械化農業を成し遂げる程に成長しきっていた

大東亜連合は物理的に近い日本から質の良いマッスルシリンダーを大量に購入出来、更にはBETAの本土被害を回復し切った日本から溢れた土木業者を借りたりしてインフラ整備を急速に進め、今や欧州連合とは比較にならない程の国力を得たのだ

 

故に、彼等はこれ以上の領土を必要としなくなった。ソ連崩壊後に確実な弱体化が見られるのであれば、彼等にとって火種を抱える事はリスクでしか無い

欧州連合の思惑は尽くが外れ、自分達が作り上げていた世界秩序が塗り替えられていく現実に打ちひしがれる結果となる

 

また、米国はこの情報の横流しを把握しており、これ以上足を引っ張るのであれば復興支援を減らすと言う脅しをかけ、遂に欧州連合はその膝を折り、人類の為に全力を尽くす事しか出来なくなった




長く苦しい時を経て 世界に新しい秩序が作られていく
人類は一丸となり 世界は一つになっていく
新たな秩序の元 人々はようやく国境を捨てられるのか
それとも 新たな秩序の為に争うのか

次回 マブラヴ〜鉄のララバイ〜

地球上ハイヴ掃討作戦 4

人は 争わねば進化出来ないのか
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。