マブラヴ〜鉄のララバイ〜   作:rezeaizen

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1995年にはインド亜大陸が陥落し、1997年にはアラビア半島が完全に陥落。10年もの間アラビア半島を守っていた防衛軍はスエズ運河を渡って防衛線を築く事になりました
この間、鈴木重工は海外支部の建設、国連軍AT部隊結成、反発するアメリカへのロビー活動、スコープドッグ、スタンディングタートル、PR液精製装置の国際特許取得を経て、マッスルシリンダー以外の全てが海外で生産出来るようにまで漕ぎ着けました

オルタネイティヴ4招致の決定も響き、国連軍へと解放した基地に大量のスコープドッグが置いてあったのも偶然ではありません。この頃になると、大量生産が可能になったATの値段は、マッスルシリンダーを除けば戦術機の10分の1にまで低下していました

実の所、マッスルシリンダーはこの頃、国際特許も国内特許も取っていません。米国の某コーラと同じだった訳ですから、誰だってマッスルシリンダーを作って特許を取れた筈でした
ですが出来なかった。現代から見てもこの工程を経て作り上げるのは最早狂気と呼ばれている程の物ですから、当時の人はその発想自体が無かったんでしょうね

1996年12月、国連軍はアラビア半島へとある増援を送り出します。新たに結成された国連軍AT部隊と、鈴木重工より提供されたカスタムATのお披露目も兼ねていました

─── AT博物館 スエズ運河防衛線の頃より抜粋 ───

※お気に入り1100件突破ありがとうございます!!!!!


スエズ運河を血に染めて

1997年 1月

国連軍所属 超大型原子力空母ケストレル 同型艦 ケストレルⅡを含む空母打撃群がソマリアでの補給を終えスエズ運河へと出発

アラビア半島がこの頃陥落しはじめており、国連軍空母打撃群が到着する頃、スエズ運河は渡河の為の人員で溢れかえっていた

 

空母打撃群艦艇の非常用ボートまで使い、対岸へと移動させていく最中、BETA群が接近。空母打撃群は光線級の射程外にまで離れると同時に、スコープドッグ水上戦装備及びスタンディングタートルを次々と空母から発艦させる

総数800ものATが水上からBETAを攻撃する展開となった

 

以後、カスタムATはスエズ運河の守り人として運用される事となり、スエズ運河奪還までの間に投入されたATの数は120万機にまで及ぶ事となる

───余談ではあるが、欧州奪還作戦の折にスエズ運河の河底を掃除して空母が通れるようにしたり、戦後においては護岸工事や拡張工事を重機の代わりとして担い、ATは最後の1機まで丁寧に扱われ、現在ではスエズ運河の守り神として、動かなくなったATが運河を見守るように至る所に飾られている

 

─────────────────────

 

誰もが死んだ顔をしている。誰もが絶望している。空を飛んでいく戦術機の腕に必死にしがみついている男達は、コチラを見下ろして笑っている

恐らくは士官やその類だろう。自分達は安全に撤退出来るのがそんなにも嬉しいらしい

 

「クソッ、クソッ、クソッ!!!!」

 

何人かがヤケになって銃を咥えるも、引き金を引けずに地面を殴る。対岸まであんなにも短いのに、泳いで行こうとした連中は、1部を除いて溺れ死んだ

焼け石に水だと誰もが分かっている。だがもしかしたらと言う希望が、目の前で行き来している。このせいで誰も死ねないし、誰も諦めきれない

いつだったか極東の蜘蛛の糸と言う話を聞いたことがあるが、正にこのような物なのだろう

 

『あ、あー、諸君、聞こえているかね。私は空母ケストレル艦長、アンダーセンだ』

 

伝令兵がそんな無線を拾った。皆が顔を上げて辺りを見渡せば、少し遠くに空母打撃群の艦影が見える

皆の顔に生気が戻る。歓喜の声を上げる者、感極まって抱き合う者、泣き出す者。絶望を打ち払う希望が、目の前に存在している

 

『BETA共への足がかりを作る訳にもいかない為、ケストレルをスエズ運河に乗り上げる訳にはいかない。だが諸君らを見殺しにするつもりは無い。今、空母打撃群の非常用ボートをそちらへと送った。それを使ってどうか対岸へと、人類の生まれた地へと向かって欲しい』

 

非常用ボートが、緑色のATによって引かれてくる。大量のボートは往復回数も、1回で運べる人員の数も段違いになるだろう。皆の顔には安堵の表情が浮かんでおり、整列した歩兵が次々と乗り込んでいく様子は、さながらフランスから撤退する英国軍兵のようだ

何度かの往復の後、絶望を告げる報告が上がってくるまでは、誰もが列を守っていた

 

『BETA群接近!!!!』

 

殿を務めている戦術機からの情報を伝令兵が伝えた瞬間、全員がパニックになった。我先にと非常用ボートへと乗り込もうと列は乱れ、遠くに見えていた空母打撃群は光線級を警戒して離れ、希望を与えられた後の絶望によって、誰もが更なる絶望に打ちひしがれる

終わりだ。自分達はコレで終わるんだ。そんな事を考えている中、水中からゆっくりと、何かが浮かび上がってくる事に気づく。1つ、2つ……段々と増えていくその機影が全てATだと気付くのに、時間は必要無かった

 

『此方スタンディングタートル部隊。ようやく出番だな』

 

ワッ、と歓声が湧き上がる。あの場所に停泊していたのには理由があったのだ。自分達を見捨てた訳では無かった。空母打撃群からは砲撃音が響き、緑色のATが水平線から現れ、BETA群へとロケット弾の雨を降らせている

戦術機がATの邪魔をしないように陣取って36mmをばら撒き、ATの援護に回る異常事態が形成された

水上からの攻撃は光線級以外に抵抗する術は無く、またATの4m級の身体は地上に居る光線級も他のBETAによって視認が出来ない為、迎撃される心配も無い

 

これにより追撃に出されていたBETA群を撤退させたが、あくまで防衛線の再配置と撤退支援措置として最上なだけであり、人類防衛圏が狭くなった事に違いは無い。局地的な勝利を得ただけである

 

最後の一人が対岸へと移った瞬間、スエズ運河はATと戦術機によって完全封鎖され、アフリカ大陸へと移った者達からは、勝鬨にも似た声が上がった。運河は排除されたBETAの血液によって真っ赤に染まると同時に、それだけの戦果が上がった事を示す。以後このスエズ運河防衛線はアフリカ大陸への上陸を阻止する要所となり、エジプト、リビア、スーダンには各国の工廠が建設される事となる

 

 

同日、WHOは世界人口が大戦開始前の6割にまで減少した事を報告した




ATの活躍は 世界にほんの少しだけの余裕を与えた
昨日命を喪わなかった者 今日家族と抱き合う者 明日友と再会する者
誰もが楽観する AT(コレ)があれば勝てると
誰もが安堵する AT(コレ)があれば一矢報えると
そんな安寧を貪る為に 奴等(BETA)はやって来る
地獄が来る 使える物全てを吐き出して 明後日(未来)を知る男は全身全霊で立ち向かう

次回 マブラヴ〜鉄のララバイ〜

日本本土防衛

むせる事すら 許されぬ

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