マブラヴ〜鉄のララバイ〜   作:rezeaizen

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禁書庫のお話


外伝5

「これか。父上が残した最後の遺産は」

 

「はい。重信様は自分の死後、この禁書庫は純一様がどうするか決めろと」

 

父上の死後、紆余曲折ありながら、自分…鈴木純一は、鈴木重工の社長となった

父が集め、父の為に集まった優秀な社員達に必要なのは、軽い神輿でありながらも、その行く末を決める事の出来る神輿だった

その自覚はあった。故に自分は舵取りにだけ従事したつもりだった。多脚戦車の夢を叶えるまでは

あらゆる所に頭を下げ、父上が残し、自分が実現した多脚戦車は、他惑星において素晴らしい戦果を今日もあげている

そんな実績を重ねた今。自分は、父が残した最後の遺産を目にしようとしている

鈴木重工本社製図室。その中にある超大型金庫。通称禁書庫

核爆発にすら耐えられるその金庫が今自分の目の前にあり、その金庫を管理している初老の男は、その重い扉を開く為に生体認証を行っている

 

「後で純一様の認証をしましょう。それで私は……ようやくこの役目から解放されます」

 

どれだけの重圧であったのか、息子である自分には計り知れない。父上の事だから軽く考えていたのだろうが、この禁書庫の中身は世界中が欲しているのだ

 

「……お疲れ様。父上の無茶振りに付き合ってくれてありがとう」

 

故に自分には、管理者である彼にこう言う他無いだろう。彼は小さく笑い、酸素マスクを手渡してきた

内部は紙の劣化が進まないように低酸素状態で保たれているらしく、酸素マスクを着けて居ないと気絶すると言うのだ

 

「開きます」

 

禁書庫が開く。金庫内部を低酸素に保つ為の透明なアクリル板の先に見えるのは、膨大なまでの、重信が描いた設計図の山である

アクリル板の扉を開け、中へと入る。大量に積まれたソレらを見ながら、思わずごくりと喉を鳴らす

手袋を嵌め、手近な設計図を1枚手に取り、開く

 

「そちらはPR液のナパームジェリー化を行う為の精製装置の設計図です。もしそれが何処かの軍にでも渡れば、超安価で効果的なナパーム弾が作れます」

 

「……恐ろしい。確かにこれは世に出せないな」

 

何が恐ろしいかと言えば、この設計図通りに作れば、ほぼ完璧に作り上げられる事だろう

父上の設計図はその通りに作り上げ、細々としたメンテナンス用箇所を修正さえしてしまえば、完璧に出来上がり、想定通りに動くのが強みである

コレは父上の設計の強さが滲み出ており、工学系の設計図教科書には、目指すべき姿として掲載されている程だ

 

「コレは……」

 

「マッスルシリンダーを使用したドローン?と言う物です。4つの回転翼で飛行する物だそうで……曰く、これがあると戦争が泥沼化する、と」

 

どうやら管理者はこの禁書庫の中にある設計図の物ほぼ全てを把握しているらしい。恐らくだが、父上が概要だけ話していたのをしっかりと覚えているのだろう。恐ろしい記憶力だ

 

「奥に行く程古くなるんだな?」

 

「はい。初期は重信様自らが保管されておりましたので、私も把握しておりません」

 

綺麗に整頓されている設計図の間を抜け、奥へと向かう。ジョン・ドゥの設計図や、核ミサイル搭載可能な四足歩行兵器の間を抜け、1枚の設計図を開く

 

「…………」

 

「私も知らない頃の設計図ですね。概要の為のメモ用紙が挟んであると思います」

 

「ああ、ある。なんだ、これは……」

 

ジョン・ドゥの設計図よりも前。2足歩行兵器の駆動を核融合で行うと言う前提の元で描かれている機体

装甲材にはルナ・チタニウムが使われている前提、手持ち式の粒子加速器による、とある粒子の加速方法

父上は、未来を見ていたのだろうか

 

「これは……120mmマシンガン?……人間が携行可能な高威力レーザー銃の設計図……原子光線砲の設計図……臨界半透膜の生成装置設計図……人間の改造設備の設計図……」

 

「純一様。これ以上は止めろと、私の本能が訴えております。この先には……最奥には、見たら戻れない物があると。私はここでお暇します。この奥に進むのであれば、どうかお気を付けて」

 

管理者は踵を返し、金庫の出入口へと戻っていく。好奇心は猫をも殺すと言うのを、彼は知っているのだろう

最奥に見える、1枚の設計図。金庫の中だと言うのに、『ソレ』はダイヤル式のロック錠が付けられている

 

ごくりと喉を鳴らし、ダイヤル錠に触れる。8桁の番号には覚えが無いが、思いつく限りダイヤルを回す

父上の誕生日、母上の誕生日、結婚記念日、自分の誕生日……

全て違う。ならば何時だと考え、辺りを見回す。父上は最初にコレを書いた訳では無い

 

「…………」

 

ダイヤル錠を回す。父上が初めてATの設計図を書いた日を打ち込んでしまえば、錠はかちゃりと音を立てて外れる

心臓の音が五月蝿い。しんと静まり返った金庫の中、自分の心音だけが響くような錯覚と共に、身体は冷や汗が流れていく

父上が何を書き記していたのか。父上は、何を知っていたのか。好奇心と恐怖心が混ざりあい、今までの設計図とは違う、超巨大とも言える設計図を広げ、メモ用紙を読む

 

「神の、設計図…………」

 

曰く、この世にあってはいけない物。曰く、存在していてはならない物。曰く、作り上げてはならぬ物

有機物と無機物の融合。人が神となるための物

肉体と精神を切り離し、惑星1つを犠牲にして作り上げられるソレは……

 

「──────ッ!!!!」

 

すぐに設計図を元に戻し、ダイヤル錠をめちゃくちゃにして、足早に禁書庫の出入口へと向かう。アレは見てはいけなかった物だと自分を納得させ、ドローンの設計図を手に取って禁書庫を後にする

 

その後、鈴木重工からマッスルシリンダードローンが発表されるのに、時間はかからなかった




Q.純一が見つけたのって?

A.とある神様(賢者)の設計図です

Q.重信くんそんなもん書いてたの!?

A.神様が普通の神様って言いましたっけ?(すっとぼけ)

Q.本当にヤバいのは燃やせよ……

A.燃やしたらまた書かないといけないから……(使命感)

Q.禁書庫ヤバくない???

A.浅い所は既存技術で作れそうな物(時代遅れになっていく物)ばっかりですが、深い所は既存技術では絶対に不可能な物ばかりです
具体例としてワームホール生成装置の設計図があったりします
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