4月4日 東京 情報省取調室
「貴女が主犯では無いかと我々は疑っています、香月さん。貴女が主導して重信様の脳髄を盗んだのでは、と」
「はぁ?馬鹿言うんじゃないわよ。私が出来る訳無いでしょ」
「あの日、重信様の火葬前に2人きりになる事が出来たのは極小数です。そして貴女は、重信様が主導していた復活技術についての理解も深い。重信様の脳髄を持ち去り、何処かで重信様を復活させたのではありませんか?」
「はいはい。それが出来たら良かったわね。物証も無く詰めるのは簡単よ。アンタ達だって見てたでしょ?あの超がつく程の警備の中、1人10分しか無い短時間で、頭切開して頚椎の1部まで含めて取り出すなんて、誰だろうと不可能よ」
「元ゴッドイーター部隊の連中を使えば……」
「それだったら私には無理ね。連絡先を把握してるのはあの人を除けば学者連中の極1部しか知らないわ。私は部外者だから知らされても無い」
彼女は何かしらを知っていると全員が確信している。故にこそ、彼等は喪服姿の彼女を取調室へと連れてきた
眠る事が出来ていないのか、目の下の隈は濃く、泣き腫らした痕は隠しきれず、それでも人前で泣く事はしたくないと言わんばかりに、彼女はいつものような飄々とした態度を保っている
「そもそも、本当に主犯だったらここには居ないわ。国連辺りに保護してもらって、アンタ達が手出し出来ないようにしてる。……ねぇ、私が泣いて無いのがそんなに不満かしら?あの人の寵愛を受けていたのが、そんなにいけないこと?」
「いえ、そう言う訳では…………」
言葉に詰まる。聞き出そうにも自分達すら知らない事が多すぎる。入ってくる情報は噂ばかりで、信頼性は無いに等しい
曰く、アメリカが入手した。曰く、ロシアが力づくで奪い取った。曰く、五摂家が持っている。曰く、曰く、曰く…………
最早噂は噂を呼び、どの情報が正確なのかすら、誰にも分からない
ただ一つ確かなのは、鈴木重信の脳髄が何者かによって盗み出されたと言う事実だけだろう
「…………私だって、もし脳みそ持ってて復活させていいならしたいわよ。でもね、ソレをしたら私もあの人も、死ぬと言う事が永遠に叶わなくなるの。だから約束したのよ。絶対に復活はさせないって。その私が、あの人との……重信との約束を破ると思うの?」
「では一体誰なんです?葬儀場で戦闘があった訳でも無い、1人10分と言う短い時間で、しかもあの警備の中で、脳髄だけを盗み出せる人物は」
「私が聞きたいわよそんなの!!いい加減にして!!!アンタ達のそう言う所が大っ嫌いなの!!何でもかんでも私が知ってるみたいな視線が!!!!そんなんだからあの人以外信じたく無いのよ!!!!」
あの理路整然が服を着たと言われる香月夕呼が、自分達のような人間の前で初めて見せた、感情の吐露であった
本当にこの人は、鈴木重信を愛していたのだと理解出来てしまう感情の発露を見てしまえば、最早取調べなど出来る訳も無い
我々は早々に彼女を解放し、捜査は振り出しへと戻った
「女は全員役者って言いますけど、今はさすがに無茶でしたかね」
「だろうな。お前の嫁さんがいきなり死んだと思ったら脳みそが盗まれて、お前が真っ先に疑われるようなもんだ」
「…………考えたくも無い。まだ娘だって居るのに」
「俺らがしてるのはそう言う事だ。嫌な話だがな」
窓から見える喪服の後ろ姿を見送りながら、各国の諜報機関すら出し抜いた今回の事件について思考を巡らせる
誰が、どうやって、どんな理由で。もしあの頭脳が復活するのだとしたら、誰もが欲しがるのは事実だ
だが、大国も小国もそれは出来ていない。もっと言うなら、あの厳重な警備の中で出来る訳も無い
だとすれば、内部犯の可能性は?重信氏が自分で計画し、部下に実行させたとすれば……
「…………考え過ぎか」
1人ごちて踵を返す。ゆだっている頭を切り替える為のコーヒーを買う為、足は休憩室へと向かっていた
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アメリカ 大統領執務室
「何も分からないと?」
葉巻に火をつけようとしていた手を止め、報告書を捲る秘書を見つめる
最初から期待はしていなかったが、と言う前置きがつくものの、その報告は思考の外にあった
「はい、大統領。重信氏の脳髄は、恐らく4月3日未明までには無くなっていたと思われます」
「こちらのエージェントが侵入するまでに誰かが盗み出した、か。……ロシアの線は?」
「CIAが探りましたが、諜報機関に阻まれました。諜報機関は全員オルタネイティヴ3の忘れ形見で、スパイ全員が拘束され、我が国に無理矢理帰国させられました」
「怪しいな。殺さずに返したと言う点が。政府内に忍ばせておいた者は?」
「そこからの情報もありません。恐らくは中央に関わらないように飛ばされたかと」
怪しさ満点の行いである。徹底的に不殺、情報は全てこちらで持つと言わんばかりの所業。何かしらを知っていると言わんばかりの動き
問題はこれがブラフである可能性が高い事だ。もしこの怪しさがブラフであったら、米国は世界の情報戦から弾き出され、無能の集まりと言う烙印を押される事となる
「日本政府側は?」
「その線はありません。情報省がミズ香月を確保しましたが、すぐに解放しています。情報省も頭を抱えているのかと」
「……そうか」
大統領が葉巻に火をつけ、咥える。前任の大統領に話を聞こうにも、今彼は日本に居り、恐らく帰ってきても話してはくれないだろう
諦めたように葉巻をふかし、大統領は今日何度目かも分からぬため息をついていた
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ロシア 大統領執務室
「重信様の脳髄は手に入らず、か」
「CIA連中の頭も覗きましたが、それらしい情報は出ませんでした。元KGBの線も洗いましたが、特に出ていません」
至極残念そうに溜息をつく大統領を見ながら報告する銀髪赤眼の女性は、オルタネイティヴ3の忘れ形見……ロシアが誇る諜報機関の一員である
彼女達の忠誠は一応は国家に向いてはいるものの、重信と国家、どちらを取るかと言われれば、迷わず重信を選ぶ程に重い忠誠を掲げている
彼女達は何年もの間、重信の庇護下で人間らしい生活と言う物を味わってしまい、更には重信の事もよく理解してしまっていた。祖国奪還後に1部は帰国したものの、重信氏がロシアに入国する際には大統領や諜報機関から離れ、重信氏専属の護衛に着くほどである
「残念だ。我等が手に入れられれば、世界は重信様の元1つになるのに」
「お言葉ですが、重信様はそのような事を望んで居られないかと。あの御方は……ただ平穏を望まれておりました」
「だとしてもだ。あの方には世界を導いても尚有り余るカリスマと、人の想いに応える力がある。それを発揮してもらわねばならなかったんだ」
大統領自身に野心が無い訳では無い。だがもし彼が、鈴木重信が直々に自分達を導くと言ってくれるのなら、大統領は簡単にこの座を降り、彼を支える為に全力を賭すつもりだった。大統領が脳髄を盗むよう命令したのは、それが理由であった
───今でも鮮明に思い出せるサルチャでの日々。闘志を燃やし、革命を目指し、この人を支える事に全てを捧げようと考えていた日々
1ヶ月、私の人生の絶頂は正にあの1ヶ月だった。もう少しで革命が成せたあの日々は、いつまでもまぶたの裏に焼き付き、私の記憶の中で黄金色の輝きを放っている
だからこそ、あの人を嫌う為に、あの人に嫌われる為に、シベリア鉄道をどうにかしろなどと無茶苦茶を言ったのだ
なのにあの人は楽しかったと言った。その笑顔が眩しかった。あの頃を思い出してしまった。私は、再び彼に脳を焼かれてしまったのだ───
「…………重信様、何故我々よりも先に逝かれてしまったのか……」
遠くを見つめる大統領の瞳には 目下に広がる再興された街並すら色褪せて見えていた
Q.マジで重信くんの脳味噌どこ行ったの……?
A.何処でしょうか。マブラヴ世界の何処かにあるのは確かです
Q.ワームホール発生装置とかもう少し手前の方でも良くない?
A.このワームホール発生装置は『何処でも』ワームホールを発生させる事が可能な為奥にしまい込まれてます
Q.重信くんが亡くなってから何年くらいしてから息子が跡を継いだんですか?
A.大体10年くらいです。大学卒業後すぐに鈴木重工に入社し、多脚戦車プロジェクトをご乱心会議で披露。多脚戦車プロジェクトが完成後、その功績から鈴木重工社長へとなりました
次の話は…?
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ifもの
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脳味噌の行方