マブラヴ〜鉄のララバイ〜   作:rezeaizen

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予選も大詰め、果たして生き残るのはどの国家になるでしょうか。対人戦最強と謳われる米国代表か、正統派な戦いを続ける中国か、スエズの守り神と呼ばれたエジプトか、暗闇に紛れて闇討ちを続ける日本か
オッズは米国と日本を除いてほぼ2倍、皆様賭け金は遊戯の範囲に収めましょう

前口上はここまでとして皆様お待ちかね、バトリング、レディ……GO〜〜〜〜〜!!!!



外伝11

2025年 5月3日

旧横浜基地格納庫

 

「ねぇアンタ達、人間辞める覚悟はある?」

 

国家代表決定戦が終わり、これから特訓が始まると言った時、日本代表のメカニック兼アドバイザーの香月夕呼がそう告げた

誰もが耳を疑い、即座に頷く事は出来なかった。彼等の反応を見て、夕呼はため息をつき、同時に納得していた

 

「昔なら一も二もなくそれで奴等に勝てるなら、て言ってたんだけど……そうよね、もう昔とは違うものね。でもそれくらいの覚悟を持って貰うわよ。アンタ達に使って貰う物はそう言う代物なんだから」

 

夕呼の手振りによって照らし出される戦術機とAT。一見して分かるのは表面の装甲材が従来の鋼鉄で無い事と、どちらかと言えばかつてのジョン・ドゥに似たプロポーションであると言う点だろう

 

「バトリング用戦術機ジョン・ドゥ改とバトリング用ATラビドリードッグ改よ。装甲は特殊強化プラスチック、内部マッスルシリンダーは鈴木重工のSシリーズ(最高品質)、従来のハンドル方式からジョン・ドゥのような神経接続式へ変更

内部骨格構造を蛇みたいにしてるから腕も足も360度曲がるし、手や足裏には機体を壁面に吸着させる為にファンデルワールス吸着を利用出来るようにしてあるわ。要するに戦術機でもATでも壁に張り付いて動く事が出来るようになるって事

アンタ達はこれに乗って、勝ってもらう。勝てなかったら死んでもらうわ」

 

何処か暗い目をした香月夕呼の一言は、否応なくその覚悟を突き付ける

何処かお祭り気分であった代表選手達は、ここに来てようやく、自分達が生と死の狭間に居ることを理解した

 

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2024年 8月1日

それは、香月夕呼の息子が蛇を見ていた時に閃いた物だった

蛇の骨格。うねうねと左右に大きく動きながらも折れる事は無く、自由自在に身体を曲げる

これがATや戦術機で出来たら?出来たとしてどうなるんだ、そんな考えがありつつも、彼は母である香月夕呼に頼み、製図した全身骨格構造を見てもらう事にした

 

ことこういう事に至っては、香月夕呼は非常に厳しい。何せ自分が天才であるし、こう言った物の第一人者であり、これまた別畑の天才の隣にずっと居た為である

故に香月夕呼は聞いた。コンセプトは何かと。彼は何処か自信ありげに、まるで亡き重信を思わせるように胸を張って答えた

 

『無音機動の出来る戦術機やATは、隠密作戦で非常に使える筈だ』

 

胸の張り方、面白ささえあれば何でもしようとする考え方、ほぼ満点に近い全身骨格構造を見せられた香月夕呼は、かつて自分が面白がって近付いた男の事を思い出していた

 

2025年 4月10日

重信の月面バトリング開催の知らせと共に、手や足裏にファンデルワールス吸着を使用し、香月夕呼の息子が設計した全身骨格を使用した新しい戦術機とATの開発が始まる

 

4月20日

ジョン・ドゥ及びラビドリードッグを素体としたバトリング用機体、ジョン・ドゥ改、ラビドリードッグ改が完成する

帝国斯衛軍AT戦術機混合1個中隊対ジョン・ドゥ改1機(枢木玄武)、ラビドリードッグ改1機(白銀武)の模擬戦において、帝国斯衛軍戦術機1個中隊が3分で壊滅すると言う戦果を叩き出す

相対した斯衛の衛士曰く、駆動音無く、レーダーに映らず、本来なら出てこないような場所から現れ、最早人型では不可能な動きをする2機に対し翻弄されたと言う

この戦果を受け、正式に大会用機体としてエントリー。運営からの許可と共に、少数生産を開始する

 

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10月1日(運命の日)

 

「各員油断はするな。我々は必ず勝ち残り、かの御方の脳髄を持ち帰る。その為にはここで1機たりとも堕ちる事を許さん。堕とされた者はその場で腹を切るつもりで蹂躙しろ」

 

隊長である男の声と共に、1機、また1機と散開していく。さながら忍者のように影に溶けていく姿を見ながら、S席の観客は固唾を飲んでその姿を見つめていた

少しでも目を離せば見失ってしまいそうな、アメリカが派手にやっているのと対照的な、静かに、音すら無いその動きは、世界中のマニア達を歓喜させていた

 

『おーっと!!どう言う事だ!?!?アメリカと相対しているロシア連合だけでなく、アジア方面も大量に削られているぞ!!!削っているのは……日本!!!何処だ???いやマジで見えねえぞ!!!』

 

MCが混乱するのも無理は無い。何せ日本代表は徹底的に隠れ、同化し、闇から闇へと葬っているのだ

音もなく忍び寄り、特注のサイレンサーペイントライフルで機関部を撃ち抜いているのだ

つまり、相対しているはずの敵ですら、自分がどのようにしてやられたかを理解するには、機関部破損の報告を受けてからになる

興業的に見れば最悪の行いであるが、コレは最早命の散らない戦争と言っても過言では無いのだ。であれば、このような戦術が取られてもおかしくは無い

 

『なんだなんだ!!!意味が分からない!!!隠れているはずなのに隠れられない!!!ビルを背にしているのに頭から撃たれる!!!散開しても1機ずつ狩られていく!!!これが日本か!!!興業としては最低最悪だぜ!!!』

 

それでも何処か楽しそうにMCは(さえず)る。口では貶しながらも、今まで無かった戦法は、興業として最高だからだ

そして、そんな彼等の活躍によってチームの数は次々と減っていき、結果として残ったのは、日本、アメリカ、中国、ロシア、エジプト、フィンランド、メキシコ、イギリスの8ヶ国であった




Q.これ日本ズルじゃない???

A.運営もOKした機体なのでズルでは無いです。寧ろ改良しない方が悪い

Q.これ日本一強では?

A.正面戦闘ではアメリカには勝てないので……

Q.ところで今あのクソッタレ脳髄は?

A.詩織さんの膝の上でお説教を受けています。ざまあ無いぜ!!!!
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