マブラヴ〜鉄のララバイ〜   作:rezeaizen

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さて皆様、全世界代表バトリング大会、如何でしたでしょうか
応援していた者たちが蹂躙された、思った以上に善戦した、様々な思いも涙もあるでしょう
ですがそれも含めて、次の大会…あるかどうかは分かりませんが…に期待しましょう
4年に1度でも、5年に1度でも、いつでも行える下地はあるのですから

それでは皆様、ラストバトリング、レディ……GO〜〜〜〜〜!!!!


外伝14

10月3日 試合前

 

「布石は整ったわ。皆して真正面から戦うか、奇襲かとかしか考えて無い。だからこそこのトラップがよーく効く……良いわね、あんた達。勝って終わるわよ」

 

香月夕呼はここまでを全て布石としていた。運営にも何度も問い合わせ、大会のルールを穴が開くほど読み通した

そして見つけた、トラップに関する条項。1チーム1試合、各機3個ずつの持ち込みが可能とされている物

熱感知可能なワイヤートラップのみを良しとしており、クレイモアのような物を想定されていると思われる

埋設型地雷は許可されておらず、運営側もさすがにこれを使っては千日手になるとして禁止したのだろう

 

そして、案の定皆使わなかった。熱感知可能と言う文面が引っ掛かったのか、それとも戦術機には効果が薄いと感じたからか

どちらでも良かった。準決勝でもトラップと言う物は使われず、そして誰もその事に気づかないのが、ちょうど良かった

 

「勝つ為なら何でもする……好きですよ、そう言うの」

 

代表の1人がそう言えば、全員が喉奥で笑う。勝つ為ならどんなルールでも使う。不備があればその不備を使ってでも勝つ。その意気込みは何処から来るのかなど、どうでも良かった

香月夕呼は不敵に笑い、代表全員の背中を強く引っ叩く

 

「さあ行ってきなさい。奴等に日本の戦い方を刻み込んで来るのよ」

 

─────────────────────

『足をやられた!!!!飛ぶしかねぇ!!!!』

 

『A4ダメだ!!飛ぶな!!!』

 

ワイヤートラップが戦術機の足をべっとりとペンキで濡らし、戦術機の脚はシステムによって強制ダウンさせられる

ただの重りとなった脚を戦術機が取り外せる訳も無く、A4は不用意にも飛んだ

それが狙いと知りながら

 

『なっ─────』

 

AIが反応するよりも前に、カメラアイが潰された。ワイヤートラップは作動した際に自チームへと信号を送っており、足をやられた戦術機を炙り出す

近くに居るラビドリー改かジョン・ドゥが即座にビル上へと移動。カメラアイが認識する前に、視覚を奪う

 

『ダメだ!!!見えない!!!クソ、助けてくれ!!!』

 

『落ち着けA4!!!死にはしない、暴れるな!!!余計に……』

 

突然、A4の動きが止まる。通信も途絶し、撃墜された事に気付くのに時間はいらなかった

ワイヤートラップに気付いた米軍代表の脚は止まってしまった。熱感知に気付くのにもあまり時間はいらなかったが、その間にA1は劣勢となっていた

 

『おい!!!誰か来てくれ!!!2対1はキツイぞ!!!』

 

両腕破損。サブアーム展開。脚部稼働負荷80パーセント以上、推進剤残14パーセント

アラートがアラートを重ね、戦術機の足元やビル壁面をちょこまかと動き回るATの弾幕にすら身体が揺さぶられる

先程から彼は何度嘔吐しそうになった分からない。否、もしかしたら嘔吐しているのに気付かないだけなのかもしれなかった

 

『A1こちらA2。A4がやられた。ワイヤートラップだ、何ヶ所も設置されてる。熱感知で先程から警戒しているが、そちらの応援には……』

 

『馬鹿かお前ら!!!(A1)がこうしてる間にも……!!!』

 

コクピットにペイント弾が当たる音と同時に、システムがダウンする。FUCK!!!!!なんて怒号と共に、観覧用モニターが起動する

動きを止めたのが悪手だっただろうか。否、接敵した時点でこちらの動きは読まれていたのだろう

日本は最初からこのような罠を考えていたのだ。熱感知でバレるようなシンプルな罠を。ルールにも則ったそれを最後の最後に使うと言うセオリーから掛け離れた作戦

 

「…………クソ、クソ……!!!」

 

悔しかった。ただただ、それだけが頭にあった

 

─────────────────────

 

『甲1、乙1、残弾は如何程か』

 

小休止のように全員が息を潜めていた。息を整え、全員が残弾を確認する

奇襲を主とする日本が出来るこの小休止は、戦術的優位を生み出していた

 

『こちら甲1、残弾0です。やっぱり奇襲じゃないとこちらが先に弾切れを起こします』

 

『こちら乙1、こちらも残弾0です。まさかあんな風に避けるなん』

 

残弾確認と共に通信を行っていた乙1と甲1の通信が切れる。何発かの被弾音と共に切れたのを確認し、全員が一斉に臨戦態勢を取る

 

『乙1!!!どうした!!!甲1!!!馬鹿な!!我々を見つけたのか!?』

 

ルールの穴を突くのは日本だけでは無かった。アメリカはAI補助を最大限活用しはじめた

最早AIが主軸となっているその動きは、パイロットが気絶するギリギリの動きである

 

「白兵戦に移行!!!繰り返す、白兵戦に移行!!!」

 

『負ける訳には行かねえんだよ……!!!』

 

両者の真正面戦闘は始まった。AIを主軸とした米国代表は弾幕を紙一重で避け、正確無比な射撃は、壁に張り付いた機体を叩き落とす

対する日本代表はAIの予測すら不可能な動きを繰り返し、自らの三半規管をぶち壊しながら戦闘を続けた

 

会場は、大盛り上がりであった

 

『最後の最後!!!トラップで仕留めに行った日本代表は突如動きの変わった米国代表に押され始めたが……なんとなんと!!!米国代表のパイロット達は次々気絶!!!当たり前だ、あんな動き1分も続けりゃ死んじまうぜ!!!さあどっちだ!!!どっちが賞品を手に入れるのか!?今!!!その一撃が……!!!!』

 

─────────────────────

10月4日 17:13 月面バトリング会場 医務室

 

目を覚ます。酷い頭痛と真っ赤に染まった視界、手足の震えに固定された首

何とか首を動かそうとして、全身の痛みで呻き声を上げる

 

「よう、目が覚めたか」

 

日本語が聞こえた。どうやら目覚めるのを待っていたらしい。目だけ動かしてそちらを見れば、恐らくは検査終わりのボトムズがそこに居た

 

『……負けたのか、俺達は』

 

「馬鹿言え。引き分けだよ」

 

最後に見た光景をゆっくりと思い出す。ATをブレードで打ち払い、相対した戦術機に掴みかかった所で、記憶は途切れている

 

「お前が掴みかかってサブアームでの撃ち合いさ。んで両者弾切れ、お前は気絶、日本側はコクピットブロックに被弾、賞品の一存で米国と日本、両国の国有物として決定した」

 

ボトムズは立ち上がり、大きく伸びをする。首筋のコネクタ痕が痣になっているのが、先程の戦闘を物語る

 

『……悔しいな。もっとルールを読み込んでおくべきだった』

 

「悔しいのはこっちもだよ。わざわざ新規設計までした機体相手にあんなにも粘りやがって」

 

出ていく背中を見ながら小さく笑い、身体の痛みに咳き込み、更に生じる痛みに身悶えする

そんな光景を見て笑う事もせず、ボトムズは背を向けて去っていく

 

「良い戦いだった。悔しいがな」

 

『ああ、良い戦いだった。学ぶ事も多く、知った事も多かった……バトリングには来ないのか?逆黒船、と言う事で』

 

「今それを運営が考えてるんだってよ。ほんと、商魂逞しいぜ……あばよ兄弟。次はバトリングで会おう」

 

ボトムズの男が去っていく。見慣れない天井を見上げたまま、ゆっくりと息を吸う

身体は痛いし国家の望みも叶えられなかった。だと言うのに、気持ちはすこぶる晴れ渡っていた




結果として 全てはあるべき場所に落ち着いた
最初から仕組んでいたのか それとも偶然か
それが分かるのは神か悪魔か あの男か
浮かぶ脳髄は語らない ただそこに浮かんでいる

次回 マブラヴ〜鉄のララバイ〜

外伝15

この脳髄は 何を何処まで知っているのか
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