マブラヴ〜鉄のララバイ〜   作:rezeaizen

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私には歳の離れた兄が居るらしい


外伝15

私の思い出は、船に揺られている思い出だ

大勢の人達と一緒に北海道へ向かう船に揺られており、私達家族は一等客室と呼ばれる所で過ごしていた記憶が朧気に残っている

他の人達は横になって眠ることすら出来ない中、私達家族は悠々と過ごしていた記憶がある

北海道に着いた後も護衛の人が張り付き、我が家となる一軒家に到着するまでは、厳戒態勢だったらしい

 

私達家族はそうして北海道へ避難してきた、いわゆる避難民と言われる連中の1人だった

父は近くにある工場で働き、母は幼い私を小学校と学童に預け、パートへと入った

当たり前だが、この頃はとにかく物価が上がっていた。需要と供給のバランスが滅茶苦茶になっていたのだ

学童でも避難民の子供と地元の子供でかなりの隔たりがあった事を今でも思い出せる

 

そうこうしている内に、横浜ハイヴが解放され、撃つ必要も無いはずのG弾は横浜に撃ち込まれ、それによって米国は内戦に移り……目まぐるしく世界は動き、それでも日本は財閥や鈴木重工のお陰で、世界で唯一のハイヴ内包先進国としての体面を保ち続けた

 

私が小学校から中学に上がる頃には、北海道は鈴木重工のお膝元になっていた

正確には日本全体がそうだった。鈴木重工の農業用機械やらPR液やらは日本の農業を再び機械式農業へと戻していたし、開墾用の重機すら国と鈴木重工の補助金を受ければほぼ無料で借りられたと言うのだから、力の入れ具合が分かるだろう

 

大きくなるにつれ、私は兄の事が気になった。歳の離れた兄は東京でずっと働いていると言うのだが、詳しく聞こうとすると両親は口を濁すのだ

まあ、今考えればそれも当たり前だろう。何せあの鈴木重信だなんて思いもよらなかったのだ

 

だから私は二十歳になると同時に聞いたのだ。いい加減その兄の事を教えてくれ、と。農業系の大学に入ってそれなりの成績を残していた私を見て、両親は諦めたように告げた

 

鈴木重信。鈴木重工の生みの親であり、鈴木グループの会長であり、鈴木重工の社長だ

いやいやさすがに有り得ないって。うっそだ〜、なんて言ったのは許して欲しい。誰だってドラマのような内容を聞いたらそうなるだろう

取り出されたのは戸籍謄本。本当にそうだった。私の兄はあの鈴木重信だった

血の気が引くと共に、何故隠していたのかを問えば、幼い私に話せば、家族ごと人質に取られかねないからと言うからだった

 

確かに私が小さい頃にこの事を教えられてしまえば、私達家族は物凄い事になる。救世主とすら呼ばれる鈴木重信の家族、誘拐でもすれば色々な事を可能とする切り札だ

だからこそ両親はバレないように働いていたのだ。毎年振り込まれる何千万と言う金を隠し続けて

 

その事実に気付いて、私は恥ずかしくなった。兄が自分の人生全てを人類の為に捧げてきたと言うのに、私と言えば両親に駄々を捏ねたり、大学にも自宅から通っているのだから

それでも、私は会ってみたくなった。一度も会った事も無いとは言え、兄は兄なのだ。両親にその事を言ってしまえば、大きく溜息を吐いて、携帯を取り出した

後で知ったが、この携帯は兄直通の回線を持つ特殊な携帯らしい。直接会った兄曰く、普通の回線だと傍受されるから渡したらしい

二、三回のコールの後、テレビでよく聞く兄の声が携帯に響いた

 

そして、案外にも早く会う時期は決まった。1ヶ月後、東京の帝国ホテルで会える事になったのだ

スーツで行くかあ、なんて考えは早々に打ち消された。翌日には兄の手によって我が家には品の良い紳士淑女が何人もやってきて、オーダーメイドのドレスや服の為の採寸をされ、今まで迷惑掛けてきたからと言わんばかりに私と両親のタンスは、次々とオーダーメイド品や高級品に置き換わり、家具すらも高級品へと置き換わって行った

 

そして、その日はやってきた。私と両親は兄に会い、帝国ホテルで食事会をした

そう、正に食事会だった。兄は詩織さんだけでなく息子と娘……私にとっては甥と姪に当たる子供達を連れていたのだ

血の繋がりはあれど、私と兄は違う。そう言った衝撃を受けているのを、両親はしっかりと見ていた

兄は私達を自宅にまで招いたものの、私も両親もそれを断固拒否した。窓からちらっと見えたが、帝国ホテルの周辺はそれはそれは厳重警戒が敷かれていたからだ

 

兄は誘いを断られた事にがっくりと肩を落としていたものの、詩織さんに慰められていた。両親が会わない方が良いと言っていた理由が、よく分かった気がした

 

帝国ホテルのスイートで一泊した私達は、兄の用意したファーストクラスで北海道へと戻った。正に夢のような、否、夢であって欲しかった二日間であったが、生きている兄と会うのは、これが最後だった

 

兄が亡くなったと言う訃報は、葬儀の連絡と共にやってきた。元重役と言う方から報告され、私達は親族として通夜と葬儀に参列した

こうして、私と兄の関わりは終わった……と思っていた。そう、思っていたのだ

 

あの招待状が届くまでは

 

兄が復活したと言う話と共に送り付けられた月面旅行チケット。月面での最高級ホテルまで込みのソレが送られてきた時、私は立ち眩みを起こしていた。当たり前だ

結局送っていた抽選で当たった、なんて家族に嘘をつくハメになったものの、一生に一度の体験は、それはそれは良い経験になった

 

生きていると言っていいのか分からないものの、兄はまだこの世に未練があったと言う事実だけが、私達を慰めてくれていた




Q.米軍機ってどんな動きしてたの?

A.マトリックスのエージェントが弾丸避けるような動作です。それを戦術機でやりました。気絶だけで済んで凄いですよね
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