この単語を聞くだけで、多くの日本人は顔を顰めます。現在でも各地にて講演されている内容を聞かれた方は多いのではないでしょうか
日本は海洋国家です。1度侵攻されれば逃げ場などありません。そしてこの時、日本は初めてBETAの侵攻を受けました
重慶から溢れたBETA群は東進を開始。最早鉄壁となった大連を避け、朝鮮半島を渡って日本海を渡ります
……そして、日本本土へと上陸しました。侵攻速度の速いBETA相手に対して可能な事は初動をどうにかして抑える事。この時、鈴木重工は初の緊急事態を宣言。ラジオにて緊急事態信号を発すると、全国の民生用ATのリミッターが解除され、日本国内に存在する民生用ATがスコープドッグとして息を吹き返しました
総勢300万機にも及ぶスコープドッグが日本国土内に現れ、それまで民間人だった者達が戦う、国家総力戦へと移行したのです
─── AT博物館 鈴木重工の功罪より抜粋 ───
1998年 7月5日
長崎県、熊本県、両県の海岸再開発工事中に、第二次世界大戦の際の不発弾が広範囲に渡って大量に発見される
工事発注元である鈴木重工は即座に不発弾処理と周辺地域の調査の為に行政へと掛け合い、工事関係者以外全員の避難を呼びかけた
推定分布区域が余りにも多い事、BETA侵攻の際の避難手順の確認、超大型台風の接近を加味し、行政側は鈴木重工全面協力の元、民間人及び大陸避難民の一斉移動を開始した
この際、民間からの協力者として民生用ATを持っている者、ATを動かせる者を避難民や民間人の区別無く募集しており、その数は20万人にも登った
1998年 7月6日
超大型台風が直撃した為作業は中止される。この際、帝国軍九州方面軍にも協力を仰いでおり、何故かフル武装のATや戦術機が大量にやってくる
1998年 7月7日
長崎県にBETA上陸。『偶然にも』海岸に集められていた不発弾及び対戦車地雷によって出鼻を挫く事が出来、戦術機、ATによって殲滅された。規模は師団規模と思われ、この時民生用ATに対して緊急事態が宣言され、以後リミッターが解除された
1998年 7月8日
引き続き超大型台風が直撃しており、BETAの回収作業のみが行われる。九州方面軍の機甲師団が熊本県仮設司令部へと集結する
1998年 7月9日
山陰地方及び九州中部へとBETAが上陸。機甲師団及び戦術機が対応に当たるも、上陸数の多さに機甲師団の弾薬が欠乏する
AT及び戦術機による遅滞戦術へと移行するもかなりの速度で進撃がはじまり、早々に撤退を強いられる事となる
この時、民生用ATに撤退用の地雷を埋めさせていた事を多数の証言から裏付けを取った
1998年 7月10日
BETAの進軍速度が想定以上に早く、広島県まで一気に押し込まれる。無人ATの特攻や民生用ATの徴発及び民間人のATパイロット任命が現場にて行われ、総力戦へと移行する
四国へと繋がる巨大橋群がPR液を満載したタンクローリー車の爆破テロにあい崩壊。避難民の多くがマッスルシリンダー車に搭乗しており、連鎖爆発によって巨大橋群が完全に崩壊した
被害者の総数は現在も完全な数は分かっておらず、推定1万人以上、と言われている
しかしながらこのテロによって四国はBETAの難を逃れる事となり、四国からの援護によって姫路の帝都防衛線を数日は持たせる事となる
1998年 7月12日
BETA及び大量の戦術機、AT、機甲科の撤退が重なり、姫路の第一次帝都防衛線は混乱を極める
大量の民生用ATを自動操縦にて特攻させて先陣の突撃級を下から焼き払う自爆特攻が多用され、この日だけで数万機のATが消費された
九州方面軍に台湾にて補給及び整備を行っていた国連軍空母ケストレル及びケストレルⅡが独断で水上より多数のATと物資を輸送する。両艦共に光線級のレーザー照射を受け、最後の1機を出撃させた後轟沈。ケストレルの艦長、ニコラス・A・アンダーセンを含めた多数の乗組員が死亡、脱出した乗組員は米軍によって回収される
この行いに痛く感銘を受けた帝国軍は、後に国連軍に超大型原子力空母アドミラル・アンダーセン及びラーズグリーズを無償納入した。彼の最後の言葉である「負け続けの私だが、今度は私の勝ちだ」は、両艦の艦長席の後ろに飾られている
1998年7月14日
第一次帝都防衛線が瓦解、ATプラントから大量の無人ATが排出され、帝国軍の撤退時間を数時間稼いだと言われるが、真偽は不明である
1998年7月15日
BETAが神戸へと到達する。この頃になると民生用AT及びマッスルシリンダー車の徴発が始まり、地雷や特攻兵器としての運用がされ始め、神戸が火の海と化し、さながら地獄の様相を呈する
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「良いな。BETA共が来たら、このスイッチを3回叩くんだ」
戦友がバリケードのように並べられた車を指差し、俺にスイッチを握らせる。俺はただ黙って頷き、最後に1口だけ、水筒から水を貰う
美味い。こんな水が飲めるような場所を、奴等に汚させる訳には行かない
戦友にドッグタグを渡し、その背中を見送る。これから先、アイツは更に地獄を見る事となるのを考えれば忍びないが、アイツにはやる事があるのだ、それくらいの地獄は見て生きて貰おう
───静かだ。ここは百貨店だっただろうか?中は荒らされて見る影も無いが、きっといつも人でごった返しているんだろう
駐車場には沢山の車が並んで、子供が母親に手を引かれて買い物に着いていき、自分の欲しい物があれば駄々をこねる
なんて、最後に考えるのが平和な時代のソレな事に、自分で笑ってしまう
懐から最後の1本になるタバコを取り出して咥え、火をつける。そう言えばタバコも値上がりしてたな。
戦術機が上空を飛んでいき、スコープドッグのローラーダッシュの音が響く。いつぶりだろうか、こんなにも静かな時間は。いつだって気を張りつめていた気がする
「死にたくねえなぁ」
爆発はしなかったものの、BETAによって
痛みは感じない。アドレナリンか、それとも知らぬ間にモルヒネでも打たれたか。今となってはもうどうでも良い
痛みが登ってくる感覚も無い。もしかしたら完全に切断されたのかもしれない。そうなれば、今滴っている音は自分の血の音かもしれない。かもしれないばかりが頭の中を巡る
「おっ、来やがったな」
戦車級がコチラを見つけて群がってくる。この化け物共はどうしてこうも生理的嫌悪をするような外見なのだろうか?
無意味にスティックを動かし、狙いを定め、引き金を引く。反応するはずの無い
「ハハハ!!!!マジかよ!!!!」
スコア稼ぎだ。もっと撃って、撃って、撃って、弾切れ
カチカチと音を立てて、アサルトライフルからは煙しか登らない。段々と痛みも登ってきた。うん、ここら辺で良いだろう
「あばよクソ共。人間舐めんな」
きっちり三回。カチカチカチカチ、と音をさせてスイッチを握り───
最後に嗅いだのは、PR液の焼ける臭いだった
例え
既に決まっている事を 覆す事など不可能だ
一体誰が そんな事を言った?
巫山戯るな 神が決めたと言うのなら 神に歯向かうが人の
次回 マブラヴ〜鉄のララバイ〜
日本本土防衛2
神よ そこで指を咥えて見ているが良い