我々からしてみればどちらも天才だと言うのは、当たり前の話なのですがね?
─── AT博物館 天才の章より抜粋 ───
超大型避難船 シートルーパーくん3号 VIP専用ラウンジ
毎度毎度、このような特別待遇には慣れない。俺も他の人達と一緒で良い。なんて言った日にはSPからボロクソに言われた。もう少し考えて発言してくれません?舌打ち。ため息。仮にもSPなのに雇い主に対してこの扱いは酷くない?
何せ俺の価値観はあの頃からそうも変わっていない。なんならずっと篭ってAT作ってたい人間なんだ。俺の心はあの製図室に……
「このワイン美味しいわね。何処の?」
「バローロです。イタリアワインの中でも、悪魔に魂を売ってでも手に入れたい、と言われるほどの代物です」
「ふぅん、良い赤ワインなのは間違い無いわ。それで?いつまでそこで呆けてるのかしら」
なんで居るんだこの女は。もう帝都から離れたと聞いていたからこの船に乗ったのもあるのに
香月夕呼。オルタネイティヴ第4計画の責任者であり、因果律量子論を提唱した天才
正直に言おう。俺はこんな天才相手に話す言葉を持っていない
けどまあ、座るよう手で示されればそこに座らざるを得ない訳で
「お初にお目にかかります。鈴木重信で……」
「自己紹介なんているかしら?私もアナタもお互いの事よーく知ってるでしょ?」
ホント何なんだこの女は。顔に出さないようにしていればピクピクと顬が脈打つような気がする。ああ、ストレス過多になると動くんだよココ
「もう避難されたと聞いていましたが、何故この船に?」
「大学に残してた資料を持ち出しに来たの。随分スムーズに進んだわよ?何せBETAなんて1匹も居ないし、AT使って大量に運び出せるんだもの」
この女の嫌な所は変なところで常識的な所だ。さも当たり前みたいに言いやがって。その資料もしかしなくてもESP関連じゃ無えだろうな
ウチで預かれって言ってきたESPの子達何人居たっけ、確か今も無人AT率いて戦ってるハズだけど
「まあそれは良いわ。それよりもよ。私、常々アナタと話したいと思ってたの」
「勘弁し……ゴホン、いやあ、話すような事なんて私には特に……」
「マッスルシリンダー製戦術機 ジョン・ドゥ」
ピタリと、彼の動きが止まった。その目には殺意にも似た何かが宿り、じろりと、ワインを呷る彼女をようやく見据えた
見据えられた彼女と言えば、クラッカーのチーズ乗せを味わいながら、面白い物を見るような目で見つめ返す
「何処でそれを?」
「アナタ、腹芸は出来ないわね。アメリカにもオルタネイティヴ5を忌避する連中は大勢居るわ、それこそ国の中枢にだって。そこからポロリ、なんてよくある話でしょ?アメリカのオルタネイティヴ5を何とか遅らせる為の手土産、なんて話は聞いていたけど、ホントだったみたいね?」
沈黙が流れる。彼はウェイターからグラスを受け取り、ワインを注がせた。ぐいっと一気に呷って、今や超高級となったワインを味わう事もせずに飲み込んだ
「……ジョン・ドゥは、アメリカからの要望でもある。アメリカ政府側もこの要望が通るのであれば、かなりの期間オルタネイティヴ5を遅らせる事を内密に言ってきた」
「だからって、マクダエル社と裏で共同開発?帝国から見たら裏切り行為よ?ソレ」
「海外支社の独断だ。我々本社は何も感知していない」
そう言わざるを得ない。鈴木重工は最早帝国の要の1つであり、その影響力は、一言で議会が動くとすら言われるほどの影響力を持つ
そんな所が実は戦術機まで開発してました、なんて言ってしまえば最早その影響力は財閥を凌ぐとも言えるだろう。故にこの事は絶対にバレてはいけないし、海外支社の独断と言う事にしておかねばならないのだ
「はいはい。お決まりのアレね……スペックは聞いたけど、実際問題作れるの?マッスルシリンダー製の戦術機なんて」
「技術的に可能不可能で言えば可能。だがあれだけ体躯が大きくなれば、マッスルシリンダーの必要量はATの10倍以上にもなる。精密動作を行うならいっそシリンダー内に電気信号を直接送る方式を……」
アルコールが回ってきた。あんまりお酒に強くないんだ俺は。確かあの時も詩織に酒を勧められたような気がする。気が大きくなって普段ならしないような事したり、物言いしたりするからあんまりしたくないが、この人相手ならいい様な気がする。でもこの人歳下なんだよな……
「アハハ!!やっぱりアンタって別口の天才ね。私はそれこそ何でも出来る超天才だけど、アンタは1つの事を突き詰めた天才。技術バカ、て言った方が良いかしら?」
「……それはどーも。クソ、アルコールのせいだ。普段ならこんな事言わないんだぞ俺は」
「知ってるわよそんな事。あー面白い。ジョン・ドゥの制御機構はどうするつもりなの?既存のコクピット形式?」
「そうだな、だが今回の方式的に既存のコクピットじゃ反応速度が悪くなる。もっと反応速度の良いOSが欲しいな」
コレはヒントだ。歴史を変える為に必要なヒント。恐らくはタケルちゃんが提示するであろうハズのヒントを、俺が伝えた
簡単に言ってくれるわね、なんて言う彼女を見て苦笑いし、壁の時計を見れば、もうすぐ北海道に到着する時間と言うことに気付く
アルコールを抜くために水を飲みつつ、席を立つ
「楽しかったわ。短い時間だったけど」
「それはどうも」
もう二度と会いたくないけど。そんな感想しか出てこなかった
Q.今のATの死亡率は?
A.大体20%前後でしょうか。戦場によって死亡率が大分変わります。現在鉄壁と呼ばれる大連では歩兵がほぼ全てATに搭乗している為、死亡率は16%と言われています
逆にスエズでは脅威の5%です。海上からの間引きが可能の為光線級以外脅威じゃ無いからですね
今回の日本侵攻では攻め込まれてる為に30%くらいになります。突撃級相手には戦術機もATも無力ってハッキリわかんだね
Q.後続部隊ってなんて呼ばれてるの?
A.
誰が呼んだかレッドショルダー
肩に塗られた赤色は 例え洗おうと落ちる事は無い
地獄から戻ったぞBETA共 貴様らに死の鉄槌を下してやる
血潮に濡れた砲身は 常に
こんな感じじゃないですかね(すっとぼけ)