現在も使用されているこの機体は生産性、機動性、あらゆる面において既存の戦術機と隔絶していましたが、ある問題性が常に足を引っ張りました
PR液を使用している為の爆発しやすさ、そして習熟にとにかく時間がかかる事です
この機体はそれ程までに特異な物であり、同時に、四肢を失いながらも戦術機に乗りたい衛士達の希望でもあったのです
……ですが、発注数はそこまで多くありませんでした。後継機であるジェーン・ドゥが名機と言うのもありましたが……ジョン・ドゥ自体が過剰スペックだった事、米国製コクピットとの互換性が無い事、脱出装置が簡易的な事から、正式採用はされたものの、あまり広まりはしませんでした
過剰スペックでありながら安いこの機体は各戦線の精鋭部隊や後方国家に届けられる事となり、レーザーヤークトや間引き作戦での死亡率を大幅に軽減、更には後方国家の防衛力を格段に上げる結果となりました
─── AT博物館 ジョン・ドゥより抜粋 ───
※お気に入り2000件突破……2000!?あ、ありがとうございます!!!!これからも精進します!!!
1999年 6月28日 【鉄壁】大連
人類の最前線であり、ATの大量消費及び大量補充を繰り返すその場所は、人類の行く末を示していると言われている
現在大連には、歩兵と言う役職は存在しないと言っても過言では無い。砲兵や工兵と言った重要な兵種はあれど、ほぼ全員がATに搭乗しているからである
ATに最適化され、戦術機とのドクトリンまで完成しはじめている大連に、日本帝国から試験用の機体とパイロットが届けられた
「お久しぶりです。如月理子特務大尉、着任します」
「重慶撤退戦の時の君か!!まだ生きていたとは驚きだよ。日本がBETAの侵攻を受けたと聞いた時はもうダメかと思っていたんだ」
大連に送られたのは、土地勘のある精鋭5人である。重慶防衛戦の生き残りであり、苦汁を舐め、這う這うの体で逃げ帰るしか出来なかった元衛士達だ
如月特務大尉以外は、四肢のどれかをこの大連で失っている。ATによって救助されなければ貪られていたが、衛士であった誇りはとうに失われ、内勤で腐っていた所をこの
そして、対BETAに対する戦闘試験を目的とされた彼等は、多量の物資と共にやってきた
「有り難い。この物資だけでも受け入れた価値があると言うものだ」
米国の支援が無くなり、ここ【鉄壁】大連でもその影響は出る。帝国が近くにあり少なからずの支援を受けながらでも、被害は大きくなる
最も困ったのは食糧である。大東亜連合は独自の補給路及び補給計画を練ってはいたものの、それはアメリカの支援ありきで考えられていた。無論、大東亜連合内部のみで完結する計画も練られてはいたが、それを実行するには後方国の農業完全機械化が未だ完遂されていない為、今回の内戦はかなりの打撃を被る事となり、食糧配給率は全体で12%の量の削減、腐らない武器弾薬は大量に貯蔵しておいた物を使用したが、これによって反攻作戦は不可能となった
しかし、それでも大連は【鉄壁】である。これまでに大連市全域を取り戻しただけでなく、営口市の港まで取り戻し、16号高速道路を軸とした防衛線を引いた大東亜連合は高速道路上に
そこにやって来た、帝国の新型戦術機実地試験の要請。物資の納入を約束された大東亜連合はそれを快諾し、現在に至る
「今回の目的はあくまで実地試験だ。対BETAにおいて、この新型戦術機がどこまで戦えるかの試験となる。俺達は1ヶ月大東亜連合と共に防衛戦闘を行い、戦果を確認する。我々の戦果によって、帝国軍や国連軍、引いては世界中に……」
「特務大尉、御託は良い。一体でも多く奴等を始末しよう」
話を遮る衛士の目に、光は無い。彼女は重慶から命からがら撤退し、ここ大連での戦闘に組み込まれ、左腕と左脚を貪られた
その時のトラウマと衛士不適格の烙印によって戦術機から降ろされた彼女は、再生義肢の付け根を搔く癖がある
その言葉に同調するように、他の3人も頷いた。この中で、五体満足なのは如月特務大尉その人だけである
「……少尉、安心していい。今回我々は激戦区である常口市の港へと送られる事が決定している。24時間どこからBETAが襲ってくるかも分からない激戦区だ」
「良いですねえ、そこなら今度はきちんと死ねそうだ」
「違いない、今度はATなんぞに助けられる事も無い」
「いい加減にして。貴女達の死にたがりに巻き込まないで」
「おーおー特務大尉殿に気がある女は死にたくないか。それともダルマで運ばれたからもう忌避感も無いか」
ゲラゲラゲラゲラ。女とはおよそ思えない笑い声が響き、特務大尉が傾注、と声をかければ、生気のない目が再び彼の元へ向かう
気まずそうにする大東亜連合の佐官が居ようとお構い無しの
気まずそうにする佐官が改めて、彼女達への任務内容を読み上げる
「君達の任務は、我々が常口市の港、倉庫及びコンテナ群から物資及び様々な物を運ぶ際の護衛だ。最前線であり、常時BETAがやって来ては作業の邪魔をする。24時間体制で搬出してはいるものの、BETA相手の為に作業は遅々として進んでいない。君達にはその際の護衛……つまり囮をして貰う」
「聞いたな、俺達の任務は24時間体制だ。休みも何も無い最悪の現場だ」
「上等。私らの四肢の値段は安くねえって事教えてやる」
「あら、貴女は左側だけでしょ?私は全部食われたんだから私にスコア譲ってよね」
「言ってろ、早い者勝ちだ」
「良いじゃない、どうせ私達の魅力に入れ食いなんだから」
ため息をつく如月特務大尉に、佐官が慰めの言葉をかける程には、この部隊を纏めるのは難しいらしい
そして 大東亜連合は彼女らの活躍を見て 一刻も早くジョン・ドゥの確保に当たったと言われている
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『奴さんホントに絶え間っつーのがねえな!!!ハハ、52匹目だ!!!』
『ちょっと私にも残しときなさい、よ!!!疼くのよ四肢の付け根が!!!』
『各機フォーメーションを維持しろ、あまり跳躍すると光線級の的になるぞ』
『分かってますよ大尉!!!要塞級が来ました!!!』
『他の戦術機と同じように食いついてくれるのね!!!良いわ、良いわよ!!!』
常口市に到着した瞬間から、彼女達は働き詰めである。要塞級だろうとなんだろうと関係無く狩り続ける彼女達を見て、BETAは最優先目標を彼女達と絞ったらしい
次々とやってくるBETAを相手に曲芸のような側転を披露しながら弾幕を作り、突撃級の装甲を掴んで持ち上げて炸裂弾で直接始末したり、要撃級を
通常の戦術機であれば不可能な動きを繰り返すその様子は、まるで人間がするような動きである事に気づくのに時間はいらなかった
何よりも、彼女達は殆ど跳躍装置を使わない。ジョン・ドゥの特異性故か分からないが、ジャンプするだけで垂直で20m近く飛び立つ彼女らの動きは、昔見た体操選手顔負けである
『さっさと運べお前ら!!!運んだら運んだ分だけ明日の配給が多くなるんだぞ!!!』
『うるせえ!!!ならお前も運べ!!!』
積み込まれた物資は全て大連へと向かう。大半は缶詰や武器弾薬であるが、タバコや酒と言った嗜好品もコンテナに入っている事から、宝箱と呼ばれる程の価値がある
大型貨物船シートルーパーくん4号に積み込まれ、船舶は今日だけで2桁の往復を行っている
更には
そして、72時間後
常口市の港と倉庫群から、あらゆる物は持ち去られた
試験報告
ジョン・ドゥ5機による囮作戦は完遂され、1機も欠けることなく任務は終了した
推定となるが、全機の合算では突撃級43、要撃級183、要塞級16、と言う撃破数になっている(中型及び小型種は該当数が多すぎる為集計していない)
衛士5名はメディカルチェックを受け、脳疲労及び睡眠不足、長時間に渡るジョン・ドゥ操縦の為に四肢への違和感がある以外は身体的問題は無いと診断された
途中何度か補給及びPR液交換の為に既存の戦術機部隊へと引き継いだものの、数機が大破、ATによってパイロットが救助される結果となり、改めてジョン・ドゥの運動性能の高さを理解する結果となった
大東亜連合は今回の戦果を受けてジョン・ドゥの納入を決定するらしいが、未だ試験を終えていない為この報告は保留とする
絶望が未来を覆うと言うのであれば 希望がソレを打ち払う
例え明日が見えずとも 例え昨日すら見えずとも
我等の歩みは止められない 暗闇であろうと照らすまで
一条の光よ せめてその光明を見せてくれ
次回 マブラヴ〜鉄のララバイ〜
衛士訓練学校
希望よ 絶望と共にあれ
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※警告!! 以下の文書は機密である為クリアランス制限が設けられています。許可無き者の閲覧を禁じます※
XSM J-00 ジョン・ドゥ
鈴木重工とマクダエル社が共同開発したマッスルシリンダー製戦術機
頭部、装甲、跳躍装置以外全身くまなくマッスルシリンダーの筋繊維によって埋め尽くされており、さながらこの戦術機自体が1つのマッスルシリンダーとも言える代物である
当然ATよりも価格は跳ね上がるが、それでも従来の戦術機(F15)と比べると3分の1の価格にまで抑えられている(量産前価格で、である)
この機体はその特異性故に米国式のコクピットを装着する事が出来ず、独自のコクピット及び制御機構を備えており、搭乗する衛士も独自の新型衛士強化装備を装着しなければならない
この機体に制御機構と言う物はほとんど存在しない。正確に言えば、この機体の制御機構は衛士である。マッスルシリンダーの機構及び機体重量を支える為に鋼鉄製の骨格が挿入され、神経のように隅々まで電気信号発生装置とPR液用チューブが張り巡らされている
この機体の衛士強化装備には神経接続機構が搭載されており、機体に搭乗すると同時に神経接続が開始、衛士自身が機体の制御機構となる
衛士の神経動作に合わせてポンプが作動、各部位へとPR液を送ると同時に、衛士強化装備から発された神経電気信号を増幅して四肢を動かす為、とてつもなく鋭敏で直感的な操作が可能となる
また、全身がマッスルシリンダーによって出来ている為とてつもない膂力を持っており、稼働時間を考えない全力運動を行えばなんと要塞級の触手を引きちぎる事すら可能である。全速力で走るだけで(無装備計算ではあるが)600km/hを記録し、跳躍だけで20mは跳び上がる
その反面、機体に慣れていないと転倒、衝突、武器の暴発、推進剤、PR液漏れ等による爆発と言った事故が多発する為、訓練にかなりの時間を要し、更には微細とは言え首に穴が空く為長期間の搭乗は推奨されていない
しかしながら、このジョン・ドゥはその特異性から四肢等の欠落及び損傷があろうとも操縦する事が可能であり、元衛士が再度前線に戻れるようにもなる機体だと言えるだろう
※新型衛士強化装備……99式衛士強化装備の改造品。着用してジョン・ドゥに搭乗すると頚椎保護プロテクター部分から蚊の針程の神経伝達用針を挿入、神経へとアクセスする(無理矢理外すと頚椎神経を損傷する為絶対にしてはいけない)
※新型コクピット……新型衛士強化装備の為に最適化されたコクピット。既存の脱出装置及び強化外骨格が使用出来なくなった為、簡易的な脱出装置が使用されている。形式上操縦桿とフットペダルが装着されているが、使うのは跳躍装置の為のフットペダルのみである(これも機体に慣れれば不要となる)
急激な制動や動きで頚椎神経を損傷しないように、衛士の座る座席自体を特殊ゲルによって作製してあり、衛士自身が深く座り込み、背中を特殊ゲルに沈ませるようにしながら操縦する
コクピット背面にある電気信号増幅装置によって神経電気信号が増幅され、ポンプが作動。神経伝達の強弱及び筋肉への指令を読み取り、PR液の増減を行う