マブラヴ〜鉄のララバイ〜   作:rezeaizen

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XSM J-01 ジェーン・ドゥ。コレはジョン・ドゥの神経接続を危険視した各国の要望を叶える為に作られた機体です
既存のコクピットを何とか組み付けはしたものの、脱出装置であるFP兵器はサイズ的に組込不可能だった為組み込まれず、操縦は搭乗者保護の観点から既存の動きにならざるを得ず、ジョン・ドゥの良さである自由機動を殺し、既存の動きしか出来ない……そんな無様な機体を見学に来ていた香月博士が、テストパイロットであるとある人物に話しかけ、とある物が開発されて組み込まれ、この名機は完成しました

先行入力、キャンセル、コンボ、パターンの認識と集積……今でこそ簡単に言われるこれらの事柄を戦術機で出来るようにしたOS、『XM3』は、香月博士と我が社切ってのエースパイロット白銀武、この2名によって発明されました
何故そのような発想が出来たのか?それは彼が今尚続けている我が社の対BETA戦闘想定型体感アクションゲーム『ヴェンジェンス』から着想を得ていたからなのです
我が社のゲーム開発部が今尚強いのはコレのお陰でもありますね。新作体感型ゲームの体験コーナーもこの先にありますのでお忘れなく

このゲームはインストールさえすれば、戦術機でもプレイする事が可能です。『ヴェンジェンス』では戦術機のモーションキャプチャーを人間で行っていた為、人間の様な動きを可能としていましたから、それはそれは自由な動きが出来ると評判でした。……ちなみにですが、モーションキャプチャーには軍人だけでなく体操選手、陸上選手、アメリカのスタントマンと様々な人間を呼んで行われた為、開発費は高騰。最終的には20億円にまで登り、このゲームだけで会社が傾くんじゃないかと言われる程でした

XM3は、搭乗者のパターンの認識と集積を重ねなければあまり使えない……であれば『ヴェンジェンス』を使って集積を重ねれば良い
しかも、ジェーン・ドゥは既存の戦術機とは違い、自分がしたい動きが何でも出来る。既存の機体では不可能だった動きも。『ヴェンジェンス』を通じて機体と衛士の擦り合わせが終われば、自分だけの完全チューン機体が完成する
余暇すらも利用するXM3とジェーン・ドゥ(休日潰しの悪魔)はこの過程を経て、大連から一気に広まりました

ですが問題が発生します。オルタネイティヴ4か鈴木重工か、どちらが特許を出すかで大揉めが始まったのです
当初はXM3は鈴木重工との共同研究結果なのだから連名にすべきだ、いやいや鈴木重工で発売すべきだ、そもそも作ったのは香月博士なのだからオルタネイティヴ4の物だ、なんて言う声が会議場を埋めましたが、そこは重信社長の鶴の一声。オルタネイティヴ4に全面協力すると言ったのだからオルタネイティヴ4の発明だ。と告げて会議は終わりを迎えました

─── AT博物館 ジェーン・ドゥとXM3の関係より抜粋 ───


ジェーン・ドゥ

「それで?あの無様な動きをしてるのがジェーン・ドゥ?」

 

「ええ、まあ……搭乗者はウォーケン少佐です。既存の戦術機に乗ってた人、なんですけど……」

 

横浜基地隣 鈴木重工新型戦術機試験場

 

ドシン、ドシン、と音をさせて歩き回る戦術機、ジョン・ドゥの姉妹機であるジェーン・ドゥは、ジョン・ドゥに慣れている者達からしてみれば鈍重極まりない動きをしている

動作自体は既存の戦術機と変わりは無いのだが、言うなればOSと噛み合っていないのだろう。まるで人間のロボットダンスのようにぎこちない動きを繰り返している

 

「アンタ、名前は?」

 

「白銀武です。香月博士」

 

「アンタね?ジョン・ドゥの模擬戦闘試験でバク転するわ側転するわ三角飛びするわ、試験官に怒られながら曲芸披露したの」

 

「は、ははは……ま、まぁそれよりも、ですよ。何とかなりませんか、アレ」

 

ジョン・ドゥと中身は全く同じ。どんな動きだって出来るのに、従来の動きしかできないジェーン・ドゥは見ていてとても忍びない

テストパイロットである白銀武もジェーン・ドゥに何度か搭乗しているものの、今まで自由に動いてきた彼にとって、戦術機=ジョン・ドゥであり、既存の戦術機の動きはとても遅く感じてしまうのだ

そもそもオルタネイティヴ4は良いのかとか、何でこっち入り浸ってるんですとか、色んなツッコミどころは置いておきながら。天才である彼女に対して無理難題を吹っ掛けてみる

 

「機械じゃなくて拡張人体だものね。そりゃ神経直刺しの方が良いに決まってるわ。OSでも変えろって言うの?」

 

「良いですね、ヴェンジェンスみたいに動けると面白いかも」

 

ピタリと、香月博士の動きが止まる。彼女はヴェンジェンスが出てからと言うもの、PCにインストールして全機種制覇を目指す程にはやり込んでいる

鈴木重工ゲーム開発部に対して投資して対BETA戦シミュレーションゲームも作らせているし、重信社長同様に自身もその開発に携わる程には熱中している(このゲームの為だけに補給将官やら陸海空全軍の将官を呼び出してリアルな盤面を作らせた)

だからこそ、彼の一言に反応した。そうだ、何故思いつかなかったのかと

 

「そうよ、それよ。ヴェンジェンスみたいに動けるようにしたら良いんだわ」

 

「え?でもヴェンジェンスはゲームですよ?先行入力とか、行動のキャンセルとか、コンボとかパターンとか……実装出来るんですか?」

 

「それこそヴェンジェンスを使えば良いのよ。衛士にあらかじめやらせて、パターンとかコンボとか集積して、機体にそれを反映する。プレイ時間が長ければ長いほどパターンの集積も可能になる……ああもう、何で思いつかなかったのかしら!」

 

ブツブツと言いながら彼からメモ帳とボールペンを奪い取り、ガリガリと書き込んで行く。考えが纏まったのか、それともデータ取りの為か、白銀の首根っこを掴んでズカズカと横浜基地へと戻るのを、スタッフの1人が目撃していた

 

─────────────────────

 

1999年 10月15日

戦術機用新型OS『XM3』の完成が発表されると同時に、ジョン・ドゥのアップデート機体であり、XM3がインストールされたジェーン・ドゥが国連軍横浜基地及び大連へと納入される

 

鈴木詩織、第2子懐妊。女児と判明後、煌武院様が名付け親として立候補され、政威大将軍が名付け親となる

自らの名前から1文字取り、陽香(はるか)と名付ける

 

2000年 1月1日

九條家当主 九條純孝が当主の座を長男 九條秀一(くじょう しゅういち)へと譲り、隠居する

『若い者にやらせねばならんだろう』と言う一言と共に隠居し、鈴木重工の私設部隊へと入隊。ジョン・ドゥ部隊を率いる

 

鈴木重工が戦術機育成ゲーム『戦術機大戦』を発売。ストーリーとしては未知の敵BETAを倒す為に主人公が戦術機を受領、BETAと戦わせてレベルを上げて戦術機を進化させていき、各地方のBETAに操られた戦術機と戦って捕獲し、その戦術機を手に入れる、と言う……言うなればとある大人気ゲームのパクリである商品が発売される

本体とカセットの同時発売で価格はなんと税込1万円。この年のお年玉と休日は全てこのゲームに消えたと言わせ占める程の売上を叩き出した

また、このカセットを使用したゲーム開発本を売り出すと言う暴挙にも出る。この本はゲーム開発のバイブルとしてベストセラーとなり、後年に語り継がれる事となる

 

同時に上記のゲーム機で出来る戦略ゲームとして『BETA大戦〜帝国の決断〜』が発売される。ただ戦うのを指揮するだけでなく、補給、作戦、陸海空軍の配置など様々な情報を処理しつつBETAの侵攻を防ぐゲームなのだが、あまりにもリアルな戦況分布や世界地図によってカセット入れ替え式4本セットとなってしまい、価格も3万円となる

大衆受けはしなかったものの、コアなファンを獲得。テレビモニターに繋げて簡易的なBETA戦闘予想図として使われるなど、軍関係者や士官、将校候補達に人気を博した

 

─────────────────────

 

「重信様、ご機嫌麗しゅう。父純孝より家督を受け継ぎ、本日より九條家当主となる九條秀一で御座います」

 

「お止め下さい秀一様、私は貴方様の義理の弟で御座います。頭を下げるのは此方に御座います」

 

頭を下げる現当主に、そんな事を言いながら此方も深々と頭を下げる。事前に通達はあったものの、義父上曰く「アレはかなりお前を尊敬しておるから気をつけろ」と念を押されたのは間違いでは無いらしい

 

「何を仰いましょう。ATの開発から始まり亜大陸のDデイ、日本へのBETA侵攻を予見して対応、民間人でもATで戦えるようにするヴェンジェンスの開発、それに留まらず新型戦術機まで開発するその多才さ……日ノ本の人間として敬意を示さぬ理由にはなりません」

 

こうして列挙されると確かに素晴らしい。こう見ると結構多才に見えるな俺。米国のプログラマー引き抜いてるのとか言えない空気だ

色々悪い事もしてるけど言っても幻滅どころか素晴らしいって言ってきそうな雰囲気を感じつつ、改めて頭を上げて頂く

 

「当主様、他のお客様にもご挨拶を……」

 

「チッ……もうそんな時間か。分かった、向かおう……重信様、また後程色々と話しましょう」

 

小さく舌打ちしたのを聴きながら、女中に連れられて行く後ろ姿を見送る。時間があるなら俺とずーっと話してたいと言わんばかりだった顔を思い出しつつ、当主の息子にお年玉と共に『戦術機大戦』のゲーム機セットを手渡す為に立ち上がる

この3日間は地獄のような忙しさになる事を、この時の俺はまだ知らない




Q.ジェーン・ドゥって何で休日潰しの悪魔って異名?

A.
衛士「明日任務だしアルコール入れるのもなぁ……かと言って本読む気分じゃねえし……せや、ジェーン・ドゥでヴェンジェンスやったろ!!確かレイド戦開催されてたしスコア稼ぐやで〜」

Q.XM3はこれ以降インストールされるの?

A.ヴェンジェンスと一緒に色んな機体にインストールされます。機体動作の把握をゲームで出来るなんて素晴らしいですよね

Q.ゲーム機ってどんなの?

A.PS(ピー)みたいな感じのやつです。カセットはミッションディスクの簡易版で作ってあります。ゲーム開発本にはプログラミングやキャラの作り方まで全部懇切丁寧に載っている為、大学生やアメリカで大人気になります

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XSM J-01 ジェーン・ドゥ

ジョン・ドゥのアップデート機体
ジョン・ドゥの素体はそのままとし、既存のアメリカ式コクピット方式を取り入れ、新型OS『XM3』をインストールした機体であり、後年まで長く使われる機体である
コクピットのサイズから脱出機構であるFP兵器が使用出来ない為、コクピットのみを移植した機体である
あらかじめヴェンジェンスがインストールされており、これに搭乗する衛士は最低でも20時間はジェーン・ドゥ内でヴェンジェンスをプレイする事が義務付けられている
これは、XM3がヴェンジェンスと綿密に連携している為である。衛士が20時間ほどかけてヴェンジェンスをプレイするとXM3がそのパターン及び動きを集積、キャンセルやコンボと言ったデータまで集積し、その搭乗者に合わせて調整を行う為である

これにより、実戦に出る前に衛士1人1人専用の機体となり、更には実戦後にデータを集積、衛士と共に動きを最適化を重ねれば、ジェーン・ドゥのスペックを完全に引き出せるようになる

しかしながら、本機のスペックを完全に引き出すには最低でも3回は実戦に出ねばならないと言う結果が出ている為、今後の課題は1度の実戦でスペックを発揮しきれるようにする事であるらしく、最新型の戦術機シミュレーターとの互換性も高める事が目下の目標である

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