帝国軍はATの使い勝手の良さの確認と共に、実戦経験を培わせる為の試験的な物……のハズでした
実際はATのマッスルシリンダー作成の為にBETAの体組織を使っていた為、BETAの残骸回収及び、事前に決めたドクトリンの運用方法の確認を含めた物になっていたのです
そして、此処に投入されたのが通称出来損ない大隊……戦術機試験に落ちた、落ちこぼれを集めた部隊でした
─── AT博物館 年表説明文より抜粋 ───
1992年 敦煌ハイヴ建設開始
同年 統一中華戦線、韓国、ベトナム、日本の多国籍軍による重慶防衛線を構築
『ああクソ!!なんつー数だよ!!!』
『
帝国大陸派遣軍。対BETA戦において全くの無知と言っても過言では無い日本は、東アジア戦線を日本にまで向かわせない為、対BETA戦闘ドクトリン確認の為に、大陸へ大軍を送る事が議会によって決定された
帝国軍衛士や機甲科兵は何回かの出撃を生き延びれば本国へと呼び戻され、
故に士気が高いとは言えず、他国軍からしてみれば命の危機が無い安全圏からの援軍、要するにお荷物と捉えられかねない
然しながら、士気は低くともその練度と度胸は見張る物がある。引き抜かれたベテランの代わりに送られてくる新兵でさえも、戦術機搭乗時間1000時間を越えている猛者ばかり
『嫌だ、嫌だ、俺の足を喰うんじゃねえ!!!』
『
『
死の8分間を乗り越えるのは当たり前、韓国軍もベトナム軍も中華統一戦線も、その練度は舌を巻くばかりである
─── そんな事、こんな地獄じゃ意味が無い ───
戦車級に群がられている
現在のAT部隊の任務は、衛士の救出及び戦線の援護である。戦術機に踏み潰されないように足下を駆け抜け、味方戦車及び対空砲の弾幕を潜り抜けて野戦病院に届け、その帰り際に塹壕および戦車部隊の援護に回る
「衛士だ。後は任せる」
「またか!!コッチは手一杯なんだぞ!!」
「それだけ助かっているんだ、悪いがもっと働いて貰うぞ」
中途半端故にやれる事が多く、やる事が多く、休む暇が無い。かつて戦術機試験に落ちた落ちこぼれである彼等は、今や戦線維持に欠かせない存在へと変貌しはじめていた
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「おい見ろよ、AT乗りだ」
「よう神様!オメーのお陰で助かったぜ!!」
「よう戦友、お前の援護は頼もしくて適わんな」
三者三様。上から
帝国軍試作特殊戦術機大隊、通称出来損ない大隊。戦術機の半分以下の資源で作られ、BETAの筋肉を使って量産され、戦場でさえニコイチが可能で、だと言うのに30mmをバラまいて。武装を増やして要撃級の土手っ腹を撃ち抜く事すらあるソレは、戦術機からして見れば決して楽しい物では無い
しかし、それは裏を返せば休む暇すら無いと言う事だ。彼等の役目は主に、歩兵によって作られた肉壁を突破されない為の遅延戦術。塹壕の前、機甲科の前を行ったり来たりを繰り返し、とにかく戦術機や機甲科が目前のBETAに集中出来るようにする為の中途半端な代物であるが故に、休めない
「好き放題言いやがって、クソッ!!何も知らねえ癖に!!!」
兵舎に入った1人がロッカーを蹴り上げる。彼の連続出撃時間は100時間を越えており、この休息もハイヴから湧き出るBETAへの強行偵察を行い、漸くもぎ取った物だ
敦煌ハイヴの建設が始まってからと言うもの、彼等に休息らしい休息は存在しない。戦術機でする程の事では無いが、機甲科では荷が重い。そんな事柄は腐るほど存在しており、彼等の存在は各軍において引っ張りだこである
帝国軍側も各軍との潤滑剤的な役割を期待してか、快く貸し出すと言う形で彼等を酷使する
「いいから寝させろ……8時間後には出撃だ…」
そう言い終えたと思えば気絶して寝入ったパイロットを横目に、先程までロッカーに八つ当たりしていた男は強引にレーションを胃へと流し込む。睡眠時間の確保の為には、まともな食事など取っていられない
シャワーを浴び、体と髪を乾かし、ベッドに寝転がる。処方されている睡眠薬を口に放り込み、強制的に睡眠する
この繰り返しである。衛士でさえここまでのヘビーローテーションは行っていないであろう
寝ている時ですら体が揺れ、目の前に迫る戦車級の身体を撃ち抜く夢を見る。明らかなまでのPTSDだと理解してはいるが、それで休ませてくれるような場所では無い。今は一時でも時間を稼いで、日本への侵攻を遅らせねばならないのだから
家族の為、友の為、守るべき人々の為───そんな事が浮かんでは消えていき、彼は泥のように寝入った
8時間後 嘉陵江近辺 ATと機甲科のみの共同作戦が提示される
戦車級のみの二個師団規模が『活動』しているのが確認された為、戦術機を使用出来ない場合を想定して作戦を行う
AT300機を中華統一戦線機甲師団の砲撃の後突入、その後砲撃を適宜繰り返しながらATの評価試験とする
「俺達死ねって言われてるぜ」
作戦内容を聞き終えた一人がそう呟いた。疲労によってマトモな思考が出来ない中で、この男だけはマトモらしい
戦闘ヘリ用70mmロケット弾発射装置を両肩に取り付けて殲滅力を底上げし、使用後はパージして継戦させる。二個師団規模相手には余りにも火力不足である
それでも彼等はATに乗り込む。最早マトモな思考なんて出来ないし、この地獄から一刻も早く逃げられるのであれば、死ぬことすら厭わなくなってきている彼等の目に光は無い
退路無し、残弾無し、されど敵健在也。地獄のような戦場で、棺桶が行進する
圧倒的なまでの戦力差を前にしても、彼等はただ前へ進むしか無い
此処は戦場。死人に口無し
次回 マブラヴ〜鉄のララバイ〜
重慶攻防戦 2
ボトムズよ、死地に逝くこそ運命か