この物量作戦の成功により佐渡ヶ島地表部分の大半は制圧が完了したものの、未だモニュメント周辺の防備は厚く、横坑の制圧も中々進みません
しかしそれでも。今までと比べてしまえば格段に死傷率も低く、遅々としてではあるもののBETAを圧倒し続けるその姿は最早、人類の勝利が近い事を確信させるには十分な物でした
─── AT博物館 佐渡ヶ島ハイヴより抜粋 ───
2000年 10月19日 0100
横坑内に多数の偽装横坑を確認。鉄の三竦みによる撃退及び中継地点からの増援によって対処を繰り返す為、横坑内の制圧が遅々として進まない模様
また、米軍には横坑内地形完全把握の為の部隊が編成されており、これによって進軍速度が低下
推定1パーセント程度の進み具合でしか無いと確認される
0600
地表及び推定メインホールからのBETA増援を確認。偽装横坑によって挟撃を受ける部隊が増えた為後続となる部隊を大量投入し、横坑内の制圧を進める。それと同時にBETAの死骸を確保し、搬出作業を開始するも、搬出作業中にすら地面が抜けて偽装横坑が発見される
この時点でハイヴ全体の制圧率は5パーセント程度であると思われる
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「1日で1週間分の国家予算ですよ!?これではアメリカが破産する!!!」
「アメリカが破産するだけなら問題無い、だがこの戦費は補給計画にまで支障を……!!!」
「大統領!!!!早期決着にはG弾の使用も視野に入れねば……!!!!」
「馬鹿を言え!!!2度もあんな物を使えば今度こそアメリカは滅ぼされるぞ!!!!」
議会は踊る、されど進まず
大統領は黙して語らず、大型輸送船のピストン輸送は止まらない
そもこの作戦とてアメリカが主導して立てさせたのだから、今更そんな事を言えば信用どころの話ですら無くなる
予め分かっていた事だ。だからこそ、大統領はマイク掴み、息を吸った
「諸君。この中で一体何人が、我等がアメリカが内戦になる事を知っていたかね?先日議会で発言した彼は知っていたそうだね」
議場がしんと静まり返る。人質にされそうになり、その日の朝に挨拶したSPや海兵隊員が死んでいるのを見てしまった大統領を相手取るには、彼等は些か覇気が無いと言えるだろう
大統領はマイクを手にしたまま、1人の議員を指差した
「君、ジョシュアだったね。何故君はあの日上院に来なかった?1部の議員が来なかったのを私が知らないとでも?」
「それは……今は関係ありません。今話しているのは、如何にしてこの予算食いをどうするかで……」
「大ありだと言っているんだジョシュア!!!!君達がオルタネイティヴ5から何かしらの話を聞いた証拠は出ているんだぞ!!!!あの内戦が無ければ我が国でジョン・ドゥもジェーン・ドゥも発表出来たハズなのに!!!!我々はアメリカとして人類のリーダーで居られたのに!!!!今や発言権は無いに等しいのは誰がしたんだ!!!!」
あの内戦以後、大統領は非常に短気になったと言われている。正確には、あの日議会に居なかった議員達に対してのみではあるが
最も変わったのは、あの内戦以後、大統領がホワイトハウス内に居る事が少なくなった事だろうか
大統領は家族を連れて、あのテロで戦ってくれた者達に行脚を繰り返していると言う
「良いか!!!たかが1週間分だ!!!!我々の国際的地位と信頼の回復には少なすぎる位だ!!!分かったらガタガタ文句を抜かすな!!!!」
大統領の一言に、誰も反論する事は出来なかった。少なくとも議事録にはそう書かれていた
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10月21日 1200
横坑内制圧度 推定25%
BETAの動きに異変有り。従来の戦術機の次に狙われる戦車があまり狙われなくなり、ATが狙われるようになり、戦術機>AT>戦車>歩兵となる
この頃から制圧速度が格段に遅くなる。中継地点を狙うようなBETAの動きが活発化し、中継地点での戦闘が続発する
10月25日 1200
横坑内制圧度 推定34%
ATの損害が日に60機を突破する。想定以上の偽装横坑の数により押し潰されたり突撃級に轢き潰される事態が多発
脱出装置及び中継地点からの増援により死者の数は少ないものの、明確に制圧速度が遅くなる
10月30日 1200
横坑内制圧度 推定48%
侵攻度 推定66%
空挺作戦のように部隊を先行させ、後方からの追い上げにて制圧を図る作戦が立案され、承認される
横坑内に光線級があまり存在しない事から戦術機部隊での侵攻が開始され、想定以上の侵攻を可能とした
また、この侵攻によりBETAの部隊が2分された事が判明。制圧速度を上昇させつつ、戦術機部隊の支援を行う
11月7日
横坑内制圧度 推定73%
侵攻度 推定88%
米国の地学部隊が制圧された横坑内でのマッピング及び地質検証をほぼ終了と宣言。残すは
侵攻中の戦術機部隊を入れ替えながら侵攻を繰り返している為侵攻度に若干の遅れが出るものの、BETA死骸の回収数は15万を突破した
11月10日───
「首相。どうかこの偉業を、アメリカに譲って頂きたい」
アメリカ大統領が深々と頭を下げる。侵攻度が90%を超えたと言う報告が入った瞬間、大統領は帝国へと飛び立った
急な来訪に何事か、などと思う者は居なかった。アメリカとしてしなければならない事を、誰もが理解していたからである
だからこそ、極秘会談の場を首相は用意させた。空港から寄り道すらせずにやってきた大統領を出迎え、その言葉に悩むフリをふる
「分かっているのでしょうが、コチラとしても世界第2例として報告したい。国連軍だって地位向上の為に大々的に発表したいでしょう。私の一存ではなんとも……」
「今回のドリフト及びメインホールまでの経路図及び詳細地図を、そちらに渡しましょう」
米国は本気だ。そう言わんばかりの言葉に、榊首相は一瞬目を見開いた。それだけの政治力が貴方にはある。暗にそう告げている大統領は頭を上げ、1枚の写真を机に置いた
見取り図である。衛星写真と今回調査した経路がびっしりと書き込まれたソレを見て、榊首相はこの大統領への認識を改めた
「……日本には祝日と言う物があります。その日は大抵戦場でも休みを取る事が推奨されています。糧食を温食に変えたりして、一斉に休むのですが、近くその日が来ます」
「では……!!」
「半日。12時間です。国連にも祝日だからと声をかけて警備部隊以外を動かさないように出来るのはそれが精一杯です。それまでにケリをつけて頂けますね?」
榊首相の頭の中で絵図を描く。どのような祝日を折りこんだら良いかを考え、とある世界的企業に祝日のような物を作って貰えば良いと考えた
AT記念日。1号機と呼ばれるソレは、陸軍の工廠で作られた。試作機であるソレが作られたのが、今の時期だった筈だ
足早に部屋から出ていった大統領の背中を見送り、首相は電話を手に取った
「社長さん……重信氏に繋いでくれ。話があるんだ」
今や明確な共犯者となった男に、榊首相は言葉を紡いだ
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11月12日
AT製作記念日として鈴木重工から前線に大量の酒、タバコ、嗜好品と言った娯楽品が送られる
帝国軍上層部からの通達及び国連軍との協議結果により
その間、そんな祝日を知らない米軍が一斉に
後年、あまりのタイミングの良さに政治的取引があったのでは無いか?と疑われるものの、政府及び国連は否定している
大統領は頭を下げ 国際的評価は頭を上げた
第2の偉業 横浜とは違う明確なその偉業は アメリカが健在である事を示す事となる
人類は負けてはいない 我々は勝つ事が出来る
明日すら見えぬ暗雲に 一筋の光明が差し込んだ
次回 マブラヴ〜鉄のララバイ〜
鈴木重工 襲撃
暗雲は 光を常に隠そうとする