この間にもスコープドッグを宇宙でも使えるようにするスコープドッグⅡ、バーグラリードッグなど様々な機種の開発を続けていました
そして、社長である重信氏は思ったのです。今こそ宇宙でもATが使えると証明してやる、と
小さい頃から変わらぬ夢をようやく叶える。社長の目は久しぶりに空へと向かっていました
現在でも宇宙基地で使われているATですが、この頃の物を使っている所も少なく無いと知っていましたか?
─── AT博物館 宇宙で活躍するATより抜粋 ───
「はいもしもし、お電話代わりました」
設計製図室。社長室に居なければここにいると言われる彼は、フットワークの軽い世界的大企業の社長、鈴木重信である
名刺1枚にすら値段がつく。そう言えば大抵の人間は、それだけ凄い人物なのだと理解する
しかしながら、当人は極めて中流階級である様に振る舞う。当人としては当たり前ではあるが、元々好きで始めた事に金や人が着いてきた形であり、人当たりの良い職人気質で、裏表が無い。その為経営の事はからっきしである為、経営部門は常に頭を捻りながら社長である彼のやりたい事を補佐する役目である
それでも時折、ぽつりと出てくる刷新的な労働体系は、経営部門に舌を巻かせる。24時間体制4交代の交代勤務、日雇いや期間雇用を使っての機体組立てや溶接の経費削減
作業内容を細分化し、全ての内容を知っている専門職と呼べるのは正社員だけにする采配。圧倒的なまでの生産性は、こう言った者たちによって支えられている
日本に在住する難民のおよそ98%が、日雇い、期間雇用、正社員で鈴木重工にお世話になっていると言う程だ
「これはこれは榊さん、どうしたんです?」
『つい先程、アメリカ大統領が来ましてね。明後日辺りに祝日を設けることにしたんです』
「成程、その話だけならウチは関係無いように聞こえますが……ウチを使って何かするんですね?」
『話が早くて助かります。世界的大企業である鈴木重工のAT第1号製作記念日、明後日にしませんか?』
重信氏は決して、勘が悪い方では無い。暗に何を言おうとしているのかをしっかりと理解しつつ、おねだりも忘れたりはしない
当たり前ではあるが、こんなおねだりをするのは気心の知れた榊首相だからである。こんなお願いを他に言えば、それはただの脅迫と言えるだろう。それだけの権力が彼にはあるのだ
「勿論構いません。ですがこちらにもご褒美が欲しいですね」
『対価は必須ですからね、どんなご褒美が必要です?』
「───衛星軌道にATを打ち上げて、重機として活用としたいですね」
衛星軌道。人類の安全圏であると同時に、BETAに対して一方的に攻撃出来る場所
そんな場所に、ATを配備したい。現在宇宙軍は国連の名のもとにアメリカが独占していると言っても過言では無いが、宇宙空間に重機のような物は存在しない。市場と言う面で見れば空白地帯である事は明白である
何よりも、アメリカの威信が弱っている今こそチャンスである。国連軍はアメリカ以外のスポンサーが欲しい頃合だ
『……ATは宇宙空間でも使えると?』
「ええ。
『……国連に話を通しましょう。詳細資料はありますか?』
「今送らせます。官邸で宜しかったですね?」
従業員の1人を呼び、手紙と詳細資料のコピーを封筒に突っ込み、重信氏専用に作られた判子を押してから手渡す。コレを首相官邸に届けたら直帰していい、と告げれば喜んで行って来ますと告げる従業員の背中に手を振る
『感謝します。それと……侵攻リミットは12時間で取り付けました。ではまた』
榊首相と話すのも大分慣れてきたとは本人談である。暇つぶしにやってくる香月博士の相手は慣れないんですね、とからかわれれれば、俺は天才では無いからねえ、なんて返事が帰ってくる
当人はこう言っているものの、他者から見れば彼は香月博士と同等の天才である。否、実績から見れば彼の方が上と見る者すら居る
少なくとも彼の作ったとるーぱーくんシリーズによって世界的に農業は機械化に戻り、海上輸送も従来以上の効率で行えている
開発局との共同開発によって作られたマッスルシリンダー車により、陸路による輸送事業も元に戻った
娯楽用品として出された携帯ゲーム機は世界初であり、戦術機大戦は今や世界で2億本を売り上げている。それ以前に発売されたヴェンジェンスによって
これらの功績を伝えても尚、自分は凡夫だよ、などと言うのは最早謙虚を通り越して皮肉である。そんなのだから香月博士に気に入られたのかもしれないが
「さて、悪巧みの準備だ。君、悪いけどコレ保管しておいて」
そう言いながらアームカバーを外して製図台から離れる社長を見ながら元気よく返事をし、何を描いていたのかをじっくりと見定める
この部屋には技術者が見たら垂涎物な図面が大量に保管されている。当人曰く出し渋っている訳では無く、小出しにせねば世界のキャパシティが溢れてしまうから、らしい
今描いていたのはどうやら新型ATの腕部らしい。綿密に書き込まれたその設計図に思わず舌を巻きながら、くるくると丸めて図面ケースに入れ、指紋認証で金庫を開ける
ずらりと並ぶ宝の山にもう1つ宝を置いて、俺はきちんと戸締りを確認した
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「お邪魔しているよ」
「いえいえ。戦況はどうです?」
「今は何処が大広間を制圧するか話し合ってる所だよ。帝国か国連か……はたまた斯衛か」
鈴木重工 ゲーム開発室 通称EIKO
誰が着けた通称か知らないが、この通称はロゴにまでなってパッケージにプリントされている。誰が作ったのかは知らないが、センスは良い
そんな事は置いておき、画面に齧り付くようにして見ながらプカプカと葉巻を吹かすお歴々の中に混じり、出されたコーヒーを飲む
『帝国の決断』を製作するに当たり、お歴々を呼びつけてはリアルな盤面を作り続けた。それからと言うもの、ここゲーム開発室はお歴々の憩いの場となってしまった
陸海空補、全ての将官を呼びつけて連日連夜BETAのリアルな動きと味方コストの話し合い。時には国連軍やたまたま来ていた大東亜連合の将官まで呼び出したりして、これまでの戦闘の復習やBETAの動きを洗い出した
そうなると、ごく自然に仲良くなっていく。殴り合いの喧嘩に発展しかけたり、重慶の絶望感に舌を巻いたり、お互いの内情までオフレコで話し合うような場所となったこの場所は、現在帝都側の将校司令部として使われている
「アメリカから打診がありましてね。この偉業を譲ってくれないか、と」
「……穏やかな話とは言えんな、社長。1度ならず2度までもアメリカは水を差すつもりで?」
葉巻を吸う手は止まっておらず、目はずっと画面を見ている。だと言うのに、声色は低く、重い
横浜ハイヴから始まったアメリカのゴタゴタ。これによって全世界での被害は最早計り知れない。日本はG弾を絶対に許可しない強硬姿勢を取らざるを得ず、アメリカの国際的信用は地に落ちた
「アメリカは国際的信用を欲している。今のままでは遠からずアメリカが潰れると言うのは誰もが予想してるだろうし、それは事実です」
「いっそ潰れてくれた方が良い、と言う連中もおりますな。富士の連中がそうです」
「それだと全世界負け戦、一蓮托生は誰も望んじゃ居ません。明後日、AT初製作記念日として我が社が大量の娯楽用品やらを佐渡ヶ島に送る予定です」
「……首相ですな?コチラに話が回ってこないと言う事は政治畑から手を回すつもり……我々の説得を貴方に任せたと」
ご明察です、なんて言いながら紙コップに入ったコーヒーを飲み干す。コーヒー豆はブラジルとの交易で良く入ってくる為、日本国内でありふれた嗜好品と言える物のひとつだ
そして、コーヒー豆を交易品として最も多く扱っているのは、鈴木重工グループの鈴木商事である。マッスルシリンダーとの交易品として、日本国内でコーヒー豆シェアの81%を握っている
「海軍としての意見は?」
「横坑に入った時点で我々の役目は終わったと言っても過言ではありませんからな。帝国としては確かに欲しい戦果ではありますが、海軍としてみれば勝ちが確定した時点で言う事はありません」
「補給将官としての意見は?」
「今回の物資はアメリカから、しかも兵力の半数もアメリカからです。鈴木重工が米国歩兵にATを提供していますから、我々として楽な仕事でしたし、譲っても問題は無いかと」
「…………陸軍としては、少なくない数を我々も提供している。しかしながら、前線の兵が疲弊しているのも事実。娯楽用品や嗜好品は、ソチラが提供するので?」
「ええ、コチラから提供させて貰います……12時間。米国が12時間で大広間を制圧出来なければ、帝国が貰って良いと言われています」
「では、明後日は12時間過ぎるのを待つとしますかな。前祝いとするには丁度良いだろうて」
2杯目のコーヒーが紙コップに注がれ、お歴々と乾杯する。段々と慣れてきた自分が怖い、なんて感想が口から零れそうになったのを、社長はコーヒーと一緒に飲み込んだ
Q.ATが宇宙行くんですか!?!?
A.これのお陰で外装修理等がしやすくなるので軌道攻撃のコストも結構下がりますが、それはまだ未来の話です
Q.そう言えば斯衛がアメリカ軍の方に居るって言ってたけどソイツらは?
A.九條家当主が居て何故か休むのに滅茶苦茶乗り気だったので斯衛ごと12時間休んでました。何でやろなぁ
Q.何でコーヒー??
A.
ブラジル「アメリカがきな臭いから今のうちにATとかとるーぱーくん欲しいけど金が無いンゴ。何とかならないンゴか?」
鈴木「しょうがないなあ、特産品とかで交易してやんよ」
後方国「ありがとうンゴ。ほなコレコーヒー豆」
他後方国「ソレ通るならウチだってしたいんだ!!」
鈴木「価格計算したら確かに等価なんだけどコンテナ船いっぱいに積み込まないと無理ってマジ???商社作って対応せな間に合わんわコレ」