この日を私は良く覚えています。あの時、終末時計の針が大きく進んだと言われても不思議ではありませんでした
それ程までにこのテロの反響は大きく。同時に世界に衝撃を与えました
ニュースでも大きく取り上げられ、日本警察、帝国軍、国連軍、米軍、CIA、KGB、MI6までもが協力して事態の鎮圧及び解決に乗り出したのですから、その重要性がとても高かった事が分かるでしょう
当時を記録した20分程のショートムービーを上映しておりますので、どうぞご自由にご覧下さい
─── AT博物館 鈴木重工襲撃より抜粋 ───
「ええ、あの時は本当に恐ろしかった」
そう話すこの方は、2000年11月14日当日、鈴木重工帝都本社ビルに通勤中であった男性だ
当時の彼は鈴木重工に就職できた新入社員であり、このテロを1番最初に目撃した
「あの日は同期達と昼休憩にコーヒーを飲む約束をしていたんです。俗な話なんですが、会社では天然物のコーヒーが無料で飲めたので。今でも思い出します、昼飯を食べ終えて社内に入ろうとした私が正面玄関に入った瞬間でした。全速力で2機のATが正面玄関横のガラスをぶち破ったんです」
彼はその時の証拠と言わんばかりに、両腕の袖を捲る。そこにあるのは、今でこそあまり目立たないものの、大量のガラスが突き刺さった跡である
「勿論ですが、警備部のATとも違いました。警備部は黒色でカラーリングされているはずなのに、そのATは白色でしたから。痛みと非現実感でへたりこんでいたらすぐに警備部のAT部隊と警備員が来まして。私の記憶はそこまでです」
そして、話は社内でコーヒーブレイクしていた管理職へと移る。彼は社内で昼食を終え、1階の喫煙室でコーヒーを飲みながら煙草を嗜んでいた
「よく覚えてますよ。忘れろと言うのが無理な話です。昼食を終えてコーヒーを飲みながら1人で煙草を嗜むのが好きでしたから。正面玄関からガラスが割れる音がしたと思って急いで喫煙室から出たら、白色に塗装されたATがあったんです。最初こそ事故か何かかと思いました。近くに建設現場もありましたから、そこのATが突っ込んで来たのかと。でも違ったんです、アレは軍事用でした。装甲厚もあり、肩にはキリスト教の十字架が描かれていました……そして、私に30mmを向けて引鉄を引こうとした瞬間、警備部のATが即座に取り押さえました」
この後、彼は警備部のATによって保護された。そして、事件の事を良く知る警備部の人間へと話は移る
「我々がATを取り押さえ、武装解除させようとした瞬間でした。もう一機の対応をしていた警備部のATが突如爆発したんです。我々警備部のATは装甲の下、マッスルシリンダーと装甲の間に中和剤が挿入された特殊ATでした。装甲が破られても爆発しないATだったのが爆発した、となれば、外部からの攻撃の他ありません。私は即座に敵ATの武器を取り上げて逃げました。離れた瞬間そのATにロケット弾が着弾して爆発しました」
彼はゆっくりと水を飲み、舌を湿らせる。彼の胸元に着けられている勲章は、このテロの対処に当たった者たちにのみ与えられた鈴木重工特製のダイヤモンド勲章だ
「すぐに襲撃……テロだと言う事を理解しました。火災報知器と警報が鳴り響く中で私は即座に警備部へと通報し、援軍を要請しました。その間にも敵ATが割って入ってきた正面玄関からは白いローブを纏った連中が次々やってきて……私に目もくれず、避難しようとした社員達に発砲したんです」
警察発表の現場写真は悲惨な物であった。社員達の死体とATの30mmによってバラバラになった白いローブとその中身。正面玄関から入ってきた白いローブの敵勢力はおよそ30名、社員の犠牲は65名であった
「発砲を確認したので、すぐに30mmを使いました。対人用の12.7mmもありましたが、撃ち漏らしを警戒した為30mmを使ったんです。今でも思い出してしまいます、あの時すぐに排除していれば、と」
正面玄関の話はこれで終わりであるが、この時もう1つ事件が発生していた
屋上ヘリパッドに敵の輸送機が現れ、60名にも及ぶ敵襲が発生していたのである
この時対応した、重信氏専属護衛部隊の方に話を聞く事が出来た
尚、当該人物は顔を映す事及び声にモザイクをかける事で了承した
「正面玄関でのテロはこちらでも把握していました。鈴木重工の警備部は優秀ですので、そちらの心配はしていませんでした。問題は屋上からやってきた60名です。明らかに正面玄関とは違う精鋭部隊でした。あの時社長は10階建て本社ビル内の4階ゲーム開発室に居ましたので、少なくとも9階にある社長室が制圧されても問題ありません。ですが我々は違う、我々の誇りにかけてそんな事を許してはならないのです」
現在でもそうだが、鈴木重工の10階はレストランとなっている。ランチ時は一般人でも入れるようになっており、鈴木商事で取り扱う物品をビュッフェ形式で食べる事が出来る
天然物のコーヒーが無料で飲める為、一般人の利用も多い
そして、この日も多くの社員や一般人が多く利用していた
「10階は地獄になっていると思いました。我々が9階から上がる時ですら銃声は鳴り止まず、悲鳴が響いていましたから。消えていく悲鳴を聴きながら、我々は10階へと突入しました」
この時、10階でレストランを利用していたのは推定300名程である。そして、精鋭部隊は手際良く300名を次々と殺害した
手榴弾の投擲、軽機関銃による掃射、運良く生き残ったのは、キッチン内で調理をしていたスタッフと、20名の男女だけであった
「地獄絵図でしたよ。血の海が広がっていたんです。何の躊躇いも無く引き金を引いた事が分かる程に。生存者を処理しようとしていた奴の頭を撃ち抜いて、戦闘が開始されました。10階から9階へのアクセスは我々の使用した階段だけですので、必然的に我々はこの階段を守らねばなりません。セキュリティの関係上、9階へのアクセスは専用エレベーターと階段しかありませんから」
当時の専属護衛部隊は20名、斯衛や帝国軍から選び抜かれた生粋の精鋭であり、当時最新鋭と呼ばれる防弾装備も着用していた
だがそれでも、兵力に3倍の差がある事、生存者を助けなければならない事から、不利な事は明確だった
「怒りが頭にありました。きっと隊長もそうだったと思います。だからこそ、最新鋭の装備に任せて散開しながら突撃したんです」
20対60 技術差があろうとも覆す事の出来ないであろうこの事態に、彼等は銃と刀で立ち向かった
結果として、このような事になると想定していなかった敵を撃滅することが出来たものの、護衛部隊も20名中6名が死亡、12名が重軽傷を負う
「最後の一人だけは生かしておきました。口に指を突っ込んで舌を噛みきれないようにして、手足の腱も切って。吐かせなければいけない事が多々あったので」
この制圧の後、警察、帝国軍、帝国情報省が続々と到着。帝国情報省はこのような事態が起こる前に対応出来なかったとして、情報省大臣が辞任する事態にまで発展する
そして、この事件を起こしたのがキリスト教恭順派と発覚するのに時間はかからなかった
光明は照らす 明日への道を
光明は照らす 明日への希望を
明日すら無かった人々に 明日を与えしこの光
消そうとするなら お前が消えろ
次回 マブラヴ〜鉄のララバイ〜
撃滅
明日すら無い者達は