まるで神の思し召し、彼は神に守られていると多くの人が言いました
ですが重信氏はとてつもないショックを受けていました。自分がしてきた事が間違っていたのでは無いかと落ち込む程に
それでも重信氏は立ち上がり、事件から1週間後、テロ被害者合同葬儀にて、弔辞を読み上げました
それは、このテロで亡くなった方々に。自分の行いを信じて着いてきてくれた彼等への、せめてもの償いだと言えたのでしょう
─── AT博物館 鈴木重信の弔辞より抜粋 ───
「このようなテロで、亡くなってしまった皆様へ」
俺がした事は間違っていたのか。この世界の為に尽くしてきた俺に対する仕打ちがコレか
「せめて、その魂が安らかに眠れるように」
神よ。アンタはクソ野郎だ。きっと俺が立ち直ると知ってたからこういう事をしたんだろう
「貴方達のように被害に会う方が、二度と現れないように」
こんな世界に送り込まれた時から思ってたよ、アンタならそういう事するだろうってさ
けど何処か安心してた。俺が死ぬだけだろうって
「貴方達の無念が、報われるように」
けど違った。そんな生易しいもんじゃ無かった。今朝挨拶したばっかなんだぜ?
10階に居た人達なんて、入れ違いだったんだぜ?コーヒーのお代わり持って、ゲーム開発室に行くためにさ
「私は全力を持って、今回のような事を起こした者達を、屠ります」
皆から挨拶されたんだ。中には小さい子供まで居てさ。ありがとうって言われた時、凄く嬉しかったんだ
俺の息子も娘も、こんな風に育つんだろうなって。俺がしてきた事は間違いなんかじゃ無かったんだって
「一兵たりとも。いいえ、1人たりとも。奴等を赦す事はありません」
それがどうだ。まるで嘲笑ってるようじゃないか。お前がしてきた事は無駄だった、なんて言いたげにさ
「それが、被害にあった皆様への、せめてもの贖罪であり、償いであると信じて」
責任ある立場じゃなかったら発狂したかったよ。皆みたいに泣き喚いて、感情を表に出したかった
けど、俺にはそれは出来ないんだ。しちゃだめなんだ
「鈴木グループ代表取締役 鈴木重信 弔辞とさせて頂きます」
深々と頭を下げる。大きく飾ることも出来ない程に密集した遺影に対し、ただただ深く、頭を下げる
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「独り酒?」
「詩織に負担をかける訳には行かないからな」
鈴木重工 横浜プラント。国連軍隣であるこの場所は、国連軍、帝国軍、斯衛、米軍によって警備されている
これでも警備が足りないと言う声が上がったものの、国連はオルタネイティヴ4での保護下にある為問題無いとした
これに対しソ連、大東亜連合、日本、米国が国連による重要人物の監禁であるとした為、国連軍横浜基地での保護を取り止め、国連軍隣のプラントにて各国軍での合同警備とされた
尚、今回のテロを受けて各国の鈴木重工及び鈴木商事の海外支社では更なる警備体制の強化が実施され、軍の1部までもが投入されている
「随分ショックを受けてるのね。本社ビルにPR液満載のタンクローリーが突っ込まなかった事を喜ぶべきじゃないかしら?」
「ウチのタンクローリーは運転手の静脈認証でしか動かない。仮に腕を切り取られてもハンドルでの生体認証も含めているから動かせん」
「あら。そうなると四国のテロはやっぱり」
「そのツケでもあるんだろうさ」
だからこそ、俺は絶望する事が許されない。少なくとも俺は大を救うために小を犠牲にした
2千万を救う為に1万を犠牲にする。多くの人がそれは正しいと言うだろう。だが犠牲になった人達の家族はどうだ?
正しいから許すと言う訳も無い。もっとやり方があったはずだと言うだろう
だが、それ以上を見つけられなかった。いくら軍部にパイプがあると言えど、俺に四国を守りましょうなんて言える訳も無かったんだ
いや違う。言ったとして動かないと知ってたからだ。だからこそ俺は……
「情報はあるんでしょ?アナタのことだもの、奴等の動きを知らない訳も無いし」
「……難民から多数のタレコミがある。それによって国内での潜伏場所は割れた。それと、恭順派に協力してる、してた連中も絞りはじめてる。たれ込んだ奴等には期間工優遇措置を施している」
「やっぱり。怖いわね、世界最大企業を敵に回すのって」
「やるのは
「ええ、そういう事です」
後ろから声がかかる。我が妻詩織の声だ。九條家で斯衛の保護を受ける事も提案されたものの、夫の隣に居ないのが妻と呼べますか。の一言と共に着いてきてくれた
勿論、我が子である純一と陽香も一緒に。詩織には迷惑をかけてばかりだ
それはそうと、我が妻はどうやら香月博士を凄く敵視している。別に不倫するとかそう言う訳じゃないんだけどな
「あなた、そういう事は私に吐いて下さい。香月博士は確かに素晴らしい女性です。ですが彼女もオルタネイティヴ4で忙しい身、私達のような家族とはまた違うのですから。それに、夫のそう言った絶望も何もかもを受け止めるのが私の役目です」
「あら、私は良いのよ。彼のお陰で凄く楽をさせて貰ってるから。それにXM3とジェーン・ドゥで鈴木重工とオルタネイティヴ4の関係も蜜月になったとも言えるし。影が薄くなったマクダエル社には悪いけどね」
詩織が俺を挟むようにして座り、ニコリと微笑む。俺を挟んで2つ目の悪夢が展開されようとしているのを感じながらも、逃げる事が出来ない
何故か2人にガッチリと両脇を固められている
「少しくらいいいじゃない。毎日家に帰ってるんでしょ?昨日だって沢山慰めたんだろうし。私だってこんな素敵な人初めてなんだから」
「でしたら遅かったですね。もし五摂家であれば側室も考えましたが夫は私一筋ですので」
「……別にそれ、アンタが決めることじゃ無いでしょ」
「愛人と言うのは夫も私も考えておりませんので」
悪夢だ。だがこの悪夢は些か俺の事を思いすぎている。頭を再度抱えながら大きく溜息をつき、グラスに残っている酒を呷ることしか出来なかった
せめてこの2つの悪夢は長続きしませんように。時間が解決してくれる事を願いながら、酔い潰れる為だけに慣れない酒を飲み続けた
Q.これから恭順派はどうなるんです?
A.族滅です
Q.やっぱり1998年のって……
A.重信の独断であり、運転手はその事を事前に知らされていました。重信は自分の知っている歴史を全て話し、彼等に納得して貰いました
運転手の家族全員を北海道へと移送し、以後会社の金を使って一生安泰の約束を果たしています
Q.不倫するんすか!?!?!?
A.しません。でも香月博士は種寄越せくらいは言います