これは恭順派が主に難民によって支えられていたからと言われています
当たり前ですが、自分達の明日すら見えない所に手を差し伸べてくれただけでなく、住む場所や働く場所まで用意してくれた鈴木重工に対して恩義を感じている者が大多数です
情報を渡せば期間工をもっと長くやらせて貰えるらしい。正社員になれるらしい。そんな噂が噂を呼び、彼等は目をギラギラと輝かせます
そして始まった密告合戦は、もう言う事も無いでしょう。皮肉な話ですが、バチカンが声明を出す頃には、各国で恭順派の排除が始まっていたのです
─── AT博物館 族滅戦争より抜粋 ───
11月14日 1400
警察、情報省、帝国軍、斯衛によって非常線が引かれ、東京外への出入りが封鎖される
マスコミに対し箝口令を敷き、テロがあった事、被害者数、未だ対応中と言う事を繰り返し報道させる
情報省より恭順派の構成員(暫定)が警察、帝国軍、斯衛に提出される
警察内部に恭順派が居ると判明し、公安及び情報省が身柄を確保する
1600
鈴木重工本社ビル 被害者数
死者351名、重傷者132名、軽傷者12人
襲撃者
死者89名 重傷者1名
襲撃側の唯一の生存者は重信氏護衛部隊によって斯衛へと引き渡される。最低限の治療がされ、尋問が開始される
1800
報道を見た難民による鈴木重工への密告多数。日本国内に存在する恭順派のアジトらしき場所に目星が着く
鈴木重工は情報省へと提供し、情報省は精査の為に時間を要するとした
11月15日 0200
CIA、KGB、MI6内部の恭順派粛清完了の報告が入る。今回の事態を受け内部資料破棄及び内部人員殺害未遂が発覚した為である
また、CIAは米軍内にも恭順派が居るとして粛清を求めたものの、米軍側は内戦の際に恭順派が避難民の救護に当たっていた為だと弁明した
CIAの独自調査及び鈴木重工から派遣されたESP能力者により恭順派が1部上院下院議員、オルタネイティヴ5への繋がりが有ることが判明。更には軍内部高官にも恭順派が居る事から弁明を退けて逮捕するよう大統領へと提案した
大統領は報告を受け、恭順派を米国政府及び米国市民の敵とし、全員を逮捕する事を決定。内戦時にスパイ行為を行っていた事、この事態においても内通を計ったことを罪とした
死刑にはならなかったもののその罪は重く、最低でも20年以上の刑務所行きが決定する
しかしながら米国内戦により刑務所が満員であると言う報告を受け、軍部は大統領命令の下懲罰部隊を編成し、各最前線に歩兵として送り込む事が決定された
また、魔女裁判となるのを防ぐために鈴木重工より派遣されたESP能力者の力を借りて尋問がなされ、米国がオルタネイティヴ3の研究結果に舌を巻いた
0400
斯衛部隊及び陸軍特殊部隊が情報省より提供された国内の隠れ家へと突入、制圧
内部協力者によって証拠となる書類や命令書が確保されており、同時にメキシコ輸出用スコープドッグが20機押収された
内部に居た難民及び恭順派はほぼ全員が逮捕されるものの、日本支部である事、指導者層は日本に居ない事が判明
0800
国連が横浜基地にて鈴木重信氏保護を提案。大東亜連合、ソ連、米国、日本が反対
その後協議が行われ、横浜基地に隣接する鈴木重工プラントにて国連、米国、帝国軍、斯衛による合同警備として可決される
大東亜連合及びソ連が警備の更なる厳重性を求める為に自国部隊の配備を提案するも前線から抜くなと言う理由で却下される
1300
バチカンが恭順派を正式に破門する。そもそもキリスト教の宗派ですら無かったが、これにより恭順派は正式にテロ組織へと成り下がった
11月18日
佐渡ヶ島ハイヴからはぐれて活動していたと思われるBETA群が突如として横浜港から出現、国連軍横浜基地へ急襲をかける
突然の奇襲により対応が遅れるも隣接するプラントの警備を行っていた戦術機部隊及び鈴木重工テストパイロット部隊により横浜基地は被害を受けつつも殲滅
この際の混乱に乗じて侵入者がプラント内へと入り込むも護衛部隊により対処され、全員が逮捕される
名簿に載っていた日本国内の残りメンバーであると確認がとれた為、これにより日本国内の恭順派は根絶されたと言われる
尚、日本国内のみである為、諸外国は恭順派の掃討に長い時間をかける事となる。鈴木重工と言う希望のお膝元であった事から対処が簡単だった、と言うのが後の歴史家の見解である
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「騒がしいな、何かあったのか?」
「ああ、了解した……代表、BETAの奇襲です。それと、この奇襲に乗じて身元不明者が侵入してきました」
背筋から冷や汗が伝う感覚がする。裏口の監視カメラからの映像には、何人かの男が銃を持って侵入してきている
俺の命は良い、だが家族の命は守らねばならない。護衛部隊にそう伝えようとすると、増員された部隊の半数は既に居室を守っていると釘を刺されてしまった
「守るには密集していた方が良いだろう、私も居室に……」
「いえ、敵の狙いは代表の命でしょう。ここに居てください、ここが1番安全です」
部屋の中に居るだけと言うのはどうにも落ち着かない。窓から外を見れば、眼下で皆が命をかけて戦っていると言うのに、自分には何も出来ない
頭では分かっている。自分が死ぬ事こそがこの国の、人類の損失であり、人類勝利の為の道筋が無くなると言う事が
きっと神様が見ているのだとすれば、こんな事を考えている自分を見て大笑いしているのだろう
「代表、敵の数が分かりました、15名です。全員が名簿に載っていた者ですので、国内の恭順派は彼等で終わりでしょう」
「日本国内だけで500名近い構成員、か。宗教は怖いものだ」
ローマ教皇が正式に破門した影響も少なからず出ている。アメリカでは内通や密告が盛んに行われ、武装した民間人が恭順派を撃ち殺したと言うニュースまで流れている。キリスト教を信じながら死ねなどと言うのは、受け入れ難い物があったのだろう
「代表、コーヒーです」
男性の秘書がコーヒーを入れてくれた。飲む為に受け取ろうとした瞬間、護衛部隊の1人が制止してくる
このような事態だから毒殺でも警戒しているのだろうか、そう思っていれば秘書の手からカップを分捕り、1口毒味をする。そう言えば家でもしろって言われてたっけ、なんて思い出しながら、もう1人の護衛が秘書に銃を向ける
「……随分と舌が痺れるコーヒーを淹れるじゃないか」
口内からコーヒーを吐き出し、カップごとゴミ箱に放り投げる。秘書はわざとらしく手を挙げてため息をついた
……ああクソ、嘘だと言ってくれ。お前は俺にずっと着いてきてくれたじゃないか
「残念。楽に死ねる量だったのに」
発砲音と共に、秘書の両膝が撃ち抜かれる。ガクリと力無く倒れ込む秘書の両手も彼等の踵で踏み潰され、1人は自分の前に陣取り、もう1人はいつでも頭を撃ち抜けるように銃を突きつけている
「……なあ、教えてくれ。俺がしてきた事は、そんなにも悪い事か?」
通信する護衛の後ろから、声をかける。痛みによって呻く秘書は此方を見て不気味に笑う
「人類は終わりの時を迎える筈だったんだ、アンタはその運命を塗り替えようとしてる。そんなの許せる訳無いだろ」
「…………そうか。クソ喰らえだ」
コイツらは勝手に絶望したんだ。そう考えれば納得してしまった。自分達の絶望を他者に押し付けたいだけであり、その先にある希望を見ないようにしているだけなんだ
すとんと納得してしまえば、考えの整理は早かった。プラントの戦闘音も段々と止んできているのを聴きながら、室外まで転がされる秘書を見送り、俺は護衛の人に新しいコーヒーを頼んでいた
失敗は成功の母 失敗には次があると誰かが言う
笑って済ませ 始末書を書いて終わりだと上は言う
だからこそ この失敗もその筈だった
誰も考えなかったこの失敗が 人類勝利の鍵を握ると知らず
この失敗に 2人の天才が立ち上がる
次回 マブラヴ〜鉄のララバイ〜
人工生命体
どんな失敗も 新たな一歩となる