マブラヴ〜鉄のララバイ〜   作:rezeaizen

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ATの宇宙運用が始まり、今まで重機と言える物が無かった宇宙での作業効率は驚く程アップしました
ATで作り上げた物として有名なのは、やはり宇宙ステーションでしょう
ATのATによるATの為の宇宙ステーション……なんて言われますが、実際は倉庫と変わりません。地表で保管せねばならなかった物資を集積、軌道爆撃用の補充物資を貯めておく為の場所
中継ステーション。現在ではその汎用性の高さから軌道エレベーターの倉庫として使われている場所ですね

─── AT博物館 衛星軌道でのATの活躍より抜粋 ───


あ号標的

───【極秘】 オルタネイティヴ4 仮称00ユニットによる諜報分析報告書 ───

 

鈴木重工の極秘実験失敗により、BETA製人類研究用シリンダーと思われる物に収められていた東雲 綾(仮称00ユニット)(以下ユニットと呼ぶ)の脳髄復活により、諜報活動が可能となった

 

横浜基地地下に存在したシリンダーを国連軍が回収、脳波の無い個体ばかりであった事から火葬処分が提案されたものの、処分費用が嵩むとされた為に放置されていた

それらの一部を鈴木重工が買取り、鈴木重工製戦術機 ジョン・ドゥの機体制御用パーツとして使用される手筈であった

当該機体に組込む際に頚椎以下の背骨を除去、培養液へと投入。脳へと直接的に電気信号を送る為に電極を挿入しての実験が開始された(以下、当該技術と呼ぶ)

実験開始から10分が経過した頃に突如として機体が制御を受け付けなくなり暴走、一頻り暴れた後に怯えるように実験場の隅へと蹲った

 

その後、日本語によるコミュニケーションが可能であるかの簡易的な実験を経て、機体へと人工音声装置を取り付けると発声が確認され、ユニットの人格が復活した事が判明する

その後の脳波測定にて脳波及び神経系の復活が判断され、死亡した脳髄が復活する初の事例となる

 

ユニットは、シリンダー内にて直接流し込まれたBETAの情報をおぼろげではあるものの覚えており、仮称あ号標的(以下あ号と呼ぶ)と呼ばれる、オリジナルハイヴにのみ存在する頭脳級と呼ばれる物の存在を認知した

反応炉よりその情報が届いていたと言う話である為、ユニットには引き続きBETA側への諜報活動の一環として、反応炉への接続及びあ号の情報抜き出しを引き続き行っており、オルタネイティヴ3の生き残りである社 霞協力の元、様々な情報を抜き出している

 

ユニットは現在、鈴木重工協力の元作製された人型義体にて横浜基地極秘区画にて生活を行っており、精神的に安定してはいるものの、外出の許可を求めている。横浜基地内での深夜帯の外出を許可しているが、ユニットの年齢が当時17歳であった事から友人等へと会いたいのだと思われる

 

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当該技術は非常に発展性及び即応性のある技術である事を念頭として、乱用すべきでは無いと結論づける

これは人類を人類たらしめる『定義』の問題であり、技術の発展と言う事を筆頭とするのであれば、非常に素晴らしい技術である

 

前線の兵士、衛士、ボトムズが死亡したとしても肩より上が残っていれば『再利用』が可能であり、ユニットのように身体を入れ替えて使えるようになれば、人類は肉体と言う檻から解放される

脳が生きている限り、自己と言う存在が消えない世界が完成する

霧山教授の論文の仮説を裏付ける事が可能かどうかの判断も可能だろう。珪素で生成した肉体を当該技術で動かせるようになるのであれば、BETAとの意思疎通すら可能かもしれない

 

しかし現状の、命が非常に軽い状態で当該技術による移行を行えば、待っているのは義体差別、若しくは義体による差別である

ひいてはBETAとの戦争に勝利したとて、その後に起こるのは義体と非義体による戦争であり、人類の未来の為に今暫しの猶予を求めるものである

 

だが、この技術は研究もされ続けなければならない。繰り返しになるが、当該技術は非常に素晴らしい技術である

オルタネイティヴ5への移行がほぼ不可能である点から見ても、どのような手を使ってでも勝たなければいけない場合、それこそオリジナルハイヴを攻略する際に、必要な人員確保の為に致し方なく使用する事は認められねばならない

 

以上をもって、報告書とする

 

香月夕呼

 

─────────────────────

 

「それで、お偉いさん達の反応は?」

 

「もうてんやわんや。視察だなんだとか理由つけてこっちに来たがってるし、情報を国連だけで秘匿するかとか色々話し合ってるわ。同席してたアメリカの学者連中は貴方達の技術に興味津々。どう東雲、PR液の交換は慣れた?」

 

『胃瘻の人ってこんな事してるんだなって言う感想ですかね……』

 

反応炉への接続は義体のメンテナンスも兼ねている。四肢を取り外して摩耗のし過ぎが無いかを確認し、PR液を交換する

この際、ESP能力者である社霞が東雲の頭の中を覗き、必要な情報を抜き出して書き出す。二度手間ではあるものの、東雲自身は一般人故に情報の重要性が分からない為にこのような事を行っている

 

「そうか。ならせめて死体をしっかり保管しておいて欲しいが……BETA程では無くとも、せめて首から上だけでも」

 

「国連軍がやるそうよ。それだけ地位が欲しいんでしょうね。脳に異常が無い死体ならお金を出して買い取るって」

 

「なら良かった。オリジナルハイヴをどうにかする為には数が必要だからな」

 

『私みたいなのが増えるって話ですか?』

 

「アンタは特別。他は戦術機とかATが精々じゃないかしら」

 

最初に目覚めたのが自分で良かった。東雲は胸を撫で下ろすような感覚に陥るも、それは結局の所、死んだ人達に再度死ねと言うような物だと考え直す

自分がそうだったら?自分がその立場だったら?死んだと思ったら起こされて、殺して殺されてこいなんて───BETAと、何が違うのだろう?

 

「良い?東雲。私達は奴等と違うの。違うからこそ私達は戦争をしているのよ。自分達の未来に希望を託して、次世代を繋いでいく。作業機械なんかである奴等とは、根本から違うわ」

 

不安を見抜くように香月博士が声をかけてきた。そうだ、別にそれを延々と続ける訳じゃない。地球から奴等が居なくなれば終わる話だ

 

彼女は敢えてその先を考えなかった。どうなるか分かっているから。せめて自分は特別なままでありたいと言う願望が考えさせず、同時に、今考えても何ら意味の無い事だと理解したからである




明日の為に死ぬか 今日の為に死ぬか 昨日の為に死ぬか
どれも変わらぬ 死ぬと言う事は終わりである
もし死が終わりで無いのなら 人は一体どこまで行くのだろう
BETAよりも欲深い 人の業の行き着く先は

次回 マブラヴ〜鉄のララバイ〜

増産

天国であろうと 業は飲み込めぬ
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