マブラヴ〜鉄のララバイ〜   作:rezeaizen

47 / 138
戦況報告……
大隊規模の戦術機及びATの増援により、各戦線は優位な状態を維持している
1部戦線ではモニュメントへと接近出来る程に押し込んでいる程に優勢ではあるものの、薄氷の上の勝利である事に変わりは無い
急ぎライジング・サンを完遂される事が待たれる


オリジナルハイヴ 2

「ジョン・ドゥの武装案、か」

 

「ええ。義父上ならどうするかを聞きたくて」

 

ジョン・ドゥによる訓練が終わり、本社襲撃後、何かを背負った義理の息子にそう聞かれて少しばかり頭を捻る

ジョン・ドゥの素晴らしい点は機動性と膂力だ。接近さえしてしまえば、既存の戦術機はその膂力で引きちぎる事が出来る

BETA相手にもそれは生かされており、突撃級だろうと押し返す事が可能なその膂力は、言うなれば持て余していると言っても過言では無い

増加装甲、爆発反応装甲、追加武装……様々な物が頭の中を過ぎり、過去、欧州戦線にて存在したある物を思い出す

GAU-8。第1世代の戦術機 A10 サンダーボルトⅡに搭載されていた、密集隊形のBETAを殲滅する為の装備

あの頃は跳躍装置や戦術機の性能自体が低く、正面射撃をしながら翔ぶと言う事が不可能であった

だが、このジョン・ドゥならば出来るのでは無いだろうか?突撃級であろうとものともしないこの化け物のような機体なら

 

「……ハイヴ攻略の為の横坑内なら確かに素晴らしいですね…ありがとうございます、調達します」

 

サラサラとメモ用紙に書き込む義理の息子を見つつ、何処か鬼気迫るその表情を見れば、言わずとも分かると言うものだろう

少なくとも、それだけの付き合いをしてきた自負はある

 

「……近く、あるのか?」

 

「…………はい。今年中にオリジナルハイヴを落とします。義父上率いるジョン・ドゥ部隊を全員国連軍へと捩じ込んで、攻略作戦に参加させます」

 

声は震えていた。何があろうと、自分がどうにか出来る事なら笑って済ませていた男の声が、だ

自分の一言で何百、否、何千と死ぬと言う重圧に何とか耐えている男に、隠居老人は立派になったと笑っていた

 

「ほほう、余生を楽しくと考えていたが、よもやそんな花道まで用意してくれるとは!!良い娘婿を持った」

 

「……義父上、もし望むのでしたら───」

 

「ならぬ」

 

優しいこの男の事だ、この隠居老人の事を外す、と言い出すだろう。だが、それはダメだ

誰にせよ戦う場所と言う物がある。この男───優しくて凡人らしく振舞っていた義理の息子(鈴木 重信)には、どうやらこの老いぼれの命は相当重いらしい

 

「外すような事をしたら、儂は腹を切るぞ」

 

「───分かりました。無粋な事を言いました、お忘れ下さい」

 

そうか、これが走馬灯と言う物か。だが生憎まだ死ぬには早いと言われているのだ

もう少しだけ付き合って貰うぞ、この身体が燃え尽きるまでな

 

─────────────────────

 

『隊長!!無事ですか!!!?返事してください!!』

 

耳に響く無線の音。つい先程突撃級の突進を止めはしたものの、壁に挟まった事を思い出す

機体のアラートは出ていない。やはりこの機体は優秀であるらしく、既に息絶えている突撃級を押し出して、武装を確認する

無線から流れる若造の耳障りな声を聞きつつ、大きく深呼吸をして───

 

「阿呆!!儂がやられたらどうするかなどしっかり教え込んだだろう!!!貴様まだ甘ったれるか!!!」

 

『うっるさ!!やっぱり生きてましたね!!!』

 

両肩のガトリングは残弾たっぷり。数百メートル先に見える凄乃皇四型を捉えては、長時間気絶していた訳では無いことを確認する

ほんの数十秒程度の気絶だろうか、頭を振り、未だ眼前に迫るBETAに砲身を向けた

 

横坑内において、母艦級から溢れ出したBETAを相手取るに際し、このGAU-8は素晴らしい程の殲滅力を見せつけてくれた

突撃級に対してはほぼ無力であるものの、ジョン・ドゥ特有の膂力はこの大型ガトリングを両肩に抱えても尚余力があった

故に、未確認大型種(母艦級)からBETAが出てこようとも、慌てる事は無かった

皆冷静であった。だからこそ対処も早かったのだが、この殲滅力をもってしても対処する事が難しかった

見かねたように凄乃皇が超電磁砲(レールガン)で薙ぎ払う様は見ていて素晴らしい物であったが、未だ行程の最初である事は念頭におかねばならず、自らの不甲斐無さに恥じるばかりであった

 

だとしても。この機体を寄越した息子に恥をかかせる訳にはいかない

この機体は第3世代に匹敵する程の力を持っている。例えこれを開発したのが不本意だったとしても、泥を塗る必要は無いし、泥を塗っていい理由にもならない

何よりも───

 

「儂が己を許せぬわぁ!!!!」

 

要塞級を真っ二つに切り裂いて、ジョン・ドゥ此処に有りと示す。息子の行く道にこんな物を残しておけるものか

神経が悲鳴を上げるのを聴きながら、ようやく行程の1割を消化した事を示す音声が 疲れきった耳に入っていた

 

重頭脳級まで 残行程9割

 

─────────────────────

 

「待ってるしか出来ないってのも、やっぱり嫌なものね」

 

「……事ここに至れば、俺達に出来る事は何も無い」

 

天才2人が、晴れ渡った空を見上げている。最早彼等に出来るのは祈る事だけである

もしこれが失敗したら。残っているのは12億にまで回復した人類とBETAの物量戦だけである

地球の資源とて無限にある訳では無い。そうなれば待っているのは、勝利したとてこの星を放棄せざるを得ない状況だ

 

「勝つわよ、必ず。何せまりもの育てた子達だもん」

 

珍しく無責任に彼女は言い放った。その言葉に希望を託すように




戦わなければ生き残れず 戦い続ければ人で無くなる
明日を取り戻す為に 今日戦わねば生き残れない
例えそれが 地獄の様な明日でも
希望を見出す為の戦いを 我々は目撃する

次回 マブラヴ〜鉄のララバイ〜

オリジナルハイヴ 3

人よ 戦い続けろ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。