マブラヴ〜鉄のララバイ〜   作:rezeaizen

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ATは銃後の神様でもある───コレは当時の銃後作業を行っていた人達が言っていた言葉です
BETAが地球上に飛来してからと言うもの、生体義肢は飛躍的な発展を遂げました。ですが残念なことに、BETAとの直接戦闘において歩兵の死亡率はほぼ100%、歩兵には基本的に生体義肢は施されませんでした
ATの出現後、死亡率は68%にまで減少。量産化以後は61%にまで減り、負傷した男女達が生体義肢を携えて銃後に戻ってくる事は、当時の大切な人達を待つ家族や友人知人恋人にとって、神様でしかなかったのでしょう

─── AT博物館 歩兵死亡率の減少の項目より抜粋 ───


重慶攻防戦2

光線級が現れ、人類の制空権が無くなって以来、活躍の場も無く解体されるのを待っていたヘリの武装は、ATの武装に転換する事が技術的に可能なのでは、と言う意見が上がり始めていた

これは帝国軍開発局独自の見解であると同時に、倉庫で眠るだけの武装をどうにかしたい帝国軍資材課の希望的観測であり、少しでも大陸派遣軍への予算を削減したい大蔵省の意見と言う側面も存在していて、三者の折衷案として試験的に運用をされる運びとなった

 

開発者である鈴木氏はやってみねば分からないが恐らくは可能、と判を押す形になり、何度かの試験を終えた後、帝国軍は在庫処分を兼ねて試作特殊戦術機大隊にヘリの武装ほぼ全てを押し付けた

試験ではそれなりの成果を出した70mmロケットは中国で戦うスコープドッグに急遽取り付けられ、間引きと言う戦地においても期待以上の働きをしたと言っても過言では無く、これにより帝国軍上層部は在庫処分を開始する事となる

 

結論から言えば、この間引き作戦はAT、機甲科、歩兵部隊の連携作戦となり、大成功と言っていい程の戦果を挙げた

今まで救助してきた中華統一戦線の兵士及び士官が、書類上は存在している中抜き品を使って、上層部に無断で援護を行ってくれたのである

無論、彼等は罰されるだろう。もしかしたら強襲偵察任務が与えられるかもしれない。それでも彼等は受けた恩を返す為だけに戦ってくれた。彼等には頭を下げて礼を述べる事しか出来ない

 

「火が、火が!!!!」

 

だからと言って、味方に犠牲が無い訳では無い。スコープドッグに使われているポリマーリンゲル液は揮発性が高く、引火しやすい。もっと言うなら、味方の砲撃によって装甲に穴が開く事が1番怖いとも言えるだろう

装甲に穴が開いた事に気付かずヘビィマシンガンやロケット弾を使えば即座に引火、爆発する。穴が開く事はそうそう無いとしても、焼かれる恐怖は無線を通じて伝わってくる

 

ATパイロット300名の内、無事帰還98名 機体損傷115名 引火爆発37名 戦死50名

 

2個師団を相手にして、砲兵と機甲科の支援があった事を差し引いても、この戦果は大手を振って喜んで良い結果であった

この戦果をもって、帝国軍は重慶戦線に本格的にATを送り込む事を決定した。鈴木重工は増産計画を前倒し、24時間稼働を実施。日に120機のATを量産しはじめ、鈴木重工はこの時躍進を遂げた

最終的には帝国軍から30万機ものスコープドッグが発注され、ATの活躍により、1年で陥落すると言われていた重慶戦線は更に半年の猶予を得た

 

─────────────────────

 

『さっさと来やがれスコタコ野郎!!!!』

 

『そっちにもスコタコは居るだろうが!!!!こっちのを呼ぶんじゃねえ!!』

 

帝国軍から貸与と言う形で次々と補充されるスコープドッグは各国軍の最前線へと即座に送られる

貸与の条件はただ1つ

 

『BETAの死骸と血液を帝国へ送り届ける事』

 

ATの要であるマッスルシリンダーの原料はBETAの筋組織であり、ポリマーリンゲル液はBETAの血液から精製される

ATを更に量産する為に必要不可欠なそれらを確保する術を現在の帝国は持っておらず、この条件はATの要とも言える物だった

 

逐次搬入されるスコープドッグは帝国軍によって港から搬入、各国軍への割り振りの為に集積所へと集められ、先の戦闘を生き残ったパイロット達から講習を受け、トレーラーによって運ばれ各国軍へと貸与される

トレーラーは搬入後にBETAを満載して港へと戻り、洗浄後に再度スコープドッグを乗せる

また、先日のAT及び機甲歩兵科の殲滅戦の戦果を鑑みて、各国から武装ヘリ用の各種武装が送られてきているが、それらも集積所に1度保管され、現地改修によって取り付けられる為、工兵や整備兵に整備マニュアルが配られ、前線での仕事が大幅に増える結果となった

 

数が増えればトラブルも増える。衛士になれなかった元訓練生を最優先に講習を行い、講習終了後に陣地へと移送する部隊に合流させる手筈なのだが、講習終了後そのままATに乗って自軍へと帰ろうとする者が後を絶たない

帝国軍補給士官に賄賂を握らせ運搬トレーラーごと自軍陣地へと持ち帰ろうとする者まで現れ、帝国軍がわざわざ各国軍に対して規律の引き締めを要請する結果にまでなった

 

問題は更に存在する。各国軍陣地に送ったは良いものの、賄賂によって割り当てられたスコタコ(スコープドッグの愛称として兵士達によってつけられた)を更に貸与すると言う事態まで発生しており、BETAを前にして無用なトラブルを持ち込む結果となってしまった

仮にBETAが人間のような戦略眼を持っていたとしたら、必ずこの時に攻め込んでくる。トラブルに対応していた士官も佐官も必ず口に出していたと言う程のトラブル続きであり、如何に混乱が続いたかを現しているだろう

 

それでも、トラブル続き以上にスコタコは便利であった。塹壕掘り、地雷設置、補給物資運搬、牽引砲及び野砲等陣地転換、現地整備クレーンの代わり、はぐれBETAの殲滅、戦術機では出来ない痒い所に手が届く万能機

最早誰も手放せなかった。帝国軍ですら手放せなくなっていた傑作機は、更なる活躍を期待された

 

1993年 8月28日

BETAの大規模侵攻が発生。推定50万に及ぶBETA群が確認され、各国軍との戦闘を開始

戦術機とATの連携訓練をしていた各国軍は獅子奮迅の活躍を見せるも、増援として現れた母艦級によって戦線は崩壊

ここに、重慶防衛戦は幕を下ろす結果となる




戦地において戦地にあらず。地獄において地獄にあらず
一時の休息すら許されぬこの戦争に、明けを見るのはいつになる
地を這う我等に安らぎを なれど地獄は迫り来る
安息よ、せめて果てた者達にこそあってくれ

次回 マブラヴ〜鉄のララバイ〜

混乱

人よ、足掻く事こそ本能か
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