マブラヴ〜鉄のララバイ〜   作:rezeaizen

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シベリア。永久凍土。BETA侵略による気候変動によって大量の雪が降るようになった永久凍土は、その性質故にBETAの侵攻も遅く、ハイヴの建設も遅くなっていました
オリジナルハイヴが攻略された後、ソ連軍は単独による東シベリア奪還作戦を開始しました
しかしこれは難航します。戦術機は電気で動きますから、極寒の寒さに長時間晒されれば電圧は低下
作戦行動時間は大幅に低下し、いくら数を積めると言えど、その間に接敵すれば無防備な他ありません
この時最も活躍したのがATであり、今でも除雪車代わりに利用される、スコープドッグ雪上戦仕様がこの時初めて投入されました

─── AT博物館 雪上戦仕様より抜粋 ───


東シベリア 奪還作戦

2001年10月 28日

 

「雪上戦仕様、ですか」

 

「はい。今回の作戦ではそちらから卸された大量のスコープドッグを使います。ですが超重光線級のレーザー照射及び気候変動、大気中に舞った粉塵によって気温が低下。東シベリアでは現在、平均積雪10m及び気温マイナス50度を記録しています」

 

書類に纏められた情報を読み上げながら、今や鈴木重信専用の受付窓口となった高官は、個人的な親交を深める程の仲になっていた

 

かく言うのも。律儀に2ヶ月に1回はやってきては、納入数の間違いや整備上の問題が無いかを整備班に紛れてチェックしに来る程の現場馬鹿であり、アラスカ内の工場にまで作業員に紛れて顔を出し、不備や手抜きが無いかを確認するのだ

 

上が率先して働くのだから、下も働かざるを得ない。高官にはその姿が眩しく、同時に重信氏の事をもっと知りたいと思ってしまい、個人的な親交を深めてしまっている

……余談だが、重信自身は旅行ついでに見回っているだけである

 

「……改めて聞くと凄いですね。BETA側もろくに動けないのですから、戦力の回復に務めては?」

 

「そうも行かないのです。ライジングサンの支援の折に新たなBETA種が発見されました。このBETAの一撃で我々は投入戦力の40%を失う大打撃を受けました……ですので、コレが再度現れる前に我々はハイヴを潰さねばならないのです」

 

「成程……」

 

戦力の4割が無くなった。だがそれは大量のスコタコとボトムズ(パイロット)を除いて、だ

ESP能力者の交易によって手に入れた大量のスコタコを使用して師団編成が成され、訓練が始まったのが10月初頭。訓練不足とPR液の貯蔵不足、製造施設のメンテナンスまで重なった為、黎明作戦には参加不可能と判断された

そして、これが功を奏した。投入戦力の4割が失われはしたものの、戦術機に代わる機甲科戦力としてスコタコを温存する結果となり、再度シベリアの土地を踏む機会が巡ってきているのだ

だからこそ、上層部も軍部もスコタコの雪上戦仕様を欲しがっている

 

「……分かりました。ですがこのアタッチメントは高くなりますよ?」

 

「それも折り込み済みですからご安心を」

 

固く握手の交わした手は、アラスカの気候によってすっかり乾燥しきっていた

 

─────────────────────

 

2001年 11月15日

ソ連が東シベリア奪還作戦を開始。ライジング・サンの支援目的として発動した黎明作戦の際に超重光線級を撃滅せしめた事から、ソ連上層部はBETA側に再度生産させるような回復の時間を与える事を嫌った

ソ連軍は自軍の回復を後回しにし、東シベリア奪還作戦を発動。国連軍と共に再度東シベリアへと足を踏み入れた

 

東シベリア奪還作戦 橋頭堡として砕氷船が投入された後、砕氷船を起点としたスコープドッグ雪上戦仕様が発進。総数500を越えるATが投入される

これすら第1陣である。雪上戦仕様のアタッチメントが未だ全機分届いていない為に投入されただけであり、後詰めは何万機と言える数が待機している

更には、BETAには不可能な走破能力。時速40kmで常時走破していくスコタコに、雪に足を取られて動きの遅くなる戦車級も、降り積もった雪によって自重を支えるのが精一杯な要撃級も、雪を圧縮してしまって動けなくなる突撃級も、全てが30mmの餌となった

 

深夜に至るまで徹底的に掃討は行われ、橋頭堡は確保された。兵士達には交互の休息が与えられたものの、多くのボトムズがスコタコから降りて来ない事が問題視された

何故か?と聞かれれば、この凍てつく寒さの中、この中だけはヒーターがよく効いているからである

正確には砕氷船内も暖房は効いている……のだが、人の出入りや窓からの隙間風、更には暖房の観点から個室も無い雑魚寝のせいで物の盗難は当たり前、なんならそこでおっぱじめる馬鹿まで現れる始末

 

詰まる所、このスコタコの中だけはプライバシーが確保されていると言う訳だ

残念ながら戦闘後のメンテナンスや食事、シャワーと言った事柄だけはスコタコの外から出るしか無く、それすらも嫌がるボトムズは整備班によって引きずり出され、しょぼくれながら不味い食事にありつく事となる

 

─────────────────────

 

「おら降りろ!!整備の時間だ!!!」

 

「止めろ!!止めてくれ!!!寒い!!!雑魚寝なんてしたくない!!!同志!!頼む!!!」

 

すっかり艦内名物となった整備班によるスコタコ整備の為の引きずり下ろし。この船の中で艦長以外に権力を持つとしたら、きっと彼らだ

彼等は鈴木重工にて研修と実地整備も行ってきた猛者である。スコタコなら5分でバラすと(のたま)う彼等も、この整備点検の時間は修羅場と言えるだろう

みるみるうちにスコタコがバラされ、整備点検が開始される。マッスルシリンダーの点検、外装の点検、ポンプやカメラアイの点検……傍から見ているだけでも辟易する

 

「よう同志。紅茶か?ウォッカは?」

 

「やあ同志。ウォッカは在庫切れだ、雑魚寝大丈夫な同志が全部持っていったよ」

 

「ハハハ!!幸先が良いから当たり前か!!」

 

バシバシと肩を叩かれる。アルコールの匂いはしない為、どうやら素面でこんなにもテンションが高いらしい

かく言う自分だって食堂で開かれているあの宴会から逃げてきたと言うのに、何故こんなにも元気でハイテンションなのだろうか?

…………KGBか!!

 

「確か同志の故郷はこの近くだろう?まだ家屋はあるんじゃないのか?」

 

「掃討任務ついでにそう言うのが無いかを見て回ったけど、全部雪の下だよ。ここら辺は積雪量が少ないのは本当か?ここから先は更に積もってるのか?」

 

「らしいぞ?なんでも20mはあるとか」

 

「戦術機が動けなくなる訳だ……」

 

大きく笑いながら同志が離れていく。特に問題の無いやり取りだとは思うが、大丈夫だろうか。頭の中に粛清の二文字が過ぎるもその考えを振り払い、すっかり冷めてしまった紅茶を流し込んだ




かつての喧騒も かつての名残も かつての記憶も
全てが雪に埋もれ 掘り出す事は叶わない
永久凍土に残された物は 果たして希望か 絶望か
例えそうだとしても 最早人類にあるのは希望だけである

次回 マブラヴ〜鉄のララバイ〜

東シベリア 奪還作戦 2

奴等には 凍えることすら許さない

香月博士の恋は……

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