マブラヴ〜鉄のララバイ〜   作:rezeaizen

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あまり表立って話す事は出来ませんが、重信氏はご乱心……その、面白そうな企画を良く通しては、経営チームに怒られていました
ですがオホーツクの時であったり、ご乱心企画が馬鹿みたいにヒットしたりする為に、経営チームもあまり強く怒れず、そのご乱心を見届ける他無かったと言われています

─── AT博物館 重信氏のご乱心より抜粋 ───


ご乱心

ストレスが溜まっていた

 

理由は分かっている。ここ最近は忙しすぎてATを触る事も、製図する事も、ゲーム談義に華を咲かせる事も、帰るのが遅くなって子供達と遊べない事も含め、全てが原因なのだと

当たり前だが、自分はとてつもなく忙しい身である。分かっている。今までのように自由奔放にする事なんて出来ないのだと言う事は理解している

 

あまり酒も飲まないのも、タバコを吸わない事も、ストレスが溜まる原因だろう。深酒すると翌日に響くのもあるが、晩酌をすると義父や義兄がやってきて話を聞かせろと五月蝿いのだ

鈴木重工襲撃以後、九條家だけでなく他五摂家とも接近してしまった為、酒を飲むならそう言う面子を呼んで……となるのも嫌だ

暴食?そんな事したら皆に迷惑かけるだろいい加減にしろ!!!

 

まあつまる所だ、今このプレゼン場所は俺のストレス発散の場であるのだ

別に社員にパワハラをする訳じゃないしするつもりも無い。そんな事したらこんな所まで持ってくる優秀な社員が辞めちゃうだろ!!!

試作製品の中で面白そうなのがあればソレが必要だとか必要じゃないとか関係無く採用させたりするのだが……

 

「そうです。ソ連のカチューシャを基に、スコープドッグにもっと面制圧力を持たせるんです。AT同士でロケット弾のリロードまで出来るようにして、光線級に対して脅威となるように……」

 

「ソ連も現在コチラから放出したスタンディングタートルでカチューシャを運用しているのだから、一考の価値はありますよ」

 

「だがそれなら現行の対戦車ロケットでも……」

 

うん。皆優秀だから俺が出る幕がねえんだわ

いやー我が社は安泰だな。現場のボトムズ3人も引っ張って来てるのが良い。現状の使い勝手とかも聞けるだろうし、何より不満点も聞ける

 

「社長、どうでしょうか?両肩が埋まりますが、こちらのスコープドッグ用カチューシャは?」

 

「ん?良いんじゃないかな……亜大陸のDデイの時のスタンディングトータスで問題になったのは、ミサイル発射機のリロードのしにくさもあったし……スコープドッグで撃てて面制圧力を更に拡大する、て事ならアリだと思うよ」

 

何より作るのもコレだと安いし。なんて言葉を飲み込んで、企画を持ってきた社員が深々と頭を下げる

皆俺の事神聖視し過ぎなんだよ……俺1人で何でも出来る訳じゃ無いんだよ……ボトムズの人の話も聞いてる限り好感触なんだからもっと採用してあげて……

嫌だよね、俺の一言で為替まで動くのって。ホントに勘弁してほしい

 

「次は……ATのプラスチックモデル?」

 

「!!!!!!!!!!!」

 

こう言うのを待っていた。俺が発案すれば通るだろうけど俺発案じゃ意味が無いような物

経営チームの1人がこちらの反応を見て溜め息をついた。悪かったって給糧艦なんて通させて。でも役に立ったろ?

 

「「失礼します」」

 

2人の社員が入ってきた。1人は資料とプラモを配り、1人は緊張した面持ちで、プレゼン用紙を握っている

本来ならEIKO辺りでやらせる様な話である。モックアップから着想を得て金型を作り、試作品として出して来たらしい。成型色はアーミーグリーン一色だし、接着剤も使ってるし、ターレットレンズは回らないし、パーツだって変に大きい

だがそれが良い。人間と言うのは1があれば10も100も創れる奴が居る。これはその1だ

 

「ウチじゃなくてEIKOでやれば良いんじゃないかな……」

 

「作りは雑ですが、きちんとスコープドッグになってます。戦術機も作れるようにしたら売れるんじゃないですか?」

 

「アメリカだと木で作るのがあったような気がする、木工細工じゃダメなのか?」

 

「関節動かないのがネックだなぁ……」

 

プレゼンを聞き終え、全員がプラモデルを触る。さっきから思ってるけどほんと優秀だな皆。笑ったりしない辺りに本気度が伝わってくる

さっきこっちを見て溜め息をついていた1人がチラチラとこちらを見ている。その眼差しは止めてくれと言わんばかりであるが、今の俺はご乱心状態、すまんな、また涙を飲んでくれ

鞄をゴソゴソと漁り、判子を取り出す。通称ご乱心印と呼ばれるコレは、以前の給糧艦の時に発注して作らせた物だ

朱肉をつけ、判子を押す。その音を隣で聞いた経営チームの1人は頭を抱えた

 

「通した。後でゲーム開発室に来るように」

 

───これが後の日本の娯楽産業を支える商品になるとは、この時、3人を除いて誰も考えていなかった

 

2001年 12月10日

突如として鈴木重工ご乱心製品としてプラモデルの発売が決定。お値段1つ1000円

発売日は12月24日。現代から見れば精巧な出来とは程遠く、関節も動かず、色もアーミーグリーン一色であり、武器も黒一色であるソレは、本来子供だけをターゲットとした物の筈であった

しかし、このターゲット層は大きく外れる事となる。子供に買ってきた父親達が子供と一緒に作ったりしてどハマりしたのだ

 

プラモデルに付属していた御意見葉書には子供よりも大人の意見の方が多く届き、更なる商品展開を望む声が多々上がる事となる

御意見葉書を送るとお礼品として届くスコープドッグボブルヘッドは、道行くマッスルシリンダー車全てに乗っていると言われる程に普及し、社会現象にまでなった

 

更には、鈴木重工の協力会社であるマクダエル社がこのプラモデルを見て感銘を受け、F15のプラモデルキット化を要望。それを受けて鈴木重工プラモデル課が全力を出してF15をプラモデルキット化、値段は1万円になるものの、ネジだけで組み立てられ、関節全稼働、ポージングまでさせやすいプラモデルを発売

あまりの完成度に国内だけに留まらず、米国にまで密輸入され、日本からの密輸品一覧として報道される程の代物となった




Q.あの、間宮とか伊良湖に乗ってた人がやけに口が上手いんですが

A.HAHAHA、まさかまさか。ただ雑談が上手いだけですよ。ええ本当に。決して情報を聞き出そうとかしてませんから
イイネ?

Q.ヴェルホヤンスクハイヴって本当に死んだんですか?

A.はい、死にました。最後の一機となったATとジョン・ドゥが頭脳級に突っ込み、大爆発を起こして頭脳級は吹き飛んで死にました
最後の一服は間宮で買った煙草でした
永久凍土であり、解体も難しい事からモニュメントは現在も残っており、世界でほぼ唯一の無傷モニュメントとして、BETAが存在したと言う事実の裏付けを行っています
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