鈴木重工も全くと言っていい程の無関心を貫き、流れ流れてATはインド亜大陸戦線へと運ばれる形になったのです
─── AT博物館 インド亜大陸戦線への展開理由 ───
1993年 1月 嘉陵江戦線に敦煌ハイヴから出現したBETA群が接近 大陸派遣軍及び各国軍AT部隊が対応 各国軍及び難民が撤退完了と同時に撤退し、嘉陵江防衛戦線は破棄された
1993年 2月 重慶ハイヴ建設開始 戦術機、AT、機甲科の連携によって間引きは成功を収め、遅延に成功
1993年 4月 AT、大陸への輸出数が20万を越える。インド亜大陸戦線へは向かわせて居ない筈がこの頃からインド亜大陸にてATが目撃される
1993年 6月 重慶市において地震が頻発するようになる。この頃欧州戦線が崩壊、BETAが欧州大陸を手中に収める
ローテーションでの間引きを行い続け、重慶ハイヴ建設遅延及び敦煌ハイヴから来たBETAの排除を続ける
各国より集められた武装ヘリ用の武装がATへの標準装備へと変わりはじめる
1993年 8月28日 重慶ハイヴ間引き作戦中に推定震度5弱クラスの地震が発生。未確認BETAが地中より出現。中華統一戦線の背後へと現れ、多数のBETAを口内と思われる器官から放出。統一戦線軍壊滅により戦線崩壊。大陸派遣軍二個大隊及び韓国軍二個大隊にて殿を務めるも正午には壊滅した
同日午後 BETAの狙いが大連にあると確信した中華統一戦線は戦術核を使用して遅滞戦術を行う
重慶防衛戦線はこの時をもって崩壊を宣言された
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身体中の痛みと甲高い音で目が覚める。気絶していたのか、それとも既に死んでいるのか、最早どちらでもいい程に身体が怠い
この音には聞き覚えがある。スコタコのローラーダッシュの音だ。足元をチョロチョロと走り回りながら戦車級を次々と屠っていく、歩兵の神様
意識が段々とはっきりしてくる。そうだ、俺は衛士で、要撃級にコクピットの少し上を抉られ、その衝撃で気絶したんだ
「目が覚めたな、意識はハッキリしてるか?よし、良かったなぁ衛士君、近くにスコタコが居なかったら死んでたんだぞ」
医師からの問診に答え、身体を起こして周囲を見回す。前を走るスコタコが腰にワイヤーを回し、トレーラーの荷台部分を使って怪我人や難民を運んでいるのだ
運が良いと言うのは、集結地点に向かう途中なのだと言う。もうすぐ戦術核が重慶に使われる為、急いで避難している最中に運ばれてきたのだ、と
「……そうだ、未確認BETA!!!あの報告をしないと!!!」
「今は無理だよ衛士君。ほら、見たまえ」
医師が指差すのを見ると同時に、衝撃が身体に伝わる。随分と離れていても伝わってくるこの衝撃は、日本で散々見てきた物だった
キノコ雲。核の使われた今では通信は使えず、仮に使えたとしても、回線はいっぱいだろう
「大人しく座ってるんだね。なぁに、そう慌てんでもすぐに着くさ」
そう言って他の怪我人を見に行く医師の背中を見送り、親しみ始めていたあの街並みを思い出し、少しばかりの郷愁にふけることしか出来なかった
─── そして、この郷愁を最期に、自分達は地獄へと踏み出した ───
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8月29日 AM08:00 第1集結地点
歩兵……推定20万人
戦車……推定3000両
自走砲……推定200門
戦術機……推定500機
AT……推定2000機
難民……多数の為不明
8月30日
目録上存在する筈のPR液が一切保管されて居らず、戦術機の推進剤も戦車や自走砲等の各種燃料弾薬も半分以上が存在していなかった為、半数以上が補給無しでの戦闘継続となる
BETAの再度侵攻を確認。難民を後方へと向かわせながら撤退戦を行う。補給不足の為ATのPR液切れ及び戦術機の推進剤切れが多発。備え付けの戦術核を使用して侵攻を阻止
8月31日 AM08:00 第2集結地点 宣昌市
歩兵……推定15万人
戦車……推定2500両
自走砲……150門
戦術機……300機
AT……1005機
難民……多数の為不明
9月1日〜9月3日
目録上存在する筈の補給物資の大半が存在しなかった。管理を行っていた中華統一戦線高官は既に大連へと避難済
難民からも整備等が出来るものを掻き集め、出来るだけの整備を行い、共食い整備も行う
離散した各国軍及び中華統一戦線の集結を待ち、出来る限りの戦力増強を図る
9月4日
BETAの大規模侵攻確認。集結地点に保管されている筈の戦術核を使用する為保管庫を開けた所戦術核が存在しなかった為、全戦力をもってBETA侵攻への対応に当たり、撤退戦を敢行
多数の犠牲を出しながらも第3集結地点へと撤退
9月5日 AM08:00 第3集結地点 武漢市
歩兵……推定2万人
戦車……51両
自走砲……86門
戦術機……81機
AT……53機
難民……推定10万人
帝国大陸派遣軍後続部隊、韓国軍後続部隊、中華統一戦線後続部隊と合流。以後大連市へと向かう
大連市への移動は海上輸送を使用。海上輸送の最中に航路を日本へと向けようとする暴動が発生。輸送船1隻、難民511名、歩兵272名、AT10機、戦術機2機、人質となった衛士10名を失う
暴徒となった難民がATを起動操縦し、鎮圧に当たった大陸派遣軍兵が狙撃にてコクピットハッチの閉め方が分からなかった暴徒を射殺
暴徒は死亡したもののATが暴走、他ATを巻き込んで転倒し発火、爆発を起こした
皮肉な話ではあるがこれがATの操縦性の良さを示す事となり、ATの更なる発注と、鉄の棺桶としての運用が段々と定着し始める事となる
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重慶防衛戦線の生き残りである俺達が大連に着いた時には、中華統一戦線、韓国軍、帝国大陸派遣軍による合同作戦が間近だった
海上輸送でやってきた俺達を出迎えたのは新たな戦場であり、船の中で休んだだろうと言われた俺達は、即座に自分の機体へと押し込まれ、帝国大陸派遣軍へと編入され、ブリーフィングを受ける
中華統一戦線及び韓国軍の防衛戦線に食い込むBETAの横っ腹を突く、至ってシンプルな作戦だ。側面支援と呼んだ方が良いだろうか。だがこの作戦が成功するとはどうにも思えなかった
心配は他にもあった。横っ腹を突くと言えどあの未確認BETAがまた現れるのでは無いかと言う不安が頭の中にあったからだ
無論、この報告をしなかった訳では無い。だが司令部は空返事を返して作戦に集中しろと言うだけだった
大連にアレが来るかもしれない。そう考えるだけで、あの戦場に居た者達は震えが止まらなかった
「重慶の生き残り、ですよね?」
茶髪の女性から声をかけられる。衛士らしく、身に纏っているパイロットスーツから帝国軍の所属であるらしい事は推測できる
そうだが、と返事を返すと彼女は敬礼してきた
戦術機乗りであるならば少なくとも彼女は士官だろう。だが彼女は敬意を持ってコチラに敬礼したのだと理解すれば、即座に敬礼を返す
「ブレード中隊所属、ブレード1、神宮司まりも少尉です。お会いできて光栄です、准尉」
「試作戦術機大隊所属、ウッド2、如月准尉であります、神宮司少尉」
「如月准尉、お疲れ様でした。連戦になりますが、この作戦成功させましょう」
敬礼を終えて去っていくその背中を見ながら、神宮司少尉が初陣である事を確信する。生き残れる事を信じきっている目だ。死ぬかどうか、あの兵舎の中に居た連中なら賭けを始めていた事だろう
そんな軽口を叩きあえる連中はもう居ない。俺は本国から送られてきたスコープドッグの調子を見る為に格納庫へと足を運んでいた
諸行無常 万物流転 盛者必衰
地球の主は人間か、はたまたBETAか
抗う事が
それでもと言い続け 諦めを踏破した先にある物は?
次回 マブラヴ〜鉄のララバイ〜
絶対防衛圏
行く末見るは 神の所業か