戦術機の従来の自動操縦とは違い、まるでエースパイロットが駆る挙動、更には意思疎通まで出来る無人戦闘プログラムは、最早技術的特異点と言っても過言ではありませんでした
オルタネイティヴ4は人類の科学を大きく躍進させた。科学者がそうやって喜ぶ中で、もしこれが対人用に調整されたらと考えた軍人は誰もが震え上がりました
……ですが、それは杞憂に終わりました。そもそもコクピットブロックを丸々付け替えるだけなのに、スコープドッグが3機買える額を出す所は、そう多くは無かったのです
─── AT博物館 無人戦闘プログラム(AI)より抜粋 ───
「───何か釈明は?」
『ありません。奴等が、中東連合が悪いのですよ。我々に譲るときちんと話し合っていた筈なのです。その分の資源の売買もきちんと密約して居たのに……悪いのは中東連合です。どうかこの通りです、マッスルシリンダーの輸出停止は何卒……』
「人聞きが悪いですね、契約分は送りますよ。まあ、4月からの輸出はありませんが」
『契約分の倍、いえ3倍の額を払います。アフリカ縦断鉄道にはマッスルシリンダーが欠かせないのです、何卒……!!』
「安心して下さい。レールさえ作ってくれれば我が社から納入致しますよ。それでは」
『待っ───』
電話を切り、大きく息を吐く。アフリカ連合の1番偉い奴が話したがってると聞いたから取ったのに、奴は謝る事すらしなかった
海外の連中は大抵そうだが、自分が悪いのに謝ると言う事をしない。散々理屈を並べ立てて他に被害を逸らそうとする
「代表、中東連合の代表からお電話が……」
「取り合わんと言っておけ。少なくとも1年は乾いていけ、とな」
「了解しました」
今回1番被害を受けたのは国連軍だ。執拗なまでの追撃、徹底的な排除、もしあの1機が撤退していなかったら、世界はあの情報をそのまま受け取っていただろう
だからこそ腹が立つ。何故一丸となれる時にならないのか。内ゲバの遺伝子でも刻み込まれているのでは無いだろうか
いっそ滅んでしまえと考えるのは自分の考えがおかしいからだろうか。軍の偉いさんも言ってたが、戦後を考えればハイヴを落とした事があると言うのは戦勝国と似たような扱いになるであろう事は想像に難くない
そうなると現在の日本の地位はどうなのだろうか。横浜ハイヴを攻略した事、勝手にG弾を撃たれた事、鈴木重工がある事……ソ連や米国を含めて戦勝国でも3番目くらいだろうか。成程確かにキングメーカーだ
だからこそ、俺はコイツを完成させたかった
『代表、例の件が完成しました』
「分かった、直ぐに行く」
報告を受ければ直ぐに立ち上がり、横浜プラント地下へと向かう。もっと早く作れれば良かったのだが、如何せんデータが足りなかったのだ
苦節5年、ATの完全無人戦闘プログラムが完成したのだ
このプログラムは帝国軍ですら知らない。かつて本土防衛時に駆り出したATにわざとインストールさせたものの、その戦果は微妙……と言うよりは、無いよりはマシ程度の物であった
が、それで研究を諦める結果にはならない。何せ俺の手元には白銀武と言う最高峰のパイロットが居る。東雲と言う最高峰のコンピューターすら協力者だ。と言うか東雲が居なかったら実現しなかった
「クソ!!また負けた!!!!もう1戦!!もう1戦頼む!!!!」
『ミスター白銀、休憩を挟んだ方が良いかと。既に2時間ぶっ続けです』
「えっ、マジ?それなら1回休憩するかあ」
…………何で戦闘プログラムが喋ってるんですか?確かにコミュニケーション取れるといいなぁ、なんて言った事はあるけどさ、あんな流暢に話す必要は無いと思うんだ
と言うかマジかよ、スコタコ同士とは言え白銀武相手に勝つのかあのAI
「東雲がアンタの書いたプロット見てすっごいワクワクしてたわよ。実写でやるんですかとかうるさいったらありゃしない」
「どっかに忘れたと思ったらそっちにあったか……今やってる特撮をもう少しリアルにしたドラマを撮影しようと思ってな、そのプロットだ」
「どっちでも良いけど、そのせいでああなったのよ。機械と人間の相棒って良いですよね、て。東雲の身体のクローンがようやく出来るって言うのに、あの子自分で今の身体改造してるんだから」
うーむ困った。BTとクーパーのやり取りを書き起こしてたのを置き忘れてああなってしまったらしい
1クールで済むドラマかあ、なんて考えて出てきたのがタイ〇ンフォール2だったんだから仕方無い。と言うか下手したらこの世界だってそうなってもおかしくは無い
……いやならねえわ。泥沼のBETAとの戦いが待ってるもん
「で、俺の要望通り、か?」
「そうね、概ねと言った所かしら。白銀クラスの判断力に操縦技術、対BETA戦闘の試験も何回かしたけど素晴らしいの一言に尽きるわ。ATの処理コンピューターを大型に置き換えるから金はかかるけど。……あの技術の方が金もかからないわよ?」
「アレは暫く封印だ、人類の倫理観がもっと育ってからじゃないと……今してるロットで封印する」
「出来るのかしらね。今の状態見てると無理そうだわ」
現在も前線で活躍を続けている当該技術───死者の復活とは違い、この戦闘プログラムならそもそも死者を出さなくなる
コレの良い点は、白銀武と言う最高峰のパイロット相手に勝てる程の力量を持ち、増設した360度ターレットカメラによって背後からの奇襲等にも対応出来、人間が指揮官であればそれに忠実に従うと言う素晴らしい兵器になる事だろう
問題があるとすれば、金がかかる事だ。360度ターレットレンズへの付け替え、スコタコ搭載コンピューターの載せ替えを含めてもう1機スコタコが買える程の額がかかる
それでも何とかなる。人的被害は減る。その考えで推し進めたこの計画は───
「……今更言うのもなんだけど、この戦闘プログラム、戦術機に付けた方が効率良いんじゃないの?」
「……………………」
その一言で泡と消えた。スコタコの利点は誰にでも乗れる事。この戦闘プログラムは言うなればそれと元から相反していたのだ
こうして俺の苦節5年はオルタネイティヴ4の研究成果の1つとなり、この後に続く高性能戦術機自律戦闘プログラムの礎となった
Q.戦艦ニュージャージー君も映画化するんですね、ヤッター!!
A.この戦果を称えてスピルバーグ監督指揮の元また映画が作られました。ですがコレは米国以外に受けが悪かった為か、日本などの国外では隠れた名作となりました
Q.結局中東連合とアフリカ連合はどうなるんですか!?
A.アメリカのゴタゴタが終わればアメリカで裁判が開かれます。既にマッスルシリンダーの輸出停止は決まっていますが……
Q.この中東で石油とか取れるんですか?
A.取れないです。母艦級が3つも居たので飲み尽くされました。なので急いで鈴木重工やアメリカとコンタクトをとったのですが、ご覧の通りです