マブラヴ〜鉄のララバイ〜   作:rezeaizen

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人類の浪漫。人類の夢。揺籃からの脱却
大々的にこのCMが放送された後、皆一様に空を見上げたと言われるそのCMは、国連宇宙軍の協力を得て宇宙空間が映し出されました
無限に続くフロンティア、もしかしたらまだBETAに侵されていない惑星や資源がある筈だ
もう手の届く所まで宇宙は来ている。そう締め括られたCMは、人々の浪漫に、再び火をつけました

─── AT博物館 軌道エレベーターより抜粋 ───


軌道エレベーター

「緊張する……と言うか国家プロジェクトで良いだろこんなの……何で鈴木グループ(ウチ)が主体でやるんだよ…………」

 

「国家がやると角が立ち、他の財閥がやると足を引っ張り合う。最早世界に無くてはならない程に普及させた立役者なのですから、自信を持ってください。ほら、皆様お待ちですよ」

 

大きく深呼吸して、詩織に背中を押して貰う。意気込み、頬を叩き、舞台袖から登壇する

生中継をしているカメラ、数多の人の視線、手元に用意された演説用の台本

息が詰まりそうになるのを何とか(ほぐ)し、台本を閉じて、未だ騒がしい客席を見る

段々と静かになっていき、会場がシンとした静寂に包まれる

怖い。だが言わねばならぬ。それが俺の役目なのだから

 

「───我々人類は、この地球に適応し、発展を続けてきた。特にこの200年の進歩は目覚(めざま)しく、蒸気機関から始まった機械化の波は、世界をあっという間に覆い尽くした

それだけでは無い、人類は太古の昔の遺産である石油を使い、更なる発展を遂げた。それまで命懸けだった海を渡る事も、山を切り開く事も、何日もかけて歩かねばならなかった道も、遥か昔から神の力であると言われた電気の力まで用いて成し遂げて来た

 

それに付随して、人々は争った。争いに争いを重ね、進歩を続けてきたイデオロギー。考え方の違い、信ずる物の違い、貴方と私は違う。この一言で片付く問題を、お互いの正義として掲げ、争った

そうして2度の大戦の後、我々人類は何とか薄氷の上の平和を手にした。互いに互いを理解出来ぬからと言う理由で戦い合う事に我々は疲弊し、消極的ながらも認めあったのだ

それでも、誰かが間違えれば人類は滅ぶ。そう言われていた平和は、奴等によって打ち砕かれた

 

BETA。人類の敵であり、地球上全生物の敵。外宇宙からやって来たそれらは資源を得る為にやって来た

このBETA共によって人類は多大な犠牲を払い、海路、空路、陸路、農業、漁業、鉱山業……何もかもを滅茶苦茶にされ、人類は自らの争いから、奴等への対応にシフトせざるを得なかった

 

あらゆる物が奴等への対応の為に使われ、あらゆる物が失われた。多くの人命が、多くの叡智が、多くの歴史が、多くの伝統が

そして今、奴等に対応する為の原料が失われ始めている。オーストラリアの一部鉱山では鉄鉱石が産出されなくなりはじめており、先日奪還したアンバールでの調査結果は、もう石油は残っていないと言う事実であった

 

我々人類の揺籃である地球が、BETAと人類によって掘り尽くされ、食い尽くされている。最早我々は、地球と言う揺籃から出なければならない時が来てしまった

まだ早いと言う人も居るだろう。他から取れば良いと言う人も居るだろう。だが、それではこの地球が、人類の故郷を自らの手で葬る事になってしまう。我々はBETAでは無いのだ。我々は奴等と違い、分別が出来るのだ

 

───そして鈴木グループは、人類が宇宙と言うフロンティアに向かう為の一助として、軌道エレベーター建設開始をここに宣言する」

 

宣言する、と言ったと同時に、銀幕に映像が流される。それは、オルタネイティヴ5───10万人の人類を運ぶ複数の植民船が、大量のATによって護衛され、牽引されている映像である

これは米国から天文学的数字で植民船を買い取り、牽引しているのを撮影した物である。現在は何隻かを改造して資源採掘用の貨物船にしているが、これでもまだまだ足りないのだから、どれ程人類が鉄資源に依存しているのかが理解出来る

会場からは感嘆の息が漏れ、誰が始めたかも分からぬ拍手で満たされた

思わぬ拍手に気絶しそうな程に緊張しつつ、手で制する。静かになる会場を見ながら、改めて息を整える

 

「鈴木グループは、あらゆる企業、あらゆる国家の枠を超えて軌道エレベーター建設に着手を始めている

衛星軌道上に採掘用の基地を作る事にも着手を始めている。きっと最初は数トン程度の量を運ぶので精一杯だろう

だがそれでも、この1歩は人類の新たなフロンティアへの大きな1歩だと確信している!!!

どうか!!!どうか、この大きな1歩に、皆様のご理解と力添えをお願いしたい!!!我々にはその力が、資格があるのだから!!!これ以上、BETA共をのさばらせない為にも!!!!私に力を貸して頂きたい!!!」

 

大袈裟に頭を下げれば、会場が沸き上がる。練習の甲斐はあったらしい

会場の照明が明るくなり、質疑応答の時間に入った瞬間、あらゆる人から質問が飛んできた。費用対効果は、放射線の影響は、継続して他の軌道エレベーターを作るつもりは、質問を整理しながら対応しつつ、世界に浪漫は必須なのだと改めて理解すると同時に、小型イヤホンから流れてくる技術者達からの返答を脚色して伝えていく

 

「素晴らしい内容でした、感動しました」

 

「いえいえ、そんな事は……」

 

30分喋りっぱなしの質疑応答を終え、終了の合図と共に会場を出ていく人達と握手をし、その際にも質問をされたりしながら寄付箱に入っていく小切手に舌を巻いていると、1人の男に声をかけられた

よーく覚えている。俺に狙われてるから気をつけろよ、と警告してくれたオーストラリアの大使だった人だった

鈴木重工との橋渡し役として上手く機能した事を表彰され、オーストラリア本国に戻ってかなり上の立場になっていると聞いていたが、まさか来てくれるとは思ってもみなかった

 

「お久しぶりです、あのパーティ以来ですね」

 

「あの警告は身に染みましたよ、本当に。今回の件も貴方が居たからスムーズに進められました」

 

「私はあくまで仲介しただけですよ。おっと、私以上に話したい人達ばっかりですし、おいとましますね」

 

俺は色々な人に支えられている。改めて強く握手をして、そんな当たり前の事に感謝をし、すっかり目標額を越えている寄付箱の中身に、俺は更に感嘆の息を漏らすと同時に、責任の重さが肩にのしかかるのを感じていた




Q.今更BETA脅威論が真面目になる米国って頭おかしいのでは?

A.日本も本土侵攻喰らうまでは本気で本腰入れて無かったので、有り得るのかな、と……

Q.今の鈴木グループってどう言う風になってるんですか?

A.鈴木重工(AT、マッスルシリンダー、戦術機、重機etc……)、鈴木商事(煙草の1本から戦術機まで、ATやマッスルシリンダーの注文もここを経由)、EIKO(ゲーム、プラモ、ソフビやらなんやら)、くらいでしょうか。重工が多数の事を担っているので更に細分化されると思いますが

Q.今アメリカって立ち位置どれくらいなんです?

A.ようやくソ連と並ぶくらいです。リヨンハイヴ侵攻が国際的信用度を上げました
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