ではこのような物が身近にある、と言う事に皆様お気付きでしょうか?……そう、無人ATは正に、その人工知能を搭載した、素晴らしい発明品なのです
─── AT博物館 無人ATより抜粋 ───
2月2日 13:00
───フランス 衛星軌道上
《パイロット、背後を取られ続けています。デブリを利用して敵背後を取る事を推奨します》
「分かってるから一々言わなくて良い!!これが本物か……!!」
ロックオンアラートは鳴り止まず、AIによるルート提示を見ながら大きく迂回し、デブリを使って射線を切り、相手の下を取るために急制動をかけて向きを変える
AIもその判断は正しいと考えたのか何も言わず、敵の進路を再計算し───また、背後を取られた
1号機 AI搭載 パイロット
『甘いぞ枢木、宇宙空間は360度動けるんだ。ジャックはジョン・ドゥの正統進化、デブリを使うなら跳躍装置だけで使うんじゃない、手足を使ってしっかり制動するんだ』
完全マニュアルで宇宙空間に簡単に適応する化け物。鈴木重工の最精鋭。XM3の発案者にして立役者
2号機 マニュアル パイロット 白銀武
「クソ!!離れない!!本当にマニュアルなのか!?」
《完全マニュアルです、パイロット。彼の機動は全て私にインプットされていますが、あの奇想天外さはインプットされていません》
『ボロクソに言うな!!天才的センスって言え!!!』
《訂正を却下、奇想天外です》
「そんなのは良いから早く離れさせてく、れ!!」
背部サブアームに取り付けられた突撃砲を何度も駆動させ、レーザー照射によるバラ撒きを繰り返す。そんな必死さをものともせずに、それどころか最低限の動きで軸をずらし、くるくると機体を回転させて避ける化け物
「今ので当たってないのか!?狙いは正確なんだろう!?」
《射線を読まれています。四肢の動きを完全に制御してバラ撒きから少しだけズレるように動いています》
『じゃあそろそろ行くぞ!!』
2号機のリミッターが一時的に解除され、一気に肉薄する。ロックオンアラートが鳴り続けるも、当たる距離まで絶対に発砲しないその姿勢は、実戦で培われた感覚の賜物である
2号機の真似をして機体を回転させるも、推進剤ばかりが消費されていく。焦りから雑になる機体操作を、AIが補正して調整する
「まだ撃たな───!!」
右側の跳躍装置が被弾を受け、動作を停止する。ガクン、と一気に推進力が落ち、機体が縦に一回転する
カメラアイに映るのは、そんな自分の機体の前で突撃砲を構える2号機であった
『BANG!!』
戦死判定と共に機体の動きが止まり、演習終了のブザーがコクピットに響く
また負けた。AIによる補正は上がって来ていて、自分の腕前だってこの短期間でかなり上達しているのに、彼はまるでその一枚上を行くように導いてくる
悔しい。まだまだ余裕のある2号機を見ながらバイザーを上げ、汗がコクピットの中を舞っていくのを見ながら水を飲む
『ホントよくやるわね、2人とも。今の録画映像あるけど、戻ったら見る?』
遠くに見える凄乃皇四型から聞こえる声。この2機が宇宙に上がる為に使われたこれは00ユニットの調整のため、と言う名目で使われているものの、リヨンハイヴ侵攻状況の見定め、地上の通信傍受、映像記録の為の録画、と様々な事の為に使われている
……そんな事の為に使うのか、なんて声が出てきそうだが、調整が必要だったのも事実なのだから仕方無い
「ああ、戻ったら見るよ……クソ、また勝てなかった」
《パイロット、戦闘開始から6分15秒までの動きは完璧と言えるほどに習熟しています。ですが詰められた時の動きに焦りが出ていました》
「小言は後で聞く、BT……」
ふわふわとした無重力を体感しつつ、水を飲み干し、パックをゴミ箱に入れて視線を移す
そこにあるのは、軌道エレベーター建設の為に動き回るAT達の姿であり、人類未来の先を見据える男の集大成が、そこにある
鈴木重工が軌道エレベーター建設の為に買い取った、元オルタネイティヴ5の植民船
これから宇宙に出る事を想定している鈴木重工は、何処よりも先に宇宙でも使える戦術機を早々に作り上げ、試験を行っている
小惑星と言えどBETAが居ないとも限らない。元より宇宙はBETAの物であると言っても過言では無いのだから、先を見据えるのであればこの戦術機が作られるのは当たり前の判断である
「人類未来の為の機体、か」
この機体を受領した時、重信様はそう言った。この機体にはその思いが詰まっているし、何よりもその一翼を担えるのであれば、これ程名誉な事は無い
だからこそ、ここで立ち止まっている訳にはいかない
『枢木、まだ動けるか?今リヨンハイヴの防衛線が恭順派に食い荒らされた。今から再突入殻を使用し、衛星軌道上から地表に降下、その後即座に戦闘に移れるかの試験を行う。尚、この試験では敵戦術機を破壊する為、火器の使用が許可されている』
「やれます。BTの補助もありますし、何よりも初の対人実戦訓練ですから」
『よし、では我々が恭順派を排除した後、凄乃皇四型が着陸出来る場所を確保する。スペインやフランスの半分を取り返すチャンスだ、代表も褒めてくれるぞ』
「───はいっ!!」
植民船から持ってこられた再突入殻へと入り、自分達はフランスの地へと降下していく
ゲル状の背もたれに身を任せ、大きく深呼吸する。心拍数はきちんと平常時のままで保てているが、ぶるぶると揺れる背もたれの感触に少しばかりの気持ち悪さを感じていると、BTが話しかけてくる
《パイロット、私達なら必ずやれます》
「……そうだな、BT。この試験の成功率は?」
《パイロット単独なら67パーセント、私達なら100パーセントです》
嘘のつけないAIに思わず笑ってしまいながら、段々と振動の収まってくる事に緊張して……自分は覚悟を決めていた
Q.BTってなんだよ!?
A.BTは搭載型AIの名前です。東雲が某タイタンのフォールのプロットを読んで作り上げた渾身のAIです
ATと戦術機では性格が違うと言うおまけつきです
Q.ジャックくんこの時代だと化け物じゃない?大丈夫?
A.跳躍装置を換装しないと重力下では飛べませんが、素のスペックが高いので実はあまり気になりません
Q.枢木くんは何処から拾ってきたの?
A.斯衛から引っ張ってきました。尚斯衛からは凄い反発を喰らいました
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XSM J02 ジャック
無重力下及び1G重力下にて運用可能な戦術機であり、ジョン・ドゥの後継機に当たる
外見こそ肩や脚にスラスターやバーニアの増設されたF4であるものの、内部構造は一新され、ジョン・ドゥと同じ物に変わっており、更には意思疎通及び機体制御を補助する超高性能AIが搭載されている
過剰であったジョン・ドゥの出力を利用した物であり、バーニアやスラスターが増設された事から装甲内部には推進剤タンクが増設されている
元々はジョン・ドゥに対デブリ用の装甲を増設、背部に跳躍装置を、各所にスラスターやバーニアを取り付ける予定であったが、増設するタンクや装甲の関係上ほぼ新規設計となり、取り外し可能とする増設装甲及び増設タンクのコスト増によって、ジョン・ドゥ3機分のコストがかかる事が判明した
元より低価格高性能であるジョン・ドゥの価格が高価格高性能となる、と言えば聞こえは良いが、現在必要なのは各社が未だ出していない市場に独占市場を作る事であり、ジョン・ドゥのように操作の特異性から忌避される事は避けねばならなかった
そんな折、技術者の1人が原点回帰を考えつき、帝国軍から廃棄予定であったF4を買い取り、内部構造にジョン・ドゥの中身をそのまま採用、内部の余ったスペースに燃料タンクやスラスターを組み込んだ新型機が完成した
これによって新型機でありながら外見はF4のジャックが完成したものの、当初は見分けがつか無かった為、声をかけて機体が反応したらジャック、なんて言う見分け方が流行した