問題は、勢いがあり過ぎて足並みを揃えられ無かった、と言う事でしょう
大東亜連合内での意見を纏める前に、インドネシアから橋頭堡確保の為の部隊が出撃。指揮系統すらままならないまま、ビルマ領ヤンゴンに橋頭堡を作り上げてしまい……
結果、泥沼の消耗戦が繰り広げられる事となります
─── AT博物館 ビルマの地獄より抜粋 ───
2002年 4月11日
大東亜連合内にてマンダレーハイヴ侵攻プランが提示される
これはビルマ、タイ、ベトナムと言う亡国による提案であり、これは大東亜連合内でも位置付けの低い国家が、自国領を取り戻し、早々に発言権を取り戻したい思惑があった
しかし、大東亜連合上層部はこの提案を拒否。インド亜大陸で消耗した戦力が回復していないとし、せめて翌月まで待つよう説明した
この判断を発言権が低いせいだと判断した3ヶ国は、大東亜連合内の自国戦力を集め、独自で作戦を行う事を決定した
4月13日
賄賂によって作らせた正式な命令書を使い、自国軍を集め終えたビルマ、タイ、ベトナムは、インドネシア領メダンからビルマ領ヤンゴンへと向かい出港
大東亜連合側はこの事態を把握しておらず、軍部も極1部のみが独自作戦である事を知っていただけであった
4月14日 未明
大量のATを使用したヤンゴン上陸作戦が開始される。カチューシャによる飽和攻撃の後、ヤンゴンへと上陸した戦術機によるBETA掃討作戦が開始される
ここまでは作戦が順調に進み、3ヶ国連合軍は、ヤンゴンを奪還した
同日 20:00
BETAの波状攻撃とも言える攻撃に対して対処を続けていた所、弾薬消費量が想定の5倍以上のスピードで行われている事が判明する
恐らくはボパールハイヴ攻略の折、近場のハイヴにBETA増産の命令がなされていたと思われる
この頃、大東亜連合側は3ヶ国の兵及び大量のATと戦術機が消失している事に気付く。連合上層部は亡命政府側に説明を求め、亡命政府側は賄賂で作らせた大東亜連合の承認書類を提示し、自分たちは栄えある先遣隊である、と明言した
4月15日 08:00
上陸地点防衛の為に防衛陣地の製作が始まる。この頃からBETAの攻撃がまばらになりはじめた為、指揮官は大東亜連合に対して補給を要請
大東亜連合は補給の代わりに指揮系統を大東亜連合へと寄越すよう通達するも、指揮官は大東亜連合から任命されている為不可能ではと反論
ここで、漸く現場側が食い違いに気がつくも───
─────────────────────
「待って下さい、これは大東亜連合による作戦では無いのですか?我々は栄えある先遣隊で、大東亜連合は我々に祖国の土を踏ませる為にしたのでは?」
『ようやく話が通じそうな人間が居てくれて安心したよ、中佐。良いか、あの命令書は賄賂によって作られた物だ。我々の悪い所が全て出たんだ。もしこのまま作戦が続行されれば、君達は孤立無援になる。亡命政府は我々を騙す為に、君達を騙したんだ』
中佐は、顔から血の気が引いていくのを感じていた。実は戦力がやけに少ないと思っていた。ATと
上層部が誤魔化せるのが、数を用意出来るのがこの2つだっただけだ。機甲科は厳密な管理がされている為難しいが、この2つは入れ替わりが激しいから誤魔化しが効く
つまり、上はそれを理解していたからこそ、この無謀な作戦に興じたのだ
『我々も余裕がある訳では無いが、始まってしまった物はどうしようも無い。急いで準備はしているがどうやっても時間が掛かる。此方では君達の事を把握出来て居ないから、補給要請は宙に浮いている状態なんだ、だから君の言質が欲しい。我々に指揮権を寄越すと』
「……指揮権を移譲しま「失礼します!!!BETAの大群が迫ってきています!!!指示を!!!」」
大声によって掻き消された言葉と、まるで小さな地震のように揺れる地面
通信機がテーブルから落ち、破壊される。最後まで言えなかった事を後悔しながら、中佐は地形図をテーブルに広げる他無かった
─────────────────────
同日 08:30
推定3個師団規模のBETAがヤンゴンへと接近。大東亜連合は中佐からの指揮権移譲を正式に受けたとし、援軍及び補給物資の運搬を開始する
─────────────────────
『BETA接近!!!……すげえ数だ、向こう側が見えねえぞ……!!!』
『砲兵!!!砲撃開始だ!!!カチューシャが残ってる奴等は全部撃ちつくせ!!!』
『艦砲射撃が来るぞ!!!どれだけ減らせるか見ものだぜ……!!』
さながらBETA7、陸3と言えるだろうか。荒野を監視していたATが見たものは、地平線まで埋め尽くす圧倒的なBETAの数であった
艦砲射撃の音が始まりの合図であった。着弾し、大きなクレーターを作っても埋め尽くすBETAに対し、野戦砲の砲撃やカチューシャによる攻撃をかける
青空に大量の白い線を残し、綺麗な一筋の光が爆発を伴ってBETAを撃滅しても尚、焼け石に水である
『カチューシャのロケット弾は!?』
『もう無えよ!!!重りになるだけだ!!!外せ!!!』
『来るぞ!!!戦術機、上からの撃ち下ろしを頼むからな!!!』
波が来る。濁流が来る。さながら神が洪水で全てを更地に変えたように、それはやって来る
艦砲射撃が止んだ。弾切れか、撤退か。誰にも分からない。最早皆の意識は眼前のBETAにのみ注がれている
抗わねば死ぬ。抗っても死ぬ。逃げる場所なんて無い。自分達は祖国の為に死ぬ
『散開!!!各自生き残れ!!!』
ローラーダッシュ特有の甲高い音を響かせて、全員が死地へと入っていく。左手に刀を、右手にライフルを持って、全員が死の濁流へと飲み込まれていく
上空から突撃砲を撃ち下ろす戦術機は、その華々しいまでのATの有り様を、目に焼き付けていた
─────────────────────
同日 10:25
シンガポールより空軍の援軍が到着。爆撃によって敵BETAを一時撤退に追い込むものの、地上戦力は壊滅状態であった
かろうじて死体から身元が判明したのは、戦車級によって胴体と下半身が食いちぎられていた中佐のみであり、大東亜連合は、総勢2万機に及ぶATと100機近くの戦術機を喪失するも、ヤンゴンでの防衛を成功させた
平和を知らぬ子の為に 死んだ男が居る
病気になった子の為に 死んだ女が居る
自らが平和を体現する為に 死に行く子供が居る
皆明日の為に死んでいき 明後日の為に何かを残す
次回 マブラヴ〜鉄のララバイ〜
マンダレーハイヴ 侵攻 2