工事に使用しているATを検挙しようとしたり、高所作業用として使われるATを検挙しようとしたり……
当たり前ですが法律すらろくに整備されていなかった時期ですので、官民問わず混乱していたのは当たり前だったのでしょう
それも本土侵攻後に様変わり。鈴木重工襲撃によって警察では対AT並びに対FP部署が本格的に設立され、それまでの交通課と隔絶した武力を持つその部署は、対特殊車両用対応課……縮めて特車課と呼ばれました
─── AT博物館 日本の警察事情より抜粋 ───
特車課。日本警察における対AT、対FPに特化させた課の1つで、対人用の特殊部隊とは違い、ATやFPの事故にも駆り出される部署の一つだ
それまで交通課でやっていた内容をそのまま移した物も多く、この平和な日本においては、大型化した交通課、とすら言われる程だ
「オーラーイ、オーラーイ、オーラーイ……はいオッケー!!」
実際の所、平和な日本で起こる事なんて大抵は事故だ
今もAT運搬車両が事故を起こした事故現場に来て、破損したATに中和剤を撒いたり、ATを特殊レッカーに乗せたりと、交通課と一緒に仕事をしている
「しかし何でFPにしないかね。ATだとこう言う時面倒でたまらん」
「そりゃあコストでしょ。FP1つでATなら5機は買えるし……ランニングコストだって段違いだし」
「だよなぁ……」
「FPももう少し安くなればね。あと免許の複雑さと整備の難しさと……」
「だー、御託はいらん。さっさと終わらせるぞ」
実際、FPにも対応していると言っているものの、対応しているのはほぼATばかりだ
FPはとにかく面倒が多い、と言うのが現場の意見らしく、現場で直さないといけないのに直せない、なんて事が多々あるらしい
故に、私達特車課でもFPとご対面したのは設立以来3回だけだ。それだって会社が買わされたから仕方無く使ってるなんてのが多い
『あ〜、国井くん聞こえる?今度はバトリングの真似事だ。ATの足がひしゃげてPR液が漏れちゃったらしい。場所は───』
「またすか!?ほんと最近多いですね……国井了解」
日本では多数の難民が暮らしている。全国にバラけさせたり鈴木や財閥が仕事を回しているものの、それでも治安は悪くなる
最近こそ犯罪は減ったが、その代わりに周辺住民を巻き込んだ違法バトリングの胴元をやったりしてギャング化しはじめているのだ
娯楽が無いと言われればそれまでだが、こうして後処理に追われる警察の身にもなって欲しいものだ
「対AT弾の準備だけ欠かさないように。バトリングの真似事なら最悪難民の相手も視野に入れないと」
「コレ使うと義肢が痛むから嫌なんだが……」
日本において警察官と言えば、大抵は元軍人を指す。傷痍軍人が警察官として推薦される為なのもあるが、国家の政策の1つでもある為だ
ATの投入以後、歩兵の生還率は大幅に上昇した。それは別にいい事なのだが、大抵の生還者は四肢のうちどれかを失っているか、精神に傷を負っている事が多い
ATによって救われると言う事は、それだけATとの距離が密接と言えるからだ。即ち、防衛線に食いこんだBETAと戦ったと言う事である
そうして救われた歩兵は最早戦えない。何せATにも乗れない文字通りの【落ちこぼれ】なのだから
そうなると軍人として雇い入れている方が金がかかる。再生医療もタダでは無いのだから、軍は最低限の医療を施した後、民間へと戻す方法を取る
そして、心は戦地にありながら戦いにくい身体を手にした傷痍軍人を警察官として全国に配置し、心の傷を癒しつつ民間へと馴染ませながら、治安維持の為の丁度いい人材が出来上がる
詰まるところ、国内専用の劣化軍隊が作られているのだ
「国井と三浦現着、金井軍そ……さんのATがありますけど、増援ですか?」
『あれ?そんな報告聞いてないけどな……金井、聞こえる?何してんの』
対AT弾を装填したライフルと中和剤の入った消火器を肩に担ぎ、応答の無い金井を探す。PR液の臭いを嗅ぎながら、段々と臭いの濃くなる元工場内へと歩いていけば、倒れたスコープドッグの前に2人を正座させ、滾々と説教している金井を見つける
どうやら説教に夢中で無線が聞こえていなかったらしい
「金井さん何してんすか。中和剤撒いとかないとダメでしょ」
「許せんのだ!!コイツら……よりによって鈴木重工製をオシャカにしやがった!!!!」
「え、ホントですか!?」
中和剤を撒いているATに興味の無い三浦を押し退け、刻印を確認する。最早戦地以外で鈴木重工製は見る事すら叶わない。国内に流通している鈴木重工製のスコタコは今やプレミア価格とすら言われる程だ
他社製のスコタコと比べて関節の柔軟性が段違いであり、ターンピックはコンクリートを貫いて機体を固定する程であるし、何よりもターレットレンズにきちんと暗視やサーマルが搭載されているのだ
「うっわ〜ホントじゃん……しかもコレ後期モデルかよ、軍用品と相違無いタイプだ……うへ〜、どっから持ってきたのコレ」
「大方倉庫に眠ってたの持ってきたとかじゃ無いんですかね。ポンプ止めてあったのだけは褒めましょうか。中和剤撒き終わりました」
興味無さげに話す三浦の報告を聴きながら、それでも足だけで済んだ事に感謝しとけよ、なんて正座している2人に告げながら、改めて調書を取る
未だ腹の虫が収まらない金井を三浦に押し付けながら、2人に相対して立たせれば、2人は足の痺れに耐えながらため息をついた
2人の免許証を確認して本人確認を取り、状況を聞き出していく
「それで?何でこんな所でバトリングの練習なんてしてたの」
「親父の倉庫でアレ見つけちゃって……ほら、本土侵攻の時にリミッター解除されたでしょ?親父がその後リミッターかけるの忘れてたみたいで、性能試してみたくて……」
「あ、俺のは普通のスコタコです。鈴木重工製じゃない財閥製のやつで。試してみたいから俺のとやってみようぜって話になって……」
「はぁ……興味本位は分かるけどね……」
足がひしゃげるだけで良かったよ。なんて愚痴りつつ、改めて2人に対して厳重注意をしつつ、整備不良で切符を切ったのは、我ながら中々良い判断だと思う
Q.日本だとバトリングは違法ですか?
A.違法ではありません。ですが賭けになると違法です。でも三店方式なら違法じゃないんです
何故か皆さんその券を持ってあちらの方に向かわれますね
Q.日本警察って要するに警察予備隊では……?
A.はい。なので上司に当たる人が元尉官クラスで上に行くと佐官クラスだったりします
Q.鈴木重工製ってそんな違うんですか?
A.軍用品を民間に降ろしてた形なので結構違います。ターンピックが簡単にコンクリートぶち抜く威力してるので
Q.廃工場とかあるんですか?
A.祖父の代から使ってた工場だけど父親の代で潰して、けど土地そのものは他の人の物で、でも建屋は曽祖父が建てた物で、借りてた人はとうの昔に亡くなって分からなくて……
みたいな感じなのはまだあったりします。なのでそういう所がバトリング会場に選ばれたりします