Side アンジュ
わたしの名前は
「アンジュ、どうした? そんなじろじろと見て」
「たまにはいいかなって思ってね」
「むぅ。私としてはアンジュの方が女の子らしくて羨ましいのだがな……と、何かくる。隠れるぞ」
突如、何者かの気配を察知したらしいリゼちゃんにクローゼットに連れ込まれる。流石に二人だと狭いが、リゼちゃんにぐっと抱き寄せられて、なんとか納まっている。この体勢…点身長差のせいでわたしの頭がリゼちゃんの胸に押し付けられている! 鼻血が出そうで心配だ。
「いい匂いと柔らかさ……むふふ」
「ん! くすぐったいから止せ。というか、息を殺していろ。……来た」
「制服持ってきますね」
「わ~い、制服着れるんだ♪」
誰かの声がした気がするが、リゼちゃんの心音でイマイチ聞えない。
「ロッカーから感じる。まさかドロボー!!」
更衣室にいる誰かがロッカーの扉を思い切り開ける。リゼちゃん一色の視界に少しだけ光が差し込む。
「下着姿のドロボーさん?」
「完全に気配を消したつもりなのに……。アンジュ、お前のせいか? そして、お前は誰だ?」
あ、ジャキって音が聞えた。アレを構えた音だね。と、思いつつ左腕でギュッと抱き寄せられたわたしの呼吸がそろそろ厳しい。
「えっと! その、ココアです! あと私、そういうの嫌いじゃないです!」
「どういうのだ? って、アンジュ、しっかりしろ!」
「あ、リゼちゃん……さっきね、真っ白な百合のお花畑がね……」
「何かあったんですか?」
あ、チノちゃんだぁ。
「チノちゃん! 強盗が女の子を人質に!」
「ち、違う! お前も何か言ってやってくれ! だって、知らない気配がしたら隠れるのは普通だろ!」
「じゃあその銃は何!?」
ん……ん。やっと頭がクリアになってきたよ。
「私は父が軍人で、小さい頃から護身術というか、いろいろ仕込まれているだけで、普通の女子高生だから安心しろ!」
【ろこどる】でもやるのかな? 似合うかも。
「説得力ないよ!?」
「取り敢えず、三人とも着替えてください。着たらホールに来てくださいね」
そう言ってチノちゃんは更衣室を出て行ってしまった。まぁ、お客さんがきたら開店休業状態だからね。仕方ないか。
「えっと、わたしは今保田杏樹っていうの。よろしくね」
「天々座理世、リゼで構わん」
「えっと、保登心愛です。ココアって呼んでくださいね!」
自己紹介を簡単に済ませ、制服に袖を通す。ココアちゃんはピンクの制服を着るようだ。わたしの制服がライトブラウン、リゼちゃんは青紫だ。着替えたわたし達はチノちゃんに言われた通りすぐホールへ向かう。
「じゃあ早速、そこにある荷物をキッチンへ運んでください」
チノちゃんが指差した先にあるダンボール箱。
「ココアちゃん。そっち手伝うよ。リゼちゃんなら持って行けるけど、普通は持ち上げるのが精一杯だから」
「私を何だと思っている!?」
「軍人の娘」
事実を告げるとリゼちゃんは黙って仕事へ戻ってしまった。むぅ、ダメだったようだ。
先に二つ持って行ったリゼちゃんがココアちゃんにメニューを覚えるように言っている。
「コーヒーの種類が多くて難しいねー」
「私は一日で暗記したぞ。訓練してるからな」
「すごい!」
「わたしも一週間くらいで覚えたかなぁ。大丈夫だって」
「まぁ、チノなんか香りだけでコーヒーの銘柄当てられるし」
「私より大人っぽい!!」
「ただ、ミルクと砂糖が必要なのよね?」
「あ、アンジュさん!!」
「あっ、なんか今日一番安心したー」
笑いに包まれる店内。まぁ、お客さんがいないけど。ん、あまりに暇だからチノちゃんがアレを取り出したや。
「チノちゃん何してるの?」
「宿題です。空いた時間にこっそりやってます」
ココアちゃんが問題をそっと覗くと、
「あ、その答えは128で、その隣は367だよ」
すごくすらすら解いていくなぁ。
「例えば、430円のブレンドコーヒーを29杯頼んだらいくらになる?」
リゼちゃんが問題を出した。えっと、430を30倍して430引けば――
「12470円だよ」
早い!! 凄いなぁ。
「私も何か 特技があったらなー」
「………(こいつ…バカそうに見えて意外な特技を…)」
「リゼちゃん、今とても失礼な感想を抱いたでしょ? わたしも全面的に同意だけど」
そんな感じで、ラビットハウスに新しい女の子がやってきました。
ごちうさは芳文社のコミックなので、一迅社のコミックのネタを使っていこうかなと思っています。でも、やっぱりきらら系のネタに走ったら笑ってやってください。きっとお客として混ざることでしょう。