サブタイといえば、原作二話(アニメは羽、マンガは話で表記)のサブタイネタを今回仕込みました。わかるよね?
カランカラ~ン♪ お客さんの来店を知らせるベルが鳴る。
「いらっしゃいませー♪」
「あら、新人さん?」
来店してきた女性がココアに話し掛ける。
「はい。今日から働かせて頂くココアっていいます」
ココアが女性を席へ案内するのを見て、ココアの対人スキルに三人も感心していた。
「ふーん、ちゃんと接客できてるじゃないか」
「心配ないみたいですね」
「やったー! 私ちゃんと注文取れたよー!」
「あー」
「えらいえらいです」
「二人とも棒読み…!」
アンジュが何とも言えない表情を浮かべている中、ココアは思い出したようにチノに尋ねた。
「このお店の名前、ラビットハウスでしょ? ウサ耳つけないの?」
両手でウサ耳を表現しながら訊くココアにチノはジト目を向けながら答える。
「ウサ耳なんてつけたら違うお店になってしまいます」
「……(フルール・ド・ラパンはどうなるの?)」
誰にも聞けない疑問を心の奥に仕舞ったアンジュは、リゼの方を向いて大きく頷く。
「リゼちゃんとかウサ耳似合いそうだよね!」
「そんなもんつけるかバカ!」
そう言ってからリゼの頬が紅潮する。
「露出度高すぎだろ!」
「ウサ耳の話しかしてないのに!」
「リゼちゃん……バニーガールを思い浮かべていたでしょ?」
アンジュに図星を突かれて困惑顔のリゼにお構いなしで、ココアは質問をさらにぶつける。
「じゃあなんでラビットハウスなのでありますか! サー!」
着替える時にリゼが言った「上官に口を利くときは、言葉の最後にサーをつけろ」を忠実に守るココアに、リゼは普通に答える。
「そりゃティッピーがこの店のマスコットだからだろう?」
「うーんでもティッピーうさぎっぽくないよ。もふもふだし」
チノの頭の上にいるティッピーを撫でながら、ココアは言う。それを聞いてモカが尋ねる。
「じゃあどんな店名がいいの?」
「ズバリもふもふ喫茶」
「そりゃ、まんますぎるだろう」
そう素早くつっこんだリゼだったが、チノの方は……
「もふもふ喫茶…」
「気に入った!?」
珍しい程に目を輝かせるチノに、これまた珍しくアンジュがつっこんだ。そうして暫らく働いていると、お客さんの少ない時間帯となり少々暇が生まれてきた。その時、リゼがココアに声をかける。
「よしココア、ラテアートやってみるか?」
「らてあーと?」
頭に?を浮かべるココアにアンジュが補足で説明する。
「カフェラテにミルクの泡で絵を描くんだよ。この店ではサービスでやっているんだぁ」
すると笑顔を弾けさせてココアは自慢げに言う。
「あっ絵なら任せて! これでも金賞もらったことあるんだ」
そこにすかさずリゼが釘を刺す。
「町内会の小学生低学年の部とかいうのはナシな」
固まるココアにアンジュが、
「大丈夫だよ、すぐに上達するもん。ラテアートは」
フォローを入れて固まったココアを元に戻す。その間、リゼはお手本のラテアートを作り、チノは先ほど来店したお客さんの相手をしている。
「まぁ手本としてはこんな感じに……」
リゼがココアに見せたラテアートは定番の一つ、リーフだ。最初にミルクを少し高い位置から流し、その後口に沿えてジグザグに流し込み、仕上げに切るように真っ直ぐ流し込む。最後の真っ直ぐに流し込むミルクの量にさえ気をつければ、比較的簡単にできる。
「わ! すごく上手い!」
それを知らないココアは大はしゃぎでリゼを褒める。褒めまくる。
「そ、そんなに上手いか?」
「すごいよー。リゼちゃんって絵上手いんだね! ね、もう1個作って」
ココアがそうやってせがむと。
「あ、ココアちゃん。リゼちゃんをおだてると……」
アンジュがちょっとだけ困ったような表情を浮かべると、ココアもその理由をすぐに察した。
「そんなしょ、しょうがないな!! やり方もちゃんと覚えろよ!! 全くそんな上手くないって私なんか!」
そんなことを言いながら生まれたラテアート、それは……
「いや‥上手いってレベルじゃないよ。ていうか、人間業じゃないよ……」
砲身から煙を吐き出している勇ましい戦車の姿。単純に戦車がすごい上に、その迷彩柄が何よりも細かい。そんなお手本と言い難いラテアートを見た後じゃあ可哀想だと、アンジュがリーフ以外のシンプルなラテアートを披露する
「アンジュちゃんすごいよ!」
「えへへぇ。さぁ、ココアちゃんもやってみよー」
アンジュに促され、ココアもラテアートに挑戦し始めた。
「よーし、私もやってみるよ!」
「がんばれー」
「気楽にだよぉ」
リゼとアンジュの声援を聞きながら少しずつミルクを垂らすココア。ピックも使いながら絵を描いている。一方のチノは先ほどのお客さんの会計を済ませている。
「う……。なんか難しい……。イメージと違う」
完成はしたものの、満足のいく仕上がりではなかったらしい。
「どれ見せてみ……」
「お、ウサギさんだぁ」
そこには、少し困った顔をしたようなウサギの絵が描かれていた。
「……(か、かわいい!)」
「笑われてる!?」
「……(ココアちゃんったら、気付かないかなぁ。今のリゼちゃん、すごく嬉しそうな顔をしているのに)」
ちょっとした勘違いを起こしたココアは、そのままカップを下げるチノにもラテアートを作るように言う。
「もー! チノちゃんも描いてみて!」
「私もですか?」
そう言いつつ仕度をするチノを見ながら、リゼはモカに耳打ちする。
「あれ、確かチノの描くラテアートって……」
「えっと、一億円出すって言ったお爺さんがいたよね。追い払ったけど」
そんな会話を知らないココアは二人に笑顔を向ける。
「どんなのができるか楽しみだね
「できました」
持ってこられて作品はなんとも前衛的な仕上がりで……。
「こ‥これは……。チノちゃんも仲間ー!」
「仲間?」
見ようによっては下手とも言えるチノの絵にココアは仲間宣言を下し、それにチノは?を浮かべていた。
「ち、ちがうぞ。ココア、こういう絵は私たちのと一緒にしちゃ…」
説明をしようとしたリゼだが、困難だと気付き結局諦めた。
それからまた暫らく経ち、
「じゃあ今日はそろそろ閉めましょう」
喫茶ラビットハウスの閉店時間となった。
「おつかれさまー♪」
「おつかれー」
「おつかれぇ」
四人は更衣室に移動し、着替え始める。そこでリゼがココアに尋ねる。
「ココアは今日からこの家で寝泊まりするんだな」
「うん。そうだよー。チノちゃん。今日の夕飯、一緒に作ろうね」
ブラウスの袖から腕を抜きながら、チノに言うココアだが、
「一人でも出来ますよ」
そっけない返事をされてしまった。一方のリゼはそんな二人を見て、
「……(え…なにそれ…楽しそう)」
「リゼちゃん。はやく着替えてよぉ。帰れないでしょ?」
羨ましそうに固まっていた。そんなリゼにアンジュが着替えるよう促す。着替えおわり、リゼとアンジュを見送ったココアとチノ。ラビットハウスの住居部分へ移動したココアの耳に、渋い男声が届く。
「‥君がココア君か。よろしく」
現れたのは声の主、これまた渋い背の高い男性だ。
「こちら父です」
タカヒロと名乗ったチノ父にココアも挨拶する。
「お世話になります」
「‥チノと仲良くしてやってくれ」
そう言いながら店舗部分へ移動するタカヒロにティッピーも跳び移る。ここはウサギの面目躍如である。そんな一人と一匹にココアは首を傾げる。
「この喫茶店は夜になるとバーになるんです。父はそのマスターです」
その理由をなんとなく察したチノが説明すると、ココアは納得したように言うのだった。
「へぇ‥…そうなんだ。なんか、裏世界の情報提供してそうでかっこいいね」
「何の話です?」
当然、チノには何のことだかさっぱりだった。
雑談。この前、ここで《ご注文は百合ですか?》という作品に出逢いました。
どうして自分はこのタイトルにしなかったのだろうかと、すごく悔しくなりました。その上、めっちゃ面白かった。取り敢えず、その悔しさを胸に、頑張って書こうと思いました。以上。